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☆シオンの視点で、前話の続きです。
俺は、不安がこみ上げてきた。なんなんだ? 本当に明日帰ってくるんだよな。じゃあ何であんなにもったいぶるんだろう? なんで『待ってるからな』と言ったら目をそらしたんだ? 一体明日何があるんだよ?
ああ、ただでさえ明日は憂鬱なのに……本当にベスはどこにもいかないんだろうな。あんなこと言っておいて、どこかへ行ってしまったということはないんだろうな?
それにしても、ベスが辞めると聞いたときには心臓が止まったかと思った。俺はよっぽどベスが気に入ったらしい。
メリルもとてもよくしてくれたが、ベスは大変な熱意をもって仕事をしているのが感じられた。毎日の生活をさらに快適にしてくれた。ここ最近は特に、家に帰るのがどんどん楽しみになっていた。日常に色んな変化があって、飽きなかった。この一週間は毎日ベスと色々話をした。何度も怒らせてしまったが、なんだか楽しかった。
若い女性があんなに苦手だったのに、ベスはギラギラ、フワフワしてなくて、女性として意識してないからあんなに話せたのだろう。
それにしても明日が憂鬱である。ユルンハルク伯爵令嬢に怒られ、呆れられるんだろうか。
彼女は一体どんな女性だろうか? 3度も同席したはずなのに、この疑問もなかなかのものだが、彼女がおとなしくて全く印象にない。まあ顔すら見てもないし、極力関わらないようにしていたので、実際おとなしいかどうかも分からないのだが。
どれだけ彼女を軽んじていたことか。ほんと俺は何をやってたんだろう。とりあえず明日は誠心誠意、謝ろう。
ああ、憂鬱だ。今度こそ婚約解消に納得してくれるといいのだが。
そういえばベスも近いうちに相手と話すと言ってたな。それが明日なのだろうか? それで彼女は明日にこだわっていたのか? 断られたらそいつと同じ職場に居たくないからメイドをやめるのか? でも、俺が望むなら仕事は続けると言っていたな。じゃあ違うか…………あっ! まさか、明日はあの立ち話してた奴と食事では? 本当に食事に行くんだろうか? 上手く丸め込まれて付き合うようになったりするんだろうか? クソッ!
いやいや、俺がごちゃごちゃ口出しするようなことでは……でもあいつとは食事をするだけなんだろうか?
いやいや俺はそれどころでは……うっ、参ったなあ。
シオンはゴロゴロと寝返りをうちながら、同じことを何回も考えていた。
ベスはあの男とデートなんだろうか? それとも本命となのか? どっちなんだ? ああ、何でこんなにイライラするんだ。どっちでもいいじゃないか。いや、良くない。あの男はチャラチャラしてたし、婚約者は俺と同じ最低男だ。どっちも駄目じゃないか! うぐぐ………どっちの男でもベスが幸せになれそうにないじゃないか。主人としては許せない。そ、そうか、俺は彼女に対して主人としての責任があるからこんなに心配なんだな。
よし、分かった。明日彼女ともう一回話そう。雇い主としての責任において彼女が幸せになるよう、変な男から守らなければ。俺は口出しするなと言われたのも忘れ正義感に燃えていた。
はあ、やっと安心して寝れる。
シオンは目を閉じた。
「シオン様起きてください。遅刻しますよ」
「ベス、今何時だ?」
「もう8時半ですよ。いつまで寝てるんですか」
「うん? あっ、あれ? メリルか」
「そうですよ。シオン様、早く起きてくださいな」
「ベスは居ないのか?」
「もう出かけてますよ」
「こんなに早くに?」
「昨日の夜、家に帰りましたよ」
「ええっ? そんなに早くから? えらく気合が入ってるな」
「それよりも、シオン様、手土産用意されてますか?」
「手土産? あっ、しまった」
「ベスったら……まあ、しょうがないわね」
メリルは他の使用人を呼ぶと、手土産と花束を用意するよう伝えた。
「メリルありがとう。助かったよ」
「どういたしまして。じゃあ、しっかりおしゃれをしましょう」
「はあ……まあ、よろしく頼む」
「エリザベス様がお待ちですからね」
「そうか、エリザベスだったか」
「ちょっとシオン様! 名前も覚えてないんですか」
「言い訳のしようもないな。はああ、憂鬱だ。ベスとも話せなかったし、大丈夫だろうか?」
こうして俺は、エリザベスに会いに出掛けた。




