魔王の描く世界に向けて、甘い話からのラスト!
「はぁ〜、美味しかったなぁ…」
メル村の広場で星空をコリンは座って眺めていた。
思い出すのは今日初めて食べた、アリナお手製のたこ焼き。
900年生きて来たが、あのような物を食べた経験は無かった。
「お腹休めてるのかなー?」
コリンの星空を見上げる景色から、いきなりアリナの顔が大きく映る。
彼女は空を見上げるコリンの顔を上から覗き込んでいた。
「わぁっ!?」
急にアリナの顔が至近距離まで迫って、コリンは驚いてしまう。
「あはは、良いリアクションだよコリン君〜♪」
顔を離したアリナ、魔王の驚く顔を見て笑っていた。
悪戯に成功して無邪気に笑う子供のようだ。
「もう〜」
アリナに驚かされてコリンの心拍数は高まる、だがそれは驚いた事によるだけではない。
「(何で…アリナ見るとすっごいドキドキするんだろう…?)」
思い出される海底での出来事。
そこからコリンはアリナに対して、危険な目に遭ってほしくないという思いが強くなった。
キラーオクトパスとの戦いで自らの魔法に巻き込まれながらも、見事に退治してみせる。
あまりにも無茶だと思い、コリンはそれに対して怒りたいと思った。
その思いが皆の悩みを解決して、皆が笑えるようになった喜びを上回る程に。
魔族として永い時を生きて来たが、コリンにとって初めての事だ。
「しかしまぁ、君の前じゃあんまり無茶するべきじゃないかな〜」
「え?」
コリンの隣に腰掛けて、共に星空を見上げるアリナ。
「だって問題解決したのにコリン君あんま笑って無かったからさ?あたしの急な無茶に怒ったなって」
間違ってる?と視線を空からコリンへと移し、アリナは問う。
「…打ち合わせの時はそれ聞いてなかったし、やるなら僕賛成しなかったよ」
「ゴメンー、言ったらやらないかなと思って黙ってたんだ」
若干怒ってるような雰囲気を纏うコリン、それにアリナは両手を合わせて謝罪していた。
「…」
「ね、コリン君。こっち向いてくれる」
「何…」
アリナに言われて振り返ると、コリンの目の前には先程と同じようにアリナの顔が大きく映る。
「アリナ…!?」
「海底で邪魔されちゃったけど、今度は…ね?」
互いの頬は赤く染まり、コリンの心臓の鼓動は再び高鳴っていく。
2人が目を閉じると今度は何の障害も無く、互いの唇が重なる。
コリンは今日この高鳴る気持ちを理解した。
側に居てくれる女勇者が心底好きになり、惹かれたという事を。
「お前達…距離が近過ぎ無いか!?」
「えー?一緒にご飯食べてるだけですよ〜♪」
メル村で朝を迎えると、コリン達にパンや目玉焼きにハムといった朝食が用意され、コリンにアリナが必要以上にくっついているのを間近で見て、アマンダの機嫌は朝からよろしくない。
反対にアリナはご機嫌で鼻歌歌いつつ、フォークでハムを食べる。
「何かあったのかな…?」
「知らね」
カリーノがパンを食し、マルシャがミルクを飲みながら魔王と勇者の姿を見ていた。
何があったかは、夜に爆睡していた2人に知る由もない。
「では、皆の者…世話になったな」
「何をおっしゃいますか!女王や皆様は我が村…いや、国の危機を救ってくださった英雄です!」
アマンダが礼を言うと、村長はとんでもないと恐縮しつつ何度も礼を述べていた。
「残ったタコは皆で食べちゃってねー、作り方は大丈夫だよね?」
「はい、後はこちらで美味しいたこ焼きを作ります!」
自分が不在でも大丈夫なように、アリナはたこ焼きの作り方を村人達へ伝授している。
あの巨大ダコは皆が残らず食べ尽くす事だろう。
「(良かったー、皆良い笑顔だ♪)」
コリンは皆が心から笑う光景を見て、自身も微笑んで満足そうだった。
一行は馬車に乗り込み、メル村を後にする。
「良いもんだなぁ、こういうの」
「何がだ?」
揺れ動く場所の中、ふと呟いたコリンの言葉が側に居たマルシャに聞こえる。
「昨夜何があったのだ!?詳しく聞かせろ!」
「プライベートな事はお話出来ませーん」
「お、落ち着いてアマンダ女王…」
アマンダが昨夜に何かあったと見て、アリナに問い詰めるが勇者はとぼけてばかり。
間に挟まれたカリーノはおろおろしていた。
「賑やかな仲間と一緒に笑い合って皆が笑っていく世界を作るっていうのが」
目の前の光景を柔らかな笑みを浮かべながら、コリンは眺めていた。
魔王のやるべき事はまだまだ山積み、カリーノを元の場所に送り届けたり、皆がのんびりまったり出来て笑い合える世界を作る。
魔王による世界征服はまだ始まったばかりだ…。
此処まで見ていただきありがとうございました。
今回でこの話はおしまいとなります。
最後まで見ていただいた事に改めてお礼申し上げます!




