勇者の願いなんてどうでもよかった
学校=女と遊ぶ場所
学校に行ったことがない勇者の頭の中ではこの式が成立しているようだった。
「あー、うむ。要はモテモテになりたいということか。
ならば学校に行く必要などないじゃろう」
勇者の人間性をよく知っていた神様としてはそういう俗物な願望を持っていることは
正直どうでもよかった。
ただ、いきなりぬか喜びさせるような言葉を言うなよ、と言わんばかりに
軽くグチをこぼしたつもりだった。
だが、
「神様…………あんた、全能のくせになんにも分かっちゃいねえっ!」
「な、なんだと!?」
予想以上に勇者の反応は大きかった。
(な、何か間違った解釈をしたのじゃろうか。いやしかし、
今までの話を整理すればそう解釈するしかできんはずじゃが)
「いいか、神様。ちょっと長い話になるが聞いてくれ」
「お、おう。よかろう。申すがよい」
言われるがまま神様はじっと勇者の言葉を待つ
「いいか? 確かに女にもてたいなら
初めからモテ男になるとかそういう内容で良い。
だけど、違うんだよ。別に初めから好きになられる状態じゃなくていい
むしろ逆だ初めは女から好きだと思われない方がいい。いや違うな逆っていう言葉は間違いだ
別に最初はどんな存在だろうと構わないんだ。最初から俺に惚れた女なら最初からイチャつくだけだし
俺のことが嫌いなら攻略するだけだ。面倒ではあるけれどだからこその面白みはあるしどれも同じじゃつまらない
それでも出来ればチョロいほうがいいなぁ。あまり一人の女に時間を使いたくないし、何かの拍子にコロッと落ちて、それからキャッキャウフフな感じになればいい。
で、それが何で学校に行きたいことになるかって言うとやっぱり美少女と一番出会う場所って言ったらそこしかないだろ? わざわざ探しに行かなくても向こうから勝手にやってくる。
しかもやってくる女の種類がとにかく多い。ツンデレ、天然、母性に清楚。先輩後輩同級生。あっ、ちなみに全部美少女だからな。かわいい系キレイ系どっちも寄こせだが、ブスだけは要らねえ。
ブスのツンデレなんてキモイだけだしブスのクールってそりゃ愛想がないだけだと俺は思う。
まぁつまり今の話を要約するとだな。俺はただモテたいんじゃなくて攻略する部分も含めて色んな女と関わって、落として、メロメロにさせたい。それに一番適しているのが学校だった、っていう話だ
分かったか?」
「……」
要約するとひどくどうでもいい話なのだと神様は理解した。
(どうしようかのう? 正直手間はそうかからん。
私にとってはリンゴを一つ作ることも世界を一つ作ることも同じじゃからな
だが、この男が私のおかげで笑っている顔を思うと無性にやる気が起きん。
それに前みたいな失敗もしたくないしのう……)
一度口にしたからには神として願いを叶えてやるか。
それとも神の力で願いを叶えること自体を無かったことにするか
約束と葛藤とそれから倦怠感で神様の頭の中がぐるぐると渦巻ていく。
「むぅ……」
「おい、どうした神様」
「……良いか! 考えるのが面倒じゃ」
もう勇者と関わりたくない、という言葉までは出さず
テキトーな対応をすることにした。
「あい分かった。望み通りそのような世界を用意してやろう」
「俺が魔王を倒したこととか、魔王の残党がいるとかそういうのは残してくれよ?
あと、女を攻略する勉強のための時間と住むところと俺の名前も用意してくれ」
「うむ。よかろう。では勇者よ。その願い叶えてやろう」
神様は右手を天に掲げるとそこを中心に光が広がり、全世界を飲み込んでいった。
その日、世界は書きかえられた。
誰もそれに気づかず誰もその変化に疑問を持てず
勇者ひとりだけに都合の世界へと変わってしまったのだった。
ちなみに神様の出番はもう無いのであった。
「嘘じゃろっ!?」




