初めての強敵に魔王敗れる!?
「あの女王あんな魔力持ってたのー!?」
「いや!違うよ、感じる魔力は…さっきの魔族の物だ!」
吹き荒れる風に踏ん張るアリナに、後ろで守られているカリーノは感じ取った魔力がグレーゴルの物だと伝えた。
姿形はアマンダ、しかしグレーゴルが自らの力を振るっている。
「ハハハ、悪くない!この女と俺の相性は良いようだ!」
声もアマンダの物、喋り方を聞けばそれが消えた魔族の男とすぐに分かった。
あの高笑いの仕草は先程も見た覚えがある。
「野郎、あの女王に乗り移って力を発揮して来やがったか」
カリーノの側で風を受けながらも、今のグレーゴルについて冷静にマルシャは見て、アマンダに乗り移って自らの力を引き出していると冷静に判断していた。
魔族にも色々なタイプは入るが、グレーゴルのように人の体を借りて戦うのはかなり特殊な方だ。
「うわー!凄い風!近づけないよー!」
接近戦を得意とするアリナだが、今のアマンダことグレーゴルに近づく事は荒れ狂う風によって叶わない。
「これは風魔法だね!それもかなり強いヤツだ!」
受ける風にコリンは魔力を感じ取り、自然による物ではなくグレーゴルが意図的に起こしている物だと知る。
「ハハハ!どうだ俺のイルヴェントの味は!?風魔法に関して人間は愚か、エルフや魔族でも俺の右に出る者など存在ししないのだ!」
「腹立たしい事によく笑うねー!」
広間の物が吹き飛ばされ、煌びやかだった女王の間は見る影もない。
高笑いするグレーゴルにアリナは言い放つも、その声は風によって遮られ届かなかった。
「カリーノ!俺の側を離れるなよ?」
「え…!?」
小柄な体が今にも吹き飛ばされそうなカリーノだが、彼はマルシャと共に飛ばされず留まれている。
「これは…魔力の壁…!?」
カリーノとマルシャの周囲に紫色に光る壁が何時の間にか展開され、彼らを暴風から守っていた。
これを発生させたのは小さな白猫だ。
「俺はルシファーキャット、こんな壁を作るぐらい軽いもんだ」
マルシャが魔力を発生させ、そこから風を回避する壁を作り出す。
魔王を守護するルシファーキャットの一族として、こいういう守りの術は持っている。
これでカリーノの身は安全だ。
「女性に荒っぽくやっちゃうのは好きじゃないけど、ボルトアロー!」
暴風を止めなければ多くに被害が及ぶ恐れがある、アマンダを気絶させようと考えたか、コリンは杖の先端を風の中心に居る相手へ向けて、赤い宝玉から雷の矢が放たれる。
「フン!!」
向かって来る雷の矢に対し、グレーゴルは下から上へと扇で扇ぐ動作をした。
すると自分の前に下から上へと突き上げるような、より強い突風が発生。
風魔法で魔力の壁を作り出し、コリンの雷の矢を消し去ってしまったのだ。
「!?」
自身の魔法が消され、コリンの顔が珍しく動揺を見せていた。
「え、ええ!?コリン君の魔法が消されたー!?」
これまで魔王の放った魔法で消された事などアリナは一度も見た事が無い、初めて起こった現象に彼女も驚いてしまう。
「その程度か魔王コリン!そんな雷の魔法などイルヴェントの壁に通用しないんだよ!!」
風を応用して防御壁としても利用出来るグレーゴル、彼の風はまさに鉄壁の守りと化していた。
「けど、これだけの風を起こし続けるんだ!魔力の負担は相当なもんだよね!?このまま粘り続ければ…!」
いくら魔力に優れた魔族でも、これだけの風を起こして維持し続けるのはかなりの負担とコリンは見ている。
風に耐え切れば勝機はこちらにあるはずだ。
「フン…こちらも攻められない、とでも思ったか?甘いぞ魔王よ!」
アマンダの顔をしたグレーゴルがニヤリと笑みを浮かべ、自身の左手で魔力によって念じ、左手の上に発生したのはブーメランのような形をした風の刃。
「この風でまともに動けない今の貴様らにこれを躱す術があるかな!?」
今のコリン達は強風で身動きが困難、そんな中で攻撃されれば避ける事はかなり厳しい。
「死ねぇ!イルヴェント・ラーマ!!」
グレーゴルによる必殺の風魔法、風の刃が文字通りの風に乗って飛ばされ、一直線にコリンへ向かい迫っていた。
ズバァッ
次の瞬間、鮮血が魔族の少年から噴き出して黒い服が血に染まっていく。
「あ…」
微かに声を漏らし、コリンは血を流して仰向けに倒れてしまった。
「!?コリン君!ウソでしょ!?そんな!」
グレーゴルの刃をまともに受けたコリン、目を疑う光景にアリナは思わず叫ぶ。
後方で見守っていたカリーノも目を見開いている。
まさかコリンが、魔王が負けてしまうなどあるのかと。
その魔王は自身や床を血で染めたままピクリとも動かない。
「ハーッハッハッハ!!所詮はガキの魔王!完璧な魔族の俺には遠く及ばん!貴様に魔王の器など無いわ!!」
勝利を確信し、グレーゴルは魔王をこの手で仕留めた事に今日1番の高笑いを見せていた。
自分こそが魔族で最も優れた存在、魔王を仕留めた事でそれが証明される。
天井を見上げて笑っていたグレーゴル、無惨に散ったコリンの亡骸を拝もうかと倒れ伏す魔王に目を向けた。
「…!?」
「え…!?」
次の瞬間、アリナとカリーノが共に驚愕する。
2人だけではない、グレーゴルも同じように驚いていたのだ。
倒れていたコリンの姿が急に代わり、彼と同じ背丈をした人型の白い物体。
それがドロドロに溶けて無くなっていく。
「お前ら、コリンを舐め過ぎだ。んな簡単に魔王がくたばる訳ねぇだろ」
この中でただ1人、マルシャだけが最初から分かっていた。
コリンが健在であり、ずっと行動していた事を。
「や、僕に勝って良い思い出来たかな?」
そのコリンは何時の間にかグレーゴルの背後、立ち上がった後に空席だった玉座に足を組んで座っている。
彼は全くの無傷だった。
此処まで見ていただきありがとうございます。
アリナ「強風でスカートの人は大変だよー!押さえてないといけないから!帽子の人も気を付けてねー!」
マルシャ「なんだかんだでお前まだ余裕そうじゃねーか」
カリーノ「僕はとてもそんな余裕無い…!皆凄いし…!」




