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〔Side.A 一人称〕
その晩は、側にマキちゃんがいてくれなかったら、僕はきっと気が変になっていたに違いない。
隣に彼女がいるだけで、この悲しい現実を少しだけ忘れることができた。
なにか得体の知れない呪いが次は自分に降りかかってくるのではないかという、突拍子もない考えをユースケの死が否応なしに信じ込ませようとする。
気がつくと、朝になる前にすっかり目は覚めてしまっていた。
隣にはマキちゃんが寝ていた。けれど、ユースケはもうこの世界には存在しない。
全ての出来事は夢物語で、きっと朝になれば綺麗さっぱり、消えてなくなると、そう思いたかった。
だけど、ユースケの死はなにも変わらなかった。高圧電線と落雷の痕跡が、有無をいわさず僕を現実に引き戻していく。
*
ユースケの通夜に出て、次の日は葬儀を家族でもないのにマーコと一緒に手伝った。
ユースケの親族一同は、あまりに急なことで取り乱していたし、それを端からみていることはとてもできなかった。
受付や花を飾るのを主に手伝いながら葬儀の行方を見守った。
葬儀の段取りに慣れている人間などなかなかいない。
ましてや、それが自分の息子となるといるはずもなかった。
会場は黒い喪服で埋め尽くされていた。坊主が下手くそなお経が読みあげている。
一通りの儀式が終わった。
そして、ついにユースケを焼いて送りだすことになった。
車に乗り込み火葬場にむかった。




