正義って何だ?
シャルロットの『成長』を認めたくないユーシャはたまらず声を上げた。
「お前が変わる必要なんてない!
俺みたいな色々間違った人間でも分かるぞ。
お前は悪くなかった! 何も悪くなかった!
悪いのはお前をいじめた連中だ。
変わらなきゃいけないのはそいつらのはずなのに
何でお前が変わるんだよ。
どうにもできないことだから、自分を変えるしかないって、
そんなの不公平じゃねえか!」
「ユーシャ……」
「お前だって、それでいいのかよ!
お前は変わったんじゃねえ。変えられたんだ!
テメエの陰口を叩く奴らの機嫌を取って
今までのお前を全部捨てさせられたんだぞ!
悔しくねえのかよ! そんなんじゃお前、やられっぱなしだぞ!」
理不尽な仕打ちに対しても寛容的であることは正しいのかもしれない。
受けた暴力をさらに強い暴力で返すことは間違っているのかもしれない。
よく分からないがそれらが倫理や常識というものかもしれない。
だからといってユーシャは認められなかった。
「変わるなよ。お前は今のままで良いんだから。
諦めることをするな。
悪い奴らをボコボコにして勧善懲悪を尽くせよ。
お前の正義ってそういうもののはずだろ!
お前の正義で! お前を助けてやれよ!」
シャルロットという女は正義感があり強気な女であるのだ。
それを変えられたくない。変わってしまったら、
もうこの世にシャルロットという女が消えてしまうのだ。
自分の所有物が他人の手によって失わされることへの危機感のせいか
ユーシャは必死になってシャルロットの成長を否定した。
それを見たシャルロットは一言だけ口にする
「どうして泣いてるの?」
「あン?」
気づけば自分の目から一滴だけ涙が零れていた。
思わぬ醜態に恥ずかしくなって
ユーシャは背を見せた。
「お前があんまり情けなさ過ぎるから、
見てて笑い泣きしちまったんだよ!」
我ながら無理がある言い訳だと思うが、
自分自身どうして泣いたかを分かっていないので
とりあえずそう言ってごまかした。
勝手に怒って、勝手に泣いて、
勝手にへそを曲げた男の滑稽さを見て
シャルロットは思わず噴き出した。
「ハハ。何それ?
もしかして同情してるの?」
「ちげーって」
振り返ることなく否定の返事をしていても、
体は正直なもので、今のユーシャの顔は耳まで赤くなっていた。
それを見てシャルロットは再び笑った。
そうして、二度にわたって笑わされたおかげか
呼吸が楽になり、息と一緒に体の中に溜まっていたもやもやが
吐き出されて体が軽くなったように感じる。
「……」
シャルロットはほんの悪戯心から
ユーシャのそばまで近づき、彼の背中に
自分の背中をもたれさせた。
「余計なお世話よ」




