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禿頭戦線-HKS-〜前髪至上主義への反逆〜  作者: qp46


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6/6

最終話 前髪至上主義への反逆

 革命は、突然始まった。


 


【#隠すな頭皮】

【#潔さしか勝たん】

【#坊主スタイル】

【#ハゲはスタイル】


 


 最初はネタだった。


 面白半分だった。


 


 だが一週間後。


 


「……増えてない?」


 


 秀人は通勤電車の中で呟いた。


 


 坊主。


 


 明らかに坊主が増えていた。


 


「いや絶対増えてるって」


 


 しかもただの坊主じゃない。


 


 “隠してない側”の坊主だ。


 


 今までみたいに必死に誤魔化すんじゃなく、堂々としている。


 


 秀人はスマホを開く。


 


【“隠すより潔い方がかっこいい”若者達の間で坊主系スタイルが流行】


 


「マジかよ……」


 


 会社へ着くと、さらに異変は加速していた。


 


「おはよ、ハゲト」


 


 いつもの同期。


 


 だが。


 


「……あれ?」


 


 前髪が消えていた。


 


「お前、その頭……」


「昨日黒神の動画見てさ」


 


 同期は照れ臭そうに頭を掻く。


 


「思ったんだよな、隠してる方がダサくね?って」


 


 秀人は固まる。


 


「いやお前髪あるじゃん」


「暑かったし」


「軽い理由で革命に乗るな」


 


 すると別の同期も笑いながら近づいてくる。


 


「実は俺もちょっと生え際怪しくてさ」


「お前もかよ」


「だから最近ちょっと怖かったんだよな」


 


 秀人は何も言えなかった。


 


 その時。


 


「鬼頭さん」


 


 振り返る。


 


 光山 真白(みつやま ましろ)だった。


 


 今日は珍しく少し笑っている。


 


「……なんだよ」


「最近、頭触らなくなりましたね」


 


 秀人は少し固まる。


 


 言われてみればそうだった。


 


 風が吹くたび押さえていた前髪。


 人の視線を感じるたび隠していた頭頂部。


 


 いつの間にか、前ほど気にしていない。


 


「……まあ、ちょっとだけな」


 


 真白は小さく笑った。


 


「似合ってますよ、今の方が」


 


 秀人は思わず視線を逸らす。


 


「……急にそういうこと言うな」


「照れてます?」


「うるせぇ」


 


 その日の夜。


 


 HKS本部では祝賀会が開かれていた。


 


「革命万歳!!」


「頭皮解放!!」


「帽子を捨てろ!!」


「その標語だけは最後まで終わってんな」


 


 黒神はスマホを見ながら苦笑する。


 


「フォロワー百万人超えました」


 


 部屋が静まり返った。


 


「……え?」


 


「あと美容系企業から案件来ました」


「どんな案件だよ」


 


 黒神は読み上げる。


 


『坊主向け頭皮ケア商品のPRをお願いしたいです』


 


 沈黙。


 


 次の瞬間。


 


「「「時代が来たぁぁぁぁぁ!!!」」」


 


 HKS本部が揺れた。


 


 光山は静かに立ち上がる。


 


「長かった……」


 


 全員が光山を見る。


 


「笑われる側だった我々が」


 


 光山はゆっくり笑った。


 


「ついに時代を変えたのだ」


 


 秀人はその姿を見ながら、小さく息を吐く。


 


 最初は頭のおかしい集団だと思っていた。


 


 いや今でもだいぶおかしい。


 


 でも。


 


 ここに来てから、少しだけ楽になった。


 


 ハゲてることは変わっていない。


 前髪も戻っていない。


 


 それでも。


 


 前より、自分を笑われるだけの存在だとは思わなくなっていた。


 


「……結局さ」


 


 秀人が呟く。


 


「変わったのって“髪”じゃないんだな」


 


 部屋が静かになる。


 


「“笑っていい空気”の方だったんだ」


 


 光山は静かに頷く。


 


「そうだ、ハゲト」


「だからその名前だけは最後まで嫌なんだよ」


 


 部屋中が笑いに包まれる。


 


 くだらなくて。


 


 騒がしくて。


 


 でも少しだけ、居心地が良かった。


 


 その帰り道。


 


 秀人は駅前のガラスへ映った自分を見て足を止める。


 


 昔なら、すぐ視線を逸らしていた。


 


 でも今は違う。


 


 秀人はゆっくり前髪を上げる。


 


 風が吹く。


 


 もう頭を隠そうとはしなかった。


 


後書き


 この物語はフィクションです。


 なお作者の頭皮は、現在もふさふさです。


 ……今のところは。

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