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マタギの孫をなめんなよ!【書籍化】  作者: ハーーナ殿下
【大森林 魔の森】の章

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107/204

79羽:帝都でデート?

大きな城門の通りを優先的に進んでいる集団がある



兵士達によって朝から並んでいた一般の市民や商隊の出入りは一時止められ、その隊列を眺めている



馬数頭に引かれた豪華な馬車を中心に、これまた装飾された軍馬に乗る威厳ある騎士達



歩兵や従者は徒歩で付き添い、後方には沢山の荷物を積んだ荷馬車が何台も連なる



その規模や物々しさをひと目見ようと、城壁内に入ってからも市民たちが列を成している



「また、どこかの国が我が帝国の軍門にくだり貢ぎ物でも持ってきたのか・・・」



「帝国軍は各地で連戦連勝だという。しかし、我々の暮らしが改善しないのは何故だ・・・」



「あの貢物もどうせ貴族たちの懐にしか入らないのだろうな・・・・」



遠巻きに見ている市民たちは、そんな噂話をしながらその馬車の列を眺め、すぐに興味を失って元の生活に戻る



この大陸にある大国のひとつであるヴェルネア帝国



その首都であるこの帝都はその規模、繁栄度共にかなり高いものがある



市民の生活は豊かで活気があるももの、何故か全体的に暗く後ろ向な雰囲気がある



「あと数年の我慢だ・・・」



そんな声も群衆の中から聞こえていた





ついに帝都に来た



不安要素もあったが国境からここまで特に問題もなく無事に到着した



大規模野盗に襲われらり、獣に襲われたり、騙し討ちにあったり・・・・



オレ達も常に周囲を警戒していた事もあったが、何といっても帝国東部方面軍が全面協力してくれ、警護と行程段取りを組んでくれたことが大きな要因だったのだろう



帝都に到着してオレ達が案内されたのは、城の近くにある外国からの使節団用の庭付きの大きな屋敷である



ここでしばらく待機して、数日後にヴェルネア帝国の長である皇帝に謁見するという



その辺の段取りはマデレーン王女と近衛騎士ヘルマン、軍師セリーナが準備しているという事で、やる事の無いオレは異国の屋敷で時間を持て余していた



一応交戦中な敵国の使節団なので護衛という名の見張りの元、その屋敷からは一歩も出られない状況にあった



「えい!とう!」



今回護衛として来た、我が森の部族の戦士達はその屋敷の大きな庭で、腕が鈍らないようそれぞれ剣や槍をふり鍛錬している



そんな様子をオレは暇そうに見ている



(せっかく大都会のヴェルネア帝都まで来たのに、またこんな屋敷に缶詰状態か・・・観光や買い物をして楽しみたかったな・・・)



オレはここまで来る道中の活気ある街中の様子を思い出し、一人もの思いにふける



「『魔獣喰い』様・・・」



そんなオレの背後から女性が呼びかけてくる



(こ、この声は!)



オレは急ぎ振り返ると、そこにはベール王国の王女付き女官の恰好に変装した精霊神官ちゃんがいた



普段の森の精霊神官着も、自然と調和し白を基調とした純粋無垢な雰囲気でよく似会っていたけど、今着ている女官の恰好も中々いい



メイド服とOL風な恰好の中間でキッチリした制服で、神官ちゃんのその大きな胸元がはち切れんばかりに盛り上がっている



「き、『清い水』ちゃん、どうかしましたか?」



オレはその胸をチラ見しながら、少し緊張し問いかける



「『魔獣喰い』様、下界では私の事はレティーナと呼んで下さいませ。あっ、『魔獣喰い』様もマジウス様ですね」



そう言い直し、いつも無表情な神官ちゃんは少し微笑む



(神官ちゃんは下界でのコスプレ変装や偽名ごっこノリノリだな。意外とノリがイイのかもしれない。俗世間好きというか)



そういえば、前に下界に一緒に行った時も観光や買い物を人一倍満喫していたようだ



オレはそんな事も思い出していた




「マジウス様・・・実は相談がありまして。その・・・私はこの帝都でどうしても行きたい所がありまして、よかったらそこに連れて行ってくれませんか?」



メイドOL風な神官ちゃんはオレのすぐ側まで近付き、小さな声で少し目を潤ませ上目づかいでおねだりポーズをして来た



(そんなに近づいたらオレの腕に、む、胸が当たっているんですけど。ああ、大きなゴムマリのような、マシュマロの様な夢のような弾力だ・・・)



夢の感触に意識が2秒ほど飛ぶ



「り、了解しました!オレに任せてください。あっ、屋敷の庭の入口に帝国兵の見張りがいますが、全然大丈夫なんで気にしないでください!」



鼻の下が全開に長くなっているオレは、神官ちゃんのお願いを聞き入れる



(胸の感触もそうだけど、神官ちゃんは髪の毛もいい匂いがするな・・・この匂いだけで昇天して死んでしまえそうだ・・・)



「本当ですか、ありがとうございます。行きたい場所は大体分かりますので、とりあえず屋敷を脱出したら後は何とかなると思います。それでしたら、善は急げ私も行く準備をしてきます」



そう礼を言い、自分の荷物がある部屋に急ぎ足で準備しに行く神官ちゃん



(それにしても神官ちゃんはどこに行きたいんだろう・・・初めて来るこの帝都で場所も分かっていると言っていたけど

・・・・ん? 二人でここを抜け出して帝都を歩き回るって事は、まさしく『デート』ではないのか!?)



オレその重大事さに気付き驚愕する




(い、急いで準備しないと!)



オレも自分の荷物がある部屋にダッシュで向かったのであった






外からの侵入者を防ぐ為にある屋敷の壁を乗り越え、オレ達は外に出た



幼い頃から軽業や隠密の訓練を受けてきたオレにとって、この程度の壁と兵士の監視は無きに等しい



一方、森で育ちの精霊神官ちゃんも意外と身が軽く、オレに難無くついてきた



壁を上る時は気のせいか、その大きな胸が少し重そうだったけど・・・



そんな訳で無事に屋敷を脱出したオレ達は帝都の裏路地を進む



オレ達は騎士と女官の服を脱ぎ、旅人風の服装と女巡礼司祭の恰好に着替えた



ベール王国の軍服はこの帝都では目立つので、着替えも何着か用意してあったのだ



屋敷を脱出する前に、オレは自分の副官に伝言も頼んでおき、何かあった時は対応してもらう事にした



オレの副官は優秀だ



屋敷を出るのも名目上は「敵国の帝都の市民の生活調査」と言っておいた



・・・・神官ちゃんの案内に従い道を進む



裏路地からやがて大通りに出ると、そこは賑やかな街並みが広がっている



大きな商店や露店が混在し、商品を売り込む活気のある掛け声が飛び交っていた



人々はお目当ての商品や掘り出し物を探しながら、何件も店を回り値下げの交渉している



日用品、食料品、装飾品など多種多様な店がそこにあり、森の生活に慣れていたオレ達の目は奪われてしまった



鶏のもも肉にタレをつけ炭火で焼いたいい匂いがし食欲をそそる




「ぐうう」



誰かの腹の音がする



隣を見ると神官ちゃんがヨダレを垂らしながら、その屋台料理を凝視している



(そういえば、神官ちゃんはオレと同じく位食いしん坊の大食いだったよな・・・屋台料理を見たらオレも腹が減ってきちゃったな)



先ほど昼食を屋敷で食べたばかりだったが、オレの腹も既に減っている



(屋台の料理を買うにはお金が必要だし・・・)



「レティーナちゃん、ちょっと着いて来てください」



オレは人ごみではぐれないように、どさくさ紛れに神官ちゃんの手を繋ぎ先に進む



しばらく行くと目当ての店の看板が見えてきた



オレ達はその商店の中に入る



そこは入口に強面の用心棒が二人立っていた豪華な店だった



店内には高そうなドレスや服を着た商人や貴族が多くいた



店の中には煌びやかな輝きを放っている宝石や金属品が多数陳列してあり、その商品を女性達はうっとりしながら眺め、連れの男性におねだりしている



『宝石貴金属専門店』と書いてあったので、ここで間違いはないだろう



(『買取します』とも書いてあったし、ここで大丈夫だろう)



オレは買取用カウンターに近づく



少し薄汚れた旅人服を着たオレの姿を見て、カウンターにいた店員は目を細め警戒している



(確かに他の豪華な服を着た客に比べたらみすぼらしいけど、そんなあからさまな目でみなくても・・・まぁ、換金したらさっさと出て行こう)



オレはそう思いながらも腰につけた皮袋から色の付いた小さな石を取り出す



一見するとただの色石に見えるが、光を当てると七色に輝くキレイな石だ



大森林の魔獣から獲れる宝石の原石だった



魔獣狩りなどでコツコツ素材や森の貨幣を貯めていたオレだったが、下界と森の硬貨は単位が違う


そこで今回はこの魔獣の宝石を持ってきて、帝国硬貨に換金しようと思ったのである



下界の話ではこの魔獣の宝石も貴重品として取引されているという



その宝石の原石を見て、店員の目の色が変わる



「お、お客様、ちょ、ちょっとお待ちください!」



そう言い、その店員は走るように見えの奥に行く



(あれ、もしかして魔獣の宝石はヤバかったかな・・・・)



すると奥から身なりのいい偉そうな商人が飛んで来る



「はぁはぁ、お客様大変お待たせしました。当商会の主でございます。この宝石をもう一度見させていただてよろしいでしょうか」



そう言いながら、その店主はオレの宝石を鑑定し始める



(うわー、何か大ごとになってきちゃったよ・・・・大丈夫かな・・・)



その店主は特殊なメガネみたいなもので、その宝石を調べている



「お、お客様。是非ともこの宝石を当店で買い取らせてください!帝国大銀貨8枚・・・いや10枚で是非買い取らせてください!」



店主は鼻息を荒く目を血走らせながらオレに聞いてくる



「あ、はい、買い取ってもらえるならそれでお願いします。」



そうオレが言うと、その宝石店主は嬉しそうに顔をする



店主は店の奥の金庫に向かい、そこから白銀に輝く大銀貨を出し持ってくる



「8、9、10枚。丁度ですね。ありがとうございます。ちなみにこの大銀貨って外の屋台で使えますか?」



いまいち下界の金銭感覚が分からないオレはその店主に聞いてみる



「屋台ではこんな大金は使えません。よかったら大銀貨を1枚小銭に両替いたします」



と言い、小銭に両替してくれた



そのやり取りを見ていた店内の客がざわつく・・・



その様子に気付いたオレと神官ちゃんはお金を貰って急ぎ外に出る




(さっきの雰囲気は何だったんだろう。宝石が意外と高く売れたのか・・・それとも足元見られて騙されたのかな?)



(まぁ、屋台のモノを食うだけだから何でも大丈夫かな)



そんな事を思いつつ、オレと神官ちゃんはさっきの屋台通りに急ぎ向かう





オレと精霊神官レティーナちゃんの二人は、両手一杯に屋台料理を持ち食べながら歩いている



あの辺に並んでいた食べ物屋台の料理を全種類制覇した感じだ



買っては喰い、買っては喰うその光景に周りにいた客からは歓声があがっていた



それ程位の凄い食べっぷりだったんだろう・・・



っして、結果としてさっきの魔獣から獲れた宝石の原石は凄まじく高い金額で売れたのであった



あんなに買い食いしたのに、小銭にですらまだまだ余っている



帝国の通貨感覚は分からないが、宝石は日本円に換算して100万円位で売れたのだろう



あんな小さな宝石がそんな金額で売れた事にオレ達は驚いた



(下界ではよほど貴重な宝石だったんだろうな。

そういえば、森の部族の下界直轄地ザクソンの宿場村でも、魔獣の素材は高値で取引されているって言っていたし

魔獣の死体にあんな金額をつけるとは・・・金持ちの収集性は理解しがたいな・・・)



そう思いながら、オレはあっという間食べつくし、屋台料理のタレを細部まで飲み干す



隣を見ると同じように神官ちゃんも料理を完食していた



(神官ちゃんは本当によく食べるよな。それでいて腰回りとかは細いから不思議だ。やっぱり栄養は全部胸にいってるのかな・・・)



腹も一杯になったオレはそう妄想する



「マジウス様、私までご馳走になり本当にありがとうございました。これで午後のオヤツの時間までは持ちそうです」



相変わらず無表情だが、口の下にタレを着けたまま神官ちゃんが微笑む



(これは可愛い!)



(あえて教えてあげないでこのままでいよう)



清純で可愛い神官ちゃんが、食いしん坊の証を口周りにつけたままの姿にオレは萌えながら前を歩く神官について行く



しばらく、すると目的地に着いたのか神官ちゃんの足が止まる



「ここだわ・・・・」



オレ達の目の前には石造りをメインした大きな建物が建っている



玄関の所に看板がある



『帝国中央療養所』




・・・・どうやら病院のようだ



(一体神官ちゃんはこんな病院に何の用があるんだろう・・・・)






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