Q,高得点の秘密って何だ?A,それは次回のお楽しみ
問題30個から28個の正解、
全ての問題がたった4~6個の選択肢を
持つ記号問題であると言っても
この正解数はただのラッキーで取れるはずがない。
「あっ。どこを間違えたのか、もう一度見せてくれよ」
嬉しそうに芝居がかった羞恥の姿をさらしていたユーシャは
エクスマが持っていた参考書をさっと奪い取り、
自分の答案用紙と比べて眺めていた。
「はぁ~。ふんふん。なるほどなるほど。
そういうことか。しまったなぁ」
間違えた2問はどちらも
『次の語句の正しい意味は?』
というただの語彙力を測る内容なので、
ユーシャのその納得の言葉はただこちらを
挑発しているだけだと分かる。
分かっているだけにとても不快だった。
「良し、分かった。じゃあこの本は俺が戻しに行ってやる。
ついでに残りの四冊をこっちに持ってきてやるよ。
一冊取ったら残りの本を戻すのも俺がやってやるよ。
だってほら、少しでも長く勉強しねえとヤバいだろ? お前」
「…………お願いします」
見え透いた挑発に腸わたを煮えくり返る思いを殺し、
敢えてそれに乗って参考書を返しに行くユーシャを監視していた。
(絶対にありえない。何かトリックがあるに違いない)
そう思い、ユーシャの動作に目を凝らした。
残念ながら四冊の参考書を持ってくるまで
それらしいことをユーシャはせず、エクスマの監視は徒労に終わった。
「ほら、選べよ」
「それじゃあ――」
エクスマは数学を選ぼうとしていた。
なぜなら、数学は暗記の科目ではないからだ。
公式を使って色々な場合の問題を解決する思考力こそ
数学で求められていることである。
逆に言えば数学は思考力を問われる科目だから
暗記する事項というのは他の科目に比べて極めて少ない。
両手でババ抜きのように広げて待つ四冊の本から、
一番左の数学の参考書を抜き取ろうとした。
(『右』?)
もう少しで本に触れそうなところで指が止まった。
(どうして右なんだろう? いや、『前』って言った方がいいのか)
四冊の本は左から順に理科・社会・英語・数学となり、
右にあるものほどエクスマから見て手前にある。
(あれ? 確か、元の並びは英数国理社だったよね?
こんな風に広げる場合、両端から空いた穴を詰めて
一塊として持ってきた後で広げるはず。
そうなると英数理社のじゅんにならないとおかしいのに。
開く向きは全部同じだから敢えて向きを変えるために
本を抜き取ることもない。どうしてこうなった?)
この小さなことに異常を感じ、エクスマは集中して
指一つ動かさずに考えた。
そして、一つの思い付きが浮かんだ。
(もしかして選ばれたくない物を後ろにしてる?)
ユーシャは単純な人間――ではない。
考えることがそもそも苦手で素直な馬鹿なのだ。
だから、こんな雑なことを考えてもおかしくはないとエクスマは思った。
試しに指先を一番後ろの理科に向けると
微妙にユーシャは嫌そうな顔をした。
ここまでの全てが演技という可能性――もない。
そんなひねくれたことを考えられるほどユーシャは賢くないからだ。
「……」
エクスマは一番後ろに出された理科の本を取った。
「っちっ。理科か。めんどくさいことしやがって」
ユーシャは舌打ちしてあからさまに嫌な顔をしたが、
演技のようには見えなかった。
その後、ユーシャが余りの本を元の机に戻しに行くところまで見たかったけれども、
エクスマはそうせず自分の勉強のために10分だけの時間を使うことにした。
エクスマが勉強している途中、本を置き戻したユーシャは
彼女の周りをぐるぐる回ってしゃべりかける。
「お前、さっき俺に出してた問題、全部難易度レベル5のやつだろ
俺もお前にレベル5の問題ばかり出そうかなぁ~」
「あっ、ヤバっ。出題範囲絞っちまったか?」
「そういえばレベル5の問題ばかり出すって言ったけど。
本当に出すとは言ってねえから」
明らかに妨害をしにかかっていることは自明であるが、
それを気にしないように参考書の勉強に取り組んだ。
「はい、終了」
それから十分が経ち、第2セットの勝負が始まった。
その結果は
結果 第2セット 攻撃:エクスマ 得点:30点中――20
「ふぅ」
第1セットより低い点数だが、壊滅的な差がついているわけではないことに
エクスマは安堵の息を漏らした。
(数学の方がだけど理科も一応、得意分野だったし良かった~。
8点差ならまだ取り返せる)
エクスマは椅子からすり落ち、ダラッとした姿勢で座っていた。
その姿は打ち上げられた海藻のように見えなくもない。
ユーシャは第2セットが終わると、さっさと本を戻しに行き
次のセットで選ぶ科目を吟味していた。
(悩んでる。やっぱり理科は選んで欲しくなかったんだ)
数学はダメで理科は良い。その理由がエクスマが今、考えていることだった。
(得意科目とかじゃないはず。だってどっちもひどい点数だったし。
それはもっと頭のいい人が考えること、先輩とは無関係な問題だと思う)
「ん~。何だろう。全然分からない」
勉強していたことと緊張しながら問題を解くことに
体が凝ったエクスマは椅子に座ったまま上体を反らせた。
その時、視界の上の方に巨大な白いものが見えた。
視界の上の方にとは頭上という事ではなく、
真上に顔を向けた状態からの上方向、背後の事を指していた。
エクスマは横に体を捻って背後の白い何かを見た。
「なっ。えーーーーっ!」
そこで見たものとは……。




