【番外編】西洋怪奇譚―女と幽霊とピアノ―
西洋怪奇譚リハビリで番外編を書いてみました。
勝手にお題
女とピアノ
コーディアス・アルフォートは一応神父である。
一応というのは、とある成り行きで神父になったのであるために、正式な順序で神父になったわけではない。人呼んで、悪魔憑き神父という。
このコーディアス神父は、たばこも酒も手を出す。だが、一つだけ手を出さないのは女だけ。
それは、神父になる前からも商売女には興味がなかったし、そうういうのに夢中になるよりは違う物で夢中になっていたからだ。というと、男か? 問われる時があるが、もちろん男になんぞ興味がない。
コーディアス神父が神父になる前は、ピアニストだった。柄じゃないと言われそうだが、そうだったのだからしょうがない。というわけで、ピアノが恋人だった時があった。
そして、コーディアス神父はたいてい女運がない。
神父になったのだって、女のせいだし、この事件だって女に呼び出されて派遣されたのだった。
「だがな、ピアノにとりついた女の幽霊なんて払えるか! ボケ」
イライラしながら、タバコをふかして椅子に腰かけた。
そんなコーディアス神父を横目で見ながら、最上 悠里は護符を書きながらコーディアス神父をたしなめる。
「勝手違う異国の地に降り立って事件に巻き込まれたんですよ。払えるか、ボケ! と言いたいのはこの私です。ここでは、怪談語りで除霊できるかどうかわかりません」
悠里は問題のある怪奇現象を理解し取り入れ怪談にして除霊する。そんな、奇妙な能力者だ。
コーディアス神父と悠里は日本である事件で一緒になったので、知人の仲だ。
異国ピアノ幽霊事件に巻き込まれたので、真っ先に呼び出しやすい相手だ。
「だからって、教会に行ってエクソシスト雇うな。一般市民の能力者を雇え」
「ここは、ヨーロッパ。ヨーロッパの除霊はエクソシストと日本では相場が決まってます。エクソシストが異常な行動例えばブリッジしながら階段を下りる少女と対面。そして、悪魔と戦って勝利したという映画が有名です」
「それはそれは、光栄だな。あれは、本当にあった出来事をモデルにし映画になったんだからね。ちなみに、俺もそのお祓いには協力したよ」
「訂正を要求いたします。映画は1973年で、もしモデルにした事件と貴方が関係あるならば、貴方は不老者なのか、と疑問に思います」
「んー、そうなんだけどね。本当なんだから、しょうがない。これが、俺の謎?」
「ふざけてないで、さっさと呪文唱えればいいじゃないですか」
「あんな、あの事件では俺聖書唱えて解決したけど、俺はエクソシストの解決方法よりもいかさまオカルト現象を突き止める専門なの。幽霊退治は二の次」
「使えない奴ですね」
舌打ちして、悠里はピアノに触れた。
「おいっ」
コーディアスは焦った。
悠里が痙攣して、その場に倒れこんだから。
「大丈夫か?」
「ふふふふっ、見えてきましたよ。見えてきましたよ! 最高にテンションマックスでお送りいたしますよ!」
「なんだよ、お前の能力こっちでも使えるじゃん」
悠里の能力。怪奇現象の原因を突き止める能力。過去視や現象を起こした人の念等が見えること。
「コーディアス神父。貴方、ピアノの腕は達者なんですか?」
「達者って何?」
「だから、幽霊さんがどちらが上手が勝負しましょうって言ってます。もし、下手ならば、あんたも呪い殺す★ って言ってます」
コーディアス神父は爆笑した。
「あー、おかし、俺が? 俺を呪い殺すって? 呪えるもんなら、呪ってみろ。その前に、俺のピアノを聞いて倒れるなよ」
悠里は嫌な予感がした。
「うー……。その前に、私帰っていいですか?」
「なんだ、この怪奇現象はお前の怪談コレクションにできるんだろ? っていうより、俺の勇士込で怪談コレクションにしろ。最後に勝ったのは元ピアニストのコーディアス様だ! という終わり方で怪談を広めろ」
「やる気なかったくせに」
その後、悠里は幽霊と神父が気が済むまでピアノを聴かされ、感想を言われ、ピアノの知識がわからないために幽霊と神父のピアノ講釈まで聞かされる羽目になる。
除霊の方は、幽霊の気がすんだみたいで最後に勝手に天に召されたという事となった。
悠里というキャラは、別個のホラーサスペンス小説で出てくるキャラです。が、まだ小説家になろうには出てきてません。
コーディアス神父設定は、昔ピアニストだった! は、あったんです。いつか出す予定だったんですけど。