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勇者は神様に頼んでギャルゲーの世界に転生しました  作者: 火村静
攻略ヒロイン二つ目 バカ後輩編(84057文字[空白・改行含む]
84/111

Q,ルール違反って何だ?A,いいえ、何でもありません

『  国語

P08 一、1ア 2エ (以下略)』

『  英語

P12 一、1ア 2エ (以下略)』

『  理科

P08 一、3ア 4イ (以下略)』

『  社会

P04 一、3カ 二、ウ (以下略)』

エクスマの後ろにあった体育用具を乗せた棚に

4枚の大きなポスターが開けっ広げに吊られていた。

白地のそれらには一番上の行に科目名があり、

そこから下はページ番号と問題番号、

そして記号がそれぞれくっきりと黒い太文字で記載されている。

「まるで隠す気が無いっ!」

頭の悪いユーシャが高得点を取った秘密。

エクスマはそれをずっと考えてきた。

それがまさか『カンニングしてますが何か?』とでも

言うような方法だったとは思ってもみなかったのだ。

「先輩ッ、まさか本気でこんな小細工で私を出し抜こうとしてたんですか!?」

「出し抜こうとは人聞きが悪い。が、確かにそれは俺がやった」

唖然としたエクスマにユーシャは腕を組み憮然な態度で返した。

「別にいいだろ?

お前も次の自分のセットにすればいいんだからよ」

「それはそうなんですけど!

今わたしが言いたいことはそういう事じゃなくて、

もっと他にいい方法とか無かったんですか?

ブラックライトを当てたら浮かび上がるとか、

赤外線を通したら見えるようになるとか」

「ん~。めんどくさい」

ユーシャは伸びをし、大きな欠伸をかいた。

(ホ、ホントにいい加減な人だ)

勝負を持ち掛けた以上、何らかの勝算があったうえで挑んできたと思ったが、

結果はこの通り、杜撰の一言に尽きていてエクスマの目は点になっていた。

「いいんですけどね? 私も後で見させてもらうわけですから」

「へー。じゃあ、お前も用意してきたんだ。スゴイネ」

「はい?」

エクスマは自分とユーシャとの間に齟齬があるように感じた。

「何言ってるんですか。私も先輩のポスターを見させてもらうんですよ?」

「は? やだよ。それは俺がわざわざ作ったやつだ。

なんでお前に見せなきゃなんねえんだ?」

「ははっ、なんでって。

相手がした不正行為を自分もしていいっていうルールがあるじゃないですか」

「ああ、あるな。それが?」

「それが? って。だから、私には先輩のを見る権利があるってことじゃないですか」

「俺のを見る権利? あるわけねえだろ」

【スキップ →勝負のルールが記載された紙を出現させた。】

ユーシャは出現させた紙面をエクスマに突き付けて言う。

「俺がした不正行為は『用意していた自分のカンペを見ながら答えた』、だ。

だから、お前がして良い不正行為も

『『お前が』用意してきたカンペを見ながら答える』、だろ」

「そんなの不公平じゃないですかっ!」

ずいとエクスマは踏み込んだ。

しかし、決して直接、ユーシャに触れようとはしなかった。

これは暴力で解決する問題ではない。

だから、エクスマは反論を訴えた。

「この勝負は明らかに先輩の方が有利です。

ここで直接答えが分かるものを作れない以上、

前もって作ってきた物を持ち出すなんて、

そんなの一方的じゃないですか!」

「そうだよ。だから?

確かに俺がずるいことをしたのは分かる。けどな。

ルールの中でも言ったはずだ。前のこと以外の不正行為は有りだって。

俺がこういうことをする可能性があったかもしれないのに、

それでも勝負を始めるまでに少し時間が欲しいとも言わず、

すぐにOKを出したのはお前だ。

だからこれは|引き分け『イーブン』だ」

「イーブンだなんて――」

「俺がここに書かれたルールの何か破ったか!

お前を襲ってもないし、勉強中書き込んでもねえ。

参考書の中身をいじってもねえし、

お前が何かイカサマをしようとしてるのも

ルールの範疇を超えない程度には止めようとはしてねえ。だろ?

何のルールにも触れてねえよ。

お前が不利なのは分かるがそれは俺のせいじゃねえ。

ルールの穴に気付けなかったお前が悪い!」

「くっ」

エクスマは一度にまくしたてられて言葉に詰まってしまった。

(しまった! ある程度のネタを仕込んでくるって分かってたのに、

軽い気持ちで受けてしまった。確かにそれは私のミスと言える。

普通なら不正行為をした先輩の方が明らかに悪いはずだけど、

それを認めるルールのせいで先輩への反論要素が見つからない。

しかも、最初に口頭で言ってたから説明不足ともいえないし)

エクスマはまんまと嵌められてしまった。

それはこの現状もそうだが、精神的にもである。

悪いのは相手ではなく、それに対抗できない自分である、

自分が悪い、と勘違いをさせられている。

その勘違いがエクスマを追い詰め、試行の幅を狭めた。

(どうしよう。どうすればいい)

思えば先攻後攻など大した意味なんてなかった。

第6セット目に後攻側が解答冊子を読みながら答えるというリードは

第5セット目に先攻側が同じことをしてしまえば何の意味もなかった。

最初から本気で不正行為をするべきだった勝負に

油断して手を抜いてしまった、と頭の中で後悔が渦巻いていた。

悶々と考えるエクスマを気にせずユーシャは

次の自分のセットで扱う科目に社会を選び、十分間の勉強をしていた。

それも終わり、ユーシャの解答時間。

手渡された参考書を持つエクスマの正面には

ユーシャがまっすぐ自分に、いやその後ろの解答が書かれたポスターを見ていた。

(やっぱり見てきますよね)

エクスマも振り返りユーシャの貼ったポスターを再度見てみた。

すると、

(あれ? よく見てみると何問か飛んでる)

問題番号1の次に2……ではなく3があり、

時には1ページ分飛んでいる場所もある。

(これは……行けるっ!)


結果 第3セット 攻撃:ユーシャ 得点:30点中――15


「良しっ!」

ガッツポーズを決めたのはエクスマである。

彼女は飛んでいた問題だけを選んで出題したのだ。

当然、その問題の解答にぽすーたーの有無など関係なく、

第1セットと比べて粗末な結果となったのであった。

「これならまだ逆転が狙える!」

第5、6を両方とも冊子を見ながら答えて満点を取ると仮定して

最終的な結果を予想したところ73/90対(50+『4セット目の結果』)/90。

つまりこのセットで24点以上取ればエクスマの勝利は確定するのである。

沈んでいた気分が持ち直したことで彼女の思考回路は息を吹き返し、

次への策を思いついた。

「先輩。勉強時間中、ここにいる限りなら何をしててもいいんですよね?」

「そりゃ別に構わねえが、先に科目を選んでいけよ。

それから十分はお前の自由だ」

「なら、科目は英語で」

エクスマは英語の参考書を手にし、

それをそのまま椅子の上に放置して倉庫内を歩き回った。

(そう。まだチャンスはある。先輩の性格を考えれば

この手は効くはず。この勝負、ギリギリで私が勝つ)

天井から床までこの倉庫全体を舐めるように見回すエクスマをよそに

瞼を重くしたユーシャは欠伸をしながら思っていた。

(何しようとしてんだ、アイツ。

まっ、別に構わねえけどよ。一つ確実なのは――)

ユーシャはとうとう目を閉じ睡魔に取りつかれる寸前、

心の中で断言した。

(この勝負、俺の全勝だ)

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