表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夏の或る夜の夢の続き  作者: 横滑り木偶臣
第8章(葬儀場にて友は焼かれる)
60/84

8-5

〔Side.A 一人称〕


 2012年は最高の天体観測シーズンらしい。どこかのお偉い教授連中がいうことによると、5月21日の金環日食に続き6月6日には金星日面経過、8月14日には金星食が観測されるとのことである。


 そんなことは、僕にはどうでもいい事柄であった。


 金環日食で日本中が狂喜乱舞──僕はその日、終了間際にのんびり起床して、金環日食を見損なったのだった。


 憂鬱な気持ちを抱えている人間に、のんびりと天体観測などしている余裕はなかった。天が明日、もし落ちてくると考えたとしても、杞憂でもなんでもないのだから。


 突然、携帯電話がジリジリと鳴り響いた。昼間にかかってくる電話は碌なものではない。


「あ、恭司くん、久しぶり、覚えていますか? 山田真紀子です。中学のときの同級生の……」


 見たことのない番号通知の相手は、僕の初恋の相手──真紀子であった。普段は見ず知らずの番号からかかってきてもまったく相手にしなかった。


 だが、その日だけは特別に電話に出た。なにか途轍もないことが起こるであろう前兆を、直感的に感じとっていたからだ。


 真紀子の声──僕女の声は本人なのかと疑うぐらいに大人びていた。


 こんな感じが僕にはどうも照れくさい。思えば真紀子のことを思いだすたび、頭のなかで真紀子を演じていたのは他ならぬマキちゃんであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ