事務員のおしごと
明日からうら若き少年(一人)少女たちは長い休みに突入する。
しかし、学校で働く者に休みはない。
教える生徒たちがいなくても教員たちは、
学期中とほぼ変わらず学校に足を運ぶ。
実はあまり休めない仕事という意味では、
軽いブラック企業に働いている者と大差はない。
だが、それと明らかに差をつけるものは
身近に休みを謳歌している存在があるかどうかである。
周りが全員辛い思いをしているならまだ公平な感触があるが、
ものすごく苦労している目の前で幸せそうにだらけている人間がいたら
『なぜ自分だけがこんな目に合う』
という不公平感が生まれ余計に疲れを感じさせられるものなのである。
学校を舞台とした話の中で生徒たちと楽しく話す教員の姿を書かれていて
楽そうな仕事のように思われるが、実際にはあそこまで気楽な仕事ではない。
と。
いうのが、教員という仕事について少し調べた者なら
だれでも知っている。
しかし、さらに厳しい仕事がある。それが学校の事務員。
前述に教員は軽いブラック企業並みに忙しいとあるが、
事務員はそれを軽く超える。ブラック中のブラック企業だ。
(本来なら)学生と話す余裕はなく、やりがいもなく、
休みもなく、始末書を書かされ、教員たちが企画した案のために
各所への連絡を取り次ぎ、学生たちが勉強できる環境を作るために頑張るも
その姿はただの背景とすら扱われず注目されることなどまずない。
だが、それでも大天使ラヴは事務員として己の全身全霊をもって
その職務を全うしていた。
「そろそろつく頃かな。ちょうど区切りもついた」
ラヴは手にした赤ペンを置き数枚の紙を机の上でまとめると指を鳴らした。
そうすると、同時に仕事をしていたラヴの分身が影のように薄くなり、
机やら書類やらを貫通して本体に重なり合った。
しかし、ゆっくり伸びをしている暇はない。
急いで場を整えなければ、このすぐ後に来る災厄に
消化してきた仕事をまた増やされることになってしまう。
手早く片づけを済ませると、壊されてもいいちゃぶ台と
気持ちを落ち着かせる香を焚いて準備を整えた。
「さぁ、来るぞ。覚悟を決めろラヴ」
これから受ける痛みをラヴは知っていた。
それを覚悟しろと自分に言い聞かせた直後、
事務室の扉が爆発によって飛び散り、尖った木片がラブの体に突き刺さった。




