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## 第一話 ### 「ポンコツ天使、空から落ちてくる」

# 『母の介護に疲れた俺を天使が異世界へ連れて行った。気づけば母の方が最強で、俺は初めて恋をした』


## 第一話


### 「ポンコツ天使、空から落ちてくる」


「母さん、ご飯だよ」


山田悠人、二十五歳。


仕事を終えて帰宅し、母の介護をする。


それが毎日の生活だった。


母の名前は山田美鈴。


病気で足が不自由になり、車椅子生活を送っている。


「ごめんねぇ、悠人」


「だから謝るの禁止」


悠人は笑った。


だが本当は疲れていた。


心も体も。


もう何年も。


友達と遊ぶこともない。


恋愛もしたことがない。


夢も諦めた。


ただ毎日を生きるだけ。


そんな人生だった。


---


夜。


コンビニ帰り。


悠人は近所の公園のベンチに座る。


空を見上げた。


「疲れたなぁ……」


その時だった。


空から何か落ちてきた。


ヒューーーーー!


ドガァァァァン!!


「うわああああ!!」


目の前の地面が爆発した。


土煙が舞う。


恐る恐る近づく。


すると。


穴の中から白い羽が見えた。


「いてててて……」


金髪の少女が顔を出した。


羽が生えている。


頭には輪っか。


どう見ても天使だった。


だが――


輪っかが斜めになっていた。


しかも顔に泥がついている。


「着地失敗しました!」


満面の笑みだった。


「いや失敗どころじゃないだろ!」


---


少女は立ち上がる。


しかし羽が木に引っかかった。


バキッ!


「あ」


羽根が折れた。


「折れたぁぁぁぁぁ!!」


「天使弱っ!」


---


少女は涙目になった。


「これ経費で落ちますかね?」


「知らねぇよ!」


---


数分後。


公園のベンチ。


少女は正座していた。


「改めまして!」


ペコリ。


「天界第三補佐見習い天使、ミルフィです!」


「見習い?」


「はい!」


「新人?」


「はい!」


「つまりポンコツ?」


「はい!」


元気よく答えた。


---


ダメだこの天使。


悠人は確信した。


---


ミルフィは紙を取り出す。


「本日は異世界転移のご案内に参りました!」


「保険の勧誘みたいに言うな」


「今なら特典付き!」


「通販か!」


---


ミルフィは紙を見る。


「あれ?」


「どうした?」


「対象者の名前……」


ペラッ。


「あっ」


紙を落とした。


風で飛んでいく。


「あああああああ!!」


全力ダッシュ。


側溝へ落下。


ズボッ!


「たすけてくださーい!」


「何やってんだよ!」


---


十分後。


救出完了。


びしょ濡れのミルフィはなぜか得意顔だった。


「大丈夫です!」


「何も大丈夫じゃない!」


---


しかし。


その後。


ミルフィは急に真面目な顔になった。


「悠人さん」


「・・・?」


「あなた、頑張りすぎです」


その言葉に。


悠人は固まった。


---


誰も言わなかった。


今まで。


会社も。


親戚も。


近所の人も。


みんな当然のように言う。


「偉いね」


「親孝行だね」


だけど。


本当に欲しかった言葉は違う。


---


頑張ったね。


辛かったね。


その一言だった。


---


「・・・」


「泣いてます?」


「泣いてない」


「泣いてます」


「泣いてないって」


涙が落ちる。


止まらなかった。


---


ミルフィは優しく笑う。


「だから迎えに来たんです」


「迎え?」


「あなたとお母さんを」


「母さんも?」


「もちろんです!」


---


悠人は驚いた。


「俺だけじゃないのか?」


「家族を置いていくなんてかわいそうじゃないですか!」


ミルフィは胸を張った。


しかし。


その勢いでベンチから落ちた。


ゴン!


「痛い!」


「締まらねぇな!」


---


それでも。


悠人は少し笑った。


久しぶりだった。


心から笑ったのは。


---


ミルフィは立ち上がる。


「異世界には奇跡があります」


「・・・」


「お母さんが歩けるようになるかもしれません」


その言葉に。


悠人の目が大きく開いた。


---


「本当なのか?」


「はい!」


「嘘じゃない?」


「たぶん!」


「たぶん!?」


---


やっぱりポンコツだった。


---


だが。


その笑顔は不思議と信じられた。


---


その夜。


悠人は母に全てを話した。


当然信じてもらえないと思った。


だが。


母は笑った。


「楽しそうじゃない」


「信じるの?」


「だって」


母は優しく微笑む。


「悠人、久しぶりに笑ってるもの」


---


その瞬間。


悠人は決めた。


行こう。


母と一緒に。


新しい世界へ。


---


そして翌日の夜。


ミルフィは巨大な魔法陣を展開した。


「それでは異世界へ出発しまーす!」


「大丈夫なんだろうな?」


「任せてください!」


胸を張る。


---


すると。


魔法陣が爆発した。


ドゴォォォン!!


「ぎゃあああああ!!」


「説明書が逆でしたー!」


「今すぐ天界に返品されろ!!」


---


光に包まれる三人。


笑い声と悲鳴を残して。


悠人と母、そしてポンコツ天使ミルフィの異世界生活が始まった――。


---


### 次回予告


## 第二話


### 「車椅子の母、異世界で立つ」


異世界到着早々、ミルフィが迷子!?


宿代ゼロ!食料ゼロ!


そして母に訪れる奇跡――。


さらに銀髪の美少女騎士との運命の出会いも!


笑いと涙の異世界ファンタジー、開幕!

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