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マタギの孫をなめんなよ!【書籍化】  作者: ハーーナ殿下
【最期の森】の章

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149羽:親と友を越えて

【あらすじ】

突如現れた“魔穴”の影響で森の精霊によって閉ざされたしまった大森林の中に潜入した『魔獣喰い』マジウス、青年騎士レオンハルト、『聖騎士』ヘルマン、女騎士スザンナ、帝国の槍皇子ネロ、女槍使いヘリヤの6人はそれぞれ分かれて、中心部である“魔穴”を目指す。そこには彼らのゆかりある5人の聖女たちが柱として囚われている。彼女たちを助け出し大陸に平和を取り戻す為に『魔獣喰い』たちの最期の戦いが始まる。





「マジウス、本当にこの方向で大丈夫なのか?」


森の中を並走する青年騎士レオンハルトが不安そうにオレに聞いてくる。


「レオン、ああ、大丈夫だ。ここで間違いない」


生まれた時からこの大森林で暮らす森の部族である自分にとって、この程度の森道は苦にもならない。だが不安を感じるレオンハルトの言葉通りに、鳥並である自分の方向感覚も少しズレているのも確かである。


瘴気しょうきが濃い“魔穴”の影響なのかそれとも“敵”の術なのか・・・とにかく感覚がおかしい。だが恐らくこの道自体が一本の道標で魔穴に辿り着く正解の道であり、中心部に近づいているのは確かなので、オレはレオンハルトと共に先に進むのであった。


とにかく今は時間が勝負だ。オレたちが大森林に侵入し中心部に近付いている事は“相手”にも気付かれているだろう。今はまだこの森の空間も安定状態だが“相手”に行動を起こされたなら、柱となっている五人の女性たちの命もいよいよ危ないのだ。


森の中を進みながら彼女たちの安否を心の中で願う。



「・・・レオン、止まれ!」


何かを感じたオレのその声と共に、並走するレオンハルトも足を止め前方の“ソレ”に気付く。森の血が混じっているレオンハルトも人並み以上に感覚を鋭い。


「よりによって、この道はコイツが守護しているのか・・・」


前方に仁王立ちしている漆黒の戦士の姿を目にし、オレは思わずそう毒づいてしまう。


「こいつは確か・・・“黒騎士”か・・・」


腰の剣を抜き前方を警戒しているレオンハルトはオレに確認するようにそう呟く。その言葉に返事をするまでもなく、オレたちの進む一本道の先に立ちはだかるのは全身を闇よりも濃い全身鎧を身にまとった重戦士であった。


現在四人の存在が確認されている“敵”の一人であり、不死身の身体と鉄壁の守りの重戦士“黒騎士”。その男が手に握る大戟ハルバードと大盾を大きく構えこちらの行く手を阻んでいる。


「レオン、この一本道自体が“魔穴”に辿り着く唯一の道だ・・・つまりこいつを倒さなくては先に進めない」


左右二手に分かれ森の中に消えて行けばこの黒騎士を撒く事は出来るかもしれない。だが、それでは“魔穴”に辿り着けないだろう。この道を突き抜けて行かなければ先にある目的地に辿り着けないとオレは直感的に感じていたのだ。


『誰かと思えば“魔獣喰いの坊や”に“混じりの小せがれ”か』


同じくこちらに気付いた黒騎士はオレとレオンハルトの姿を見て、実に詰まらなそうにそう呟く。


おや?その姿は以前の“魔”が溢れる雰囲気とは違い、全体的に少し人間らしさを醸し出している。だが逆に黒騎士から発せられる圧倒的な殺気と圧力は離れた所にいるこちらまでビリビリと届く。


強行突破か・・・いや、この細い道だ。見た目以上に素早い黒騎士の攻撃をい潜り先に進もうものなら、無防備な自分たちの背後をさらす危険性がある。


(ここでオレの覚醒した力を使えば何とか黒騎士を倒せるかもしれない・・・でもこの力は後どのくらい使えるのか不明だ・・・出来れば温存して“魔穴”に進みたいところだが・・・)


弓使いであるオレと優れた剣士ではあるが圧倒的に破壊力が足りないレオンハルトとの二人では、この目の前にいる重戦士を相手にするには相性が悪すぎる。


(せめてアイツ等がここにいてくれたら・・・)


こちらにゆっくりと近づいて来る黒騎士の圧倒的なプレッシャーにオレたちは一歩も動けないでいたが・・・ソレを感じた。


(間に合った・・・間が悪いというかナイスタイミングというか・・・)


オレは心の中で苦笑しながら黒騎士に向かい一歩踏み出す。


「レオン、行くぞ!」


隣で立ち尽くすレオンハルトに声をかけオレは足を速める


「行くって・・・ああ、そういう事か!」


同じく察したのだろう、レオンハルトも同じように黒騎士に駆け足で走り出す。


『玉砕覚悟で向かってくるか・・・それとも矮小わいしょうな小ネズミの様に我が脇を抜けれと思うてか』


黒騎士はそう叫ぶと右手に持つ大戟ハルバードを振りかざす。その動きは巨体に似合わず凄まじい速さで、その言葉の通りに黒騎士の脇を走り抜けようとするオレとレオンハルトと一気に吹き飛ばす威力があった。


黒騎士の大戟ハルバードが今まさにオレたちの脳天を斬り砕こうとしたその瞬間だった。その矛先はオレの頭の寸前で止まり、オレとレオンハルトは黒騎士の脇を走り抜ける事に成功した。


大戟ハルバードは寸止めしたのではなかった。飛来した巨大なソレにより遮り防がれたのであった。


『これは“魔獣の大盾”・・・』


突然飛来した大盾により仕留め損なった黒騎士。その眼差しはその先をジッと睨み観察している。そして先の森影からゆらりと人影が現れる。


「随分と遅かったな・・・危うく真っ二つにされるところだったぞ」


オレは自分の命を救ってくれた大盾の持ち主に声を掛ける。


「まあ、そう言うな。何しろお前の残していった暗号やら地図が分かりづらくて時間がかかたんだぜ」


右手に巨大な大矛を持つ大男『岩の矛』はそう悪態をつきながらこちらに返事をする。


「そうだな、帝都の子供ですらもう少しまともな字を書くぞ」


『岩の矛』の隣に立これまた巨大な大剣を担いだ銀髪の偉丈夫『赤髪』ガエルはそう相づちをうつ。


「う、うるさいな・・・あれでも丁寧に書いたつもりなんだからな・・・でもとにかく助かった。あれ、お前たち二人だけか?『黒豹の爪』大隊長にも手紙を送っておいたはずなんだけど」


オレは『岩の矛』イワノフ、『赤髪』ガエルと共に一緒に行動していたはずの腕利きの女戦士『黒豹の爪』が側にいない事に気付き問いかける。


「あいつは今は身重みおもだから置いてきた。黒騎士の相手くらいオレたちだけで十分だ」


ガエルはポツリとそう呟き返事をする。


「そういう訳だ『魔獣喰い』。お前たちは先を急げ」


『岩の矛』は手をひらひらさせオレにそう合図をする。


「だけどもこの黒騎士相手にお前たちだけじゃ・・・いや、分かった・・・後は頼んだぞ!」


オレはそう返事をして、レオンハルトと共に“魔穴”に向かい走り出す。


警戒していた黒騎士だったが、走り出すこちらを無視し近付く『岩の矛』とガエルの方を凝視していた。


『我が愚息“岩の矛”にその友の“赤髪”とやらか・・・いいのか二人を先に行かせてしまって・・・奴も言うように貴様ら二人だけでは我に敵わぬ事は三年前のこの森での戦いで痛感していたはずだ』


黒騎士は冷徹な声でそう呟き目の前の若き二人の戦士を目踏みする。


「残念ながら二人じゃねえ。ここにいる『赤髪』は露払いで立会人っていったところだ」


『岩の矛』にそう言われたガエルは大剣を構え、誰もいないはずの森の闇に剣を向ける。するとその先の木陰から黒騎士と同じような格好をした漆黒の黒い騎士が現れガエルに向かい遅いかってくる。


恐らくは黒騎士の能力である“複製”によって生み出された本人と同じような力を持つ伏兵であろう。その様子をチラりと眺めながら『岩の矛』は一人前に進み出て黒騎士の目前に立つ。


『よくぞ我が分身わけみに気付いたものだ・・・だがお前は武器や見た目は依然と全く変わってはいないようだが・・・それとも何か新しい能力に目覚めて自信でも付けたか?』


そう言いながら本体である黒騎士はゆっくり歩みだし『岩の矛』の前まで進む。あと半歩でも踏み出したなお互いの巨大な矛と戟の射程圏内に入る。一撃必殺、どちらの攻撃も当たりさえすれば相手を戦闘不能に追いやる破壊力を持つ。


「他の奴らはどうか分からねえが、オレには不思議な力や能力なんてものはねえ・・・あるのは親から貰ったこの頑丈な体躯と『魔獣喰い』のヤツにだけは絶対に負けられねえこの気合だけだ!」


そう叫ぶと『岩の矛』は深く息を吐き出し気合を溜める。


『頑丈な体と気合だけだと・・・』


そうさげすみながらも黒騎士は目の前の男からかつてないない程の力が漲り溢れだしているのを感じ、自分でも気付かない内に半歩後退りする。


(これは・・・力自慢だけでの我が息子がここまで成長していたとはな・・・村に残して妻に・・・いや『魔獣喰い』に感謝するべきか・・・)


黒騎士は兜の中でニヤリと笑みを浮かべる。それは冷徹なこの黒騎士がこれまで一度も見せた事がない様な暖かい表情であり笑みであった。


『だからと言って手加減はせん』


黒騎士はその表情を兜で隠しながら一歩踏み出し大戟ハルバードを振りかざす


「はっ、それこそ望むところよ!声届けし者は聞け!我が名はケドが村の英雄『岩の盾』が息子、戦士『岩の矛』イワノフだ!」


この戦況不利な状況において、その名乗りは天高く響き静かな森を斬り裂く。


お互いに巨漢同士の重戦士、大盾と矛と戟という似た武器を扱うこの両者。相手の攻撃を頑丈な大盾で受けながら斬撃を繰り出し合うだろう。一瞬でも判断を誤り相手の攻撃を受けてしまったなら即・死に至る戦い。


友である『魔獣喰い』マジウスを越える為・・・そして偉大なる父を超える為・・・『岩の矛』イワノフとその実父である黒騎士『岩の盾』の最期の壮絶な一騎打ちが始まったのである。



更新が遅くなりました。


いよいよラストスパートです。最後までよろしくお願いします。

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