悪事の償い、働け魔物達!
「ありがとうなぁ!村を救ってくれて!」
「あんたらはルスティカ村の英雄だー!」
村へと帰還したコリンとアリナを出迎えたのは、村人達の感謝による声。
先程まで絶望的なまでに暗い雰囲気漂う村だったはずが、今は嘘のように明るくなりお祭り騒ぎとなっていた。
「すまない、俺達は何も出来ないまま村に居る事ぐらいしか出来なかった…」
「むしろ助かったけどねー、あんたらならゴブリン一匹行ってもすぐ倒してくれるだろうから何も気にせず戦えたし」
サイラードやミディサは戦いに参加出来ず、村に留まって戦況を見守る事しか出来ていなくて申し訳無く思っていた。
そんな騎士達に慰めの言葉か、アリナは陽気に笑ってサイラードやミディサの肩を叩く。
「坊主に嬢ちゃん、あの化け物達を退治してくれてありがとうな。ルスティカ村を代表して改めてお礼を言わせてもらう」
村長のゴラスがコリンやアリナに対して、頭を下げて礼を言う。
悩みの魔物達が消えたおかげか、少し彼の表情は晴れやかそうに見えた。
「ううん、まだ終わりじゃないよ」
「なに?」
まだ終わっていない、コリンの言葉にゴラスはどういう事だと幼い少年の顔を見た。
「オーガやゴブリン達のせいで駄目になった作物、それを改めて育てないといけないから」
「それだったら儂らがまた育てるぞ、時間はかかるがな」
失った大半の作物、それを取り戻さないと駄目だと言うコリンに、ゴラスは自分達がまた育てると力強く言い切る。
「それに関しては彼らにも手伝ってもらうよ、悪い事したらちゃーんと謝って償わないとね?」
「彼ら…?」
どういう事だとコリンに言われた言葉を考える間もなく、1人の村人が駆け付ける。
「そ、村長!ゴブリン達が!」
「!?」
再び場に緊張が走る。
またしても魔物達が来てしまったのか、そう思われた時。
「…畑、耕しています、オーガも一緒に…」
「…は?」
村人からの報告にゴラスだけでなく、他の村人達も呆然となってしまう。
「こらー、しっかりやるだよ!そこ、クワの持ち方が違うだ!」
「ケケー!」
ゴブリン達によって荒らされた畑、そこではそのゴブリン達がクワを使って畑を耕す姿があった。
デーモンイーターに食べられ、悪い心を取り除かれた魔物達は荒らした畑を自分達で耕し償うと決めて、コリンが癒しの魔法を施し彼らのダメージを回復。
そこからコリンは移動魔法で一度魔王城まで戻り、畑仕事に長けているオークのドンゴを、手伝いと指導の為に連れて来た。
彼らはドンゴからクワの使い方、畑の耕し方について学んでいる。
「力任せにクワを振り下ろす駄目だぁ、肩ぐらいまで上げて重さに任せて振り下ろすだよ。そんでこうだぁ」
ドンゴは手本として自身でクワを持ち上げ、ゴブリン達に見せていた。
彼は力任せにクワを扱っていない、非常に慣れた動作で土に刃先を入れていく。
その後に後退しながら、土を削るように手前へ引く事も忘れず。
「グオ!グオ!」
一際大きなオーガもクワを持って畑を耕し、ドンゴから違うと指摘されながらも農作業をしていた。
「これは…どういう事だ?」
先程まで村を襲おうとしていたゴブリン達やオーガ、それが同じ魔物のオークから農作業の指導を受けて荒れた畑を元に戻そうと、一生懸命耕している。
思わずゴラスはこの光景に両目を擦って見ていた。
「彼らのせいで大事な作物が台無しになっちゃったから、こうして畑耕してもらってるの♪あのオークは畑仕事のスペシャリストで先生役だよー」
満面の笑みでコリンが呆然としているゴラスや村人達に、今目の前で起きている事についての説明が行われるが、まだ理解が追いついていない様子だ。
自分達にとって恐ろしい存在であろうモンスター、それが農作業をする姿など誰が想像するだろうか。
しかし事実、ゴブリンやオーガが畑仕事をしている事に嘘偽りは無い。
「魔物が畑仕事をする姿など、見たことが無いぞ…こんな事あり得るのか…!?」
「しかし、夢じゃない…!抓って痛みがある…!」
帝国騎士として何度か魔物と遭遇し、戦闘を行った経験のあるミディサ。
彼女の経験、記憶の限りで魔物達のそんな姿は一度として見た覚えは無かった。
サイラードも夢ではないかと疑い、自身の頬を抓ってみるが痛みは伝わって来る。
「悪い事したんだし、こうやって働いてもらわないとね?」
ゴラス達の前で無邪気な笑顔を見せるコリン、これに対してゴラスは肩を震わせてきている。
「(何か、ヤバそう?魔物を殺さなかったどころか新たな魔物連れて来るんじゃねぇ!とか、石投げられたり追放とかされちゃうパターンある?)」
様子を見ていたアリナはこの後の展開を予測、見てきた漫画やゲームの展開的に村人達が魔物の存在を受け入れず、コリンや自分を責めたりするのではないかと。
人と魔物、先程まで敵対関係だったのが、すんなりと和解は難しいはずだ。
罵倒したり石を投げたりとやってきたら、それをした村人全員をシバいてやろうかと、アリナが物騒極まりない私刑を考えていた時。
「偉い!!感動した!!」
コリンの両肩に手を置いて、ゴラスは腹の底から大声で叫ぶように、彼の目を真っ直ぐ見て伝える。
罵倒などの言葉は一切無く、魔物に農作業をさせて償わせるコリンの姿勢、それがゴラスの心に深く突き刺さったみたいだった。
「魔物を懲らしめ、それで終わりにはせず荒らした者達の手で再生させる…素晴らしいではないか!ただの魔物退治専門の者には中々出来るもんじゃないぞ!」
テンションが上がっているのか声量、熱量共に収まる気配が無く、最初の陰気だった頃のゴラスは吹き飛んでいた。
むしろこちらが本来の彼の姿なのかもしれない。
「しかし、奴らまだまだ不慣れだな…見ておれん!皆の衆!儂らも行くぞ!」
「おう!」
まだまだおぼつかないゴブリンやオーガの農作業、それを見て本業の農家として血が騒いだのか、ゴラスを筆頭に村人達がそれぞれ農作業の為に動く。
「(あら〜、意外と受け入れちゃうんだなぁ。昔は偏見酷くて魔物ってだけで酷い扱いがお決まりのようなもんだったけど)」
知っている展開と違う事にアリナも内心驚き、今時の異世界も変わって来てるんだなぁと農作業に励む村人と魔物達を眺める。
「よし、俺も働くとするか。何もせず帰ってしまうのも気分が良くない!」
そこにサイラードも畑仕事に参戦し、村人や魔物達と共に畑を耕し始める。
村までわざわざ来て魔王や勇者に解決してもらい、騎士としてこのままでは申し訳無いと思っていた所だ。
「小隊長…問題解決の報告に戻らなければならないというのに」
「えーと、ついでにミディサさんも付き合っちゃう?」
「手伝いたいのは山々だが、私は今回の件を帝国にいち早く報告しなければならん。先に失礼する」
アリナの誘いを丁重に断り、愛馬へと乗ってミディサは一足先に村を後にした。
「しゃーないなぁ、そんじゃいっちょボランティアの畑仕事で磨いた腕を見せますかぁ」
元の世界で学生ボランティアの農作業を経験しているアリナは、クワを持って畑へ向かう。
「ほとんど農作業に走ってんじゃねぇか」
「でも、楽しそうだよね♪」
それぞれが畑仕事に動物の世話、額に汗を流し働き笑い合う彼らの姿はコリンから見れば活き活きしてる感じだ。
この村を明るく笑わせる、その言葉通りにルスティカ村は闇が払われ人々の笑顔が戻っていた。
「コリン君も、見てないで手伝ってー!」
「おっとっと?」
満足そうに見ていたコリンを、クレアが右腕を抱えて引っ張り連れて行く。
どうやら魔王も農作業をする事になりそうだ。
此処まで見ていただきありがとうございます。
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アリナ「この作品って畑仕事中心のスローライフなファンタジーだっけ?」
コリン「どうなんだろマルシャ?」
マルシャ「いや知るかっての、決めんのは作者だろーが」
アリナ「どっちにしてもその前辺りの注意書き有りな時と比べて、えらい感じ代わったよねぇ」




