幕間6 満月の夜【菅視点】
(菅内心)
最近、やたらと距離を感じるんだよね。事務的な返ししかしてくれない。ぜったい嫌ってるよね。昔のあのこと……許してくれるわけないもんね。あ、あんなところに月が見えてる。久しぶりの満月だ。そうだ! これにかこつけて、ちょっと柏木の気持ち、聞いてみようか。……いいよね? ほんとに綺麗な月だし、そんな不自然じゃないよね?
菅「……柏木。今夜の月、綺麗だね」
柏木「確かにあれは……美しい。あのビルの鏡面にも同じ月が映り込み……まるで真冬の湖。心なしか雪の匂いも致します。そろそろコートをお召しになるが宜しいかと」
菅「え? コートはまだ早くない? 盆が過ぎたばかりだよ?」
(コートなにそれ! いくらわたしのこと嫌いだからって、そこまで話そらす!?)
柏木「……そうで御座いました。あの凍るような月からつい冬を連想してしまい……申し訳ありません」
菅「そう言うこと? うん。確かに見た目、凍ってるもんね」
(でも変だなぁ、柏木にしては逸らし方が下手すぎる。ぜったい別のこと考えてた。わたしの言葉なんて聞いちゃいない。君のあたまの中は、例の悲願でいっぱいだもんね!)
柏木「えぇ。月が綺麗などと……まるで告白ですね?」
菅「……え? そう? そんなつもりじゃないよ?」
(ちょ! 急に話戻すなよ! びっくりして心にもないこと言っちゃったじゃないか! よしここはストレートに! わたしのこと好き? 嫌い? ……いやいや、これだと恋愛的な意味だと思われるだろ! わたしはただ友達とか、もっと言えば親友的な関係になれればいいと思ってるだけだ! もしまかり間違って「好き」って言われたらどうすれば? 困る! 朝香と田中さんに殺される!)
柏木「……無論、承知いたしております。しかし誤解されやすいお言葉ゆえ……その台詞はあの方におっしゃるがよろしいかと」
菅「わかった。使ってみるよ、ありがとう」
(そうか、朝香に使えばいいのか! じゃなくて! 駄目だ! 柏木は完全にわたしのことなど眼中にもない! ヴァンパイアの本能的な意味でこのわたしに付き従ってるだけ!……だよね。そうだよね。友達になるなんて……夢のまた夢さ)
柏木「……どういたしまして、と申しておきましょう」
菅(そんな顔して……君はいつもそうだ。完全で完璧な執事。でもたまには……嘘でもいい。「マスターのそんなところが好きです」とか言って欲しい。……そうだ! 明日の朝、ジョギングに誘ってみよう!そうしよう!)




