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俺と妹と野球

 時間は午後六時、TVを占拠し、怠そうな様子で彼女はこう呟くのだ。


「やきうのじかんだー」


横浜ビースターズという万年弱小球団をこの妹は応援している。そう、暗黒と言われ、ファンが血涙を流してきたこの球団を、だ。


「兄さん。今日は先発の今針も調子が良いし、筒山もHR量産体制だから勝てると思わないか?」


 現在、最下位独走状態の球団の試合にも関わらず、期待を込めて見る妹は実は真性のマゾヒストなのかもしれない。怠そうでは有るが、ほんの少しだけ期待を込めた声でこういう言葉を言えるのだから。


「そうだな……だが、相手も調子が良いからまだわからないんじゃないか?」

「……は?」


ドスの利いた声で、しかも親の仇を見るような目で此方を見てくる。こういう時は話題逸らしに限る。これ以上、地雷を踏んでしまっては不味い。


「そ、そう言えば、今年はキャッチャーの仁王が凄く良いよな、うん。」


 若干震える声で話題を提供してやると、この妹は即座に食いついた。


「そうですね。彼のお陰で今年はAクラスになれるかもしれません。」


 現在最下位の球団なんだからそれはない。絶対にない。どうして此処までポジティブなのか、俺には全くわからない。というか、シーズン終わるのが凄く怖い。

 そんな事を考えていることも知らずに妹はこう続けていく。


「彼もまだまだ若手ですし、これから数年はAクラスは余裕でしょう。他の選手もそろっていますし、優勝も見られるかもしれません。」


そして、小さな声で選手の応援歌を口遊み、小さく体を揺らしながら手拍子をしている。近年流行りのにわかにも思えるかもしれないが、二軍の選手まで調べているあたり、この妹は色々とホンモノのような気もしている。

そう、この時までは良かったのだ。どうして上機嫌な間に、この場を離れなかったのか、三時間前の俺に小一時間問い詰めてやりたいところだ。



 三回の裏、ビースターズは先発四ツ裏が被弾し0-2、ここで少し雲域が怪しくなる。妹が俯き、手をキツく握りしめているようだ。

 五回の表、ビースターズはクリンナップが機能し、3-2と逆転に成功する。妹は、球団歌を口遊み、拍手している。

「やはり、筒山は最高ですね。彼はきっと日本の四番にもなれる選手です。」

 得点時の妹は俗にいう『ウッキウキ』状態になっていた。まぁ、この後に起こることなど長年一緒に見てきた為に色々と察しがつくのではあるが……。

 九回の裏、ここで日頃から圧倒的なピッチングを見せる、山木が抑えとして登場。妹は数試合ぶりの勝利に向け、そわそわし始める。そして四球からの被弾、逆転サヨナラという悲劇である。


「あああああああああああ!!!」


 妹が叫ぶ。普段の声量を考えれば有り得ない大きさで、だ。そして、すっと目を伏せると、項垂れたままTVの前で、俺のことを睨む。


「兄さんが……兄さんが余計なこと言うから……。」


 恨みがましく此方を睨む妹にこう言いたい。俺は悪くねぇ!!!!

 すごく久しぶりの投稿です。おまたせ(?)しました。質もさることながら、遅筆どころかエターになりかけレベルですが、今後も折を見て投稿していきたいと思っています。

 感想を頂いた方、ブクマをしてくれた方、そして閲覧してくれた方に感謝を。次回は出来る限り早めに投降したいと思います。

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