警察って何だ?
ユーシャはシャルロットが校舎を破壊した事件の裏に
エクスマが糸を引いていると言った。
しかし、その言い分は酷くいい加減というべきか、
考えが足りないというか、全く信憑性を感じられない空想話だった。
それでも自信をもって自分の妄想を主張するユーシャに
ラヴは自ら敗北フラグを建てるセリフ「証拠を出せ」と吐いた。
事件の概要を知ってまだ五分も立っていない午前11時半。
昨日まで女生徒でごった返していた廊下は今、
たった二人の男が占領していた。
「ハッ、証拠だと?」
自分と相手、それしかいないこのだだっ広い空間は
鼻で笑っただけのセリフすら良く響かせる。
いや、良く響いた理由はそれだけではないのだろう。
(なんて堂々としているんだ)
人を疑うとき、必ずストレスが生まれる。
それが自分に近しい人間が相手となった場合、
それはさらに大きいものとなる。
だが、今のユーシャからは全くそれが感じ取れない。
確固たる何かが自分の中になければ
この姿勢はとれない。
それは一体何なのか。
固唾を飲んで見守る中、ユーシャは雄弁に答えた。
「ンなもん、有るわけねえじゃん」
「ぬぉいっ!?」
予想通り、いや予想外の言葉にラヴは
何もないその場でずっこけてしまった。
「つーか。そんなもんあったらお前らが先に見つけてるだろ。
常識的に考えろよ、常識的に」
お前が言うな、という言葉は心の隅に追いやって
ラヴは心からの突っ込みを入れた。
「じゃあ何? 今までの話は本当に君のカンだったわけ?」
「そうだが?」
あっけらかんとそう答えたユーシャにとうとう頭を抱えてしまった。
(それはそうだよね。君は平気で人を悪い奴だと決めつけられる人間だったよね。
いや、分かってました。分かっていましたよ、私は)
心のどこかでユーシャが名推理することに期待していたのか、
ラヴは落胆して言葉を失ってしまった。
そこで代わりに口を開いたのがユーシャだった。
「見た目は高校生、頭脳は三十路の名探偵とでも思ったか。
逆に聞くがよ? お前、俺を何だと思ってんだよ。川柳で正直に言ってみろ」
「燃えるゴミ
場所によっては
燃料に
言いたくないが
君より便利」
「没」
審査員からの没コメントより川柳を呼んだ天使は
竹やりで串刺しにされ、窓からつりさげられた。
「そこまで下じゃねえよ。ただ推理力と洞察力がないだけの
ただの男だ」
「いや、それ以外にも色々足りてないよ?」
「そこは問題じゃねえよ。要するに俺はただの人間であって
名探偵じゃねえんだよ」
ユーシャは再びエクスマが現在いる場所に足を進めた。
「そもそもこれが推理物の話のネタだとしたら、
もう解決してんだよ」
「解決って? まさかシャルロットがこれをしたことを
認めるっていうのかい?」
刺された竹やりから竹馬を作って後ろをついてくるラヴは
ユーシャの言葉に驚いた。
「認めるも何も。警察連中がそう言うならそうなんだろうよ。
そこから違ったら本当にヤベエぞ?
捜査のプロである警察が探偵気取りの一般人に推理で負けたら
世の中滅茶苦茶になるぞ」
「ああ。うん。それは納得だ」
もしそんな現実があったとすれば警察とは何かという話になる。
仕事中は税金使って遊んでました(笑)では済まされない。
実はもっと…………ということもあり得なくはない。
そこまでユーシャが考えていたとは思っていないが、
少なくとも本当に危険なことがどういうことかを
感覚的に認知する能力はあったようだ。
「なら、君は一体何をしようとしているんだい?」




