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月下の狩人  作者: 岡崎佳凪
月の調停者たち
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第十一話 ランザス領の2人

キリがよかったので短めですが、その分早く投稿できました。


それでは第十一話です。

よろしくお願いします。

 ランザス領にある『月の調停者』支部は3階建ての建物だ。

 最上階が『月の調停者』用の階になっており、2階以降がそれ以外の人員が使うことになっている。


 一般人に『月の調停者』の存在は明かされていないため、基本的に人の出入りが多い宿屋、または飲食店や酒場といった何らかの店を経営することでその存在を隠している場合が多い。


 ここランザス領の支部は酒場を隠れみのとしている。その3階にある部屋には現在2人の『月の調停者』がいた。




「なぁラーイル、次の休暇はいつ取れるんだ?」


 そう声をかけてきたのは1人の男性。40代前半の見た目で、黒髪をソフトモヒカンにした身長175cmくらいの全体的に筋肉質な男だ。額に大きな痣があるのが特徴か。



 彼が声をかけた先には窓際のテーブルに腰掛けながら紅茶を飲んでいる男がいる。彼も30代か、もしくは40代くらいに見える。モヒカンの男より細身、平均的な体型のその男性はモヒカンの男よりは年齢が下だと思われるが、さほど違いはなさそうだ。

 明るめの茶髪をツーブロックにした短髪の男だ。顔は髪型の印象もあり爽やかな印象を与える。




「なんだ急に」

「いやさ、最後の休暇から1年は経ってるだろ? そろそろ休暇を貰ってもいいんじゃねぇかと思ってな」


 そう言いながらモヒカンの男はラーイルの対面の椅子にどかっと座り左腕をテーブルにつき前のめりになって彼を見詰めた。




 ラーイルは彼の方を見ずに、開け放たれた窓の外を眺めている。外は快晴で、眩しい陽射しの下で多くの人が行き交っている。


「おい、家族に会いたくないのか?」


 返事をしないラーイルにもう一度彼は声をかけるが、彼はなんの反応もしない。

 黙って返事を待つモヒカンの男にラーイルは外を眺めたまま口を開いた。


「……会いたいさ」


 一言。ラーイルのその一言でモヒカンの男は満足したような表情を浮かべ、先程より弾んだ声で話し出した。


「じゃあやることは決まってる。俺からも口利きをするし、俺がするまでもなく本部は許可をするだろうぜ」



 しかしラーイルは嬉しそうではない。


「なぁ、お前が自分の誓いに信念を持っているのは知ってるさ。だがそれが家族に会わないってことになるのは俺にはわからねぇな」


「わからなくていい。これは俺の中のけじめだ」

「んなこたぁ知ってんよ。だけどよ、俺もお前と組んで短くないだろう? そんな仲の奴が勝手に自分に縛られて悩んでるのを見てて気持ちよくもねぇぞ」

「なら見なければいい。他の支部へ行け」


 ラーイルは頑なにモヒカンの男の提案に乗ろうとしない。そんな彼を見たモヒカンの男はなおも言い寄る。



「信念を掲げて生きるのはいいさ。いいんだが、それに沿った人生を歩めてるかは全くの別問題だ。そしてお前はそれに固執するあまり誤った道へ進もうとしてる」


 ラーイルは返事をしない。



「家族に会ってこい。俺はお前の心の強さを知ってる。そんなんでお前は自分の弱さに負けたりはしないさ」


 少しばかり優しい声でそう言ったモヒカンの男の言葉にラーイルはようやく彼に目を向けた。




「……死ぬのが怖くなる」

「あぁ、誰だってそうだ」

「死ぬかもしれないんだ」

「そうだな。可能性は高いな」


「……妻がいるんだ」

「あぁ、可愛いらしい人だったな」

「もうここに戻れなくなるかもしれない」

「それもいいだろう。平和で幸せだ」



 そこまで言ったラーイルはモヒカンの男の目を真っすぐ見詰めながら言った


「それでも、奴らは現れるんだ」

「あぁ、そうだな」

「奴らがみんなを殺すかもしれない」

「そんなこと俺がさせない。安心しろ」



「俺はもう『月の調停者』だ」

「だがそれ以前にお前は人間だよ」

「もう違う! 半分化け物だ!」

「いいや、お前は人間だ」


「俺にはあいつらの血が流れてる!」

「あぁ。だが人間だ」






「……俺があいつの人生を狂わせるかもしれないんだ」

「彼女は幸せだよ。お前みたいな男に会えてな」


 ラーイルの目には葛藤が見える。


「俺が……もしあいつがもっと普通の男に会えたら」


 そこまで言ったところでモヒカンの男の声がラーイルの言葉を遮った。


「言ったろう。彼女は幸せだ。不安なら会ってこい。そんな心配空の彼方に消し飛ぶさ」







 笑顔で言うモヒカンの男にラーイルはしばらく声を発することが出来なかったが、やがて口を開いた。




「……1年振りか」


「だな。楽しみだな」

「あぁ。楽しみだ」


「どんな顔をして会えばいい」

「そんなもん会えばわかる。ほら、立てよ」




 さっそく準備をしようとモヒカンの男が動こうとしたときに2人はある感覚に襲われた。

 ラーイルは険しい顔をしており、モヒカンの男はやりきれないような表情をしている。


「……ルイン」

「わかってる。くそ! なんてタイミングで来やがる!」



 モヒカンの男、ルインは忌ま忌ましそうに吐き捨てた。



「ランザスに『獣』が現れた……!」










感想、アドバイスがあれば是非お願いします。

あともしよろしければ評価も……。

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