その頃の王都軍
「ご報告いたします 各前線より苦戦報告が相次いでおります」
王都に戻り数日
シキカン=ヤヤ=ムイテルの元に集まる敗戦報告の嵐
「魔王軍の行動が変わりました 無駄な突撃、突如崩れる隊列、ふらふら歩く行軍……そうした兆候が消えたのです」
「バカな そんな急に戦力が上がるものか」
「また、味方のMPを測る測定器は付近に異常なMPがあり【エラー】となるようです」
「どういうことだ……?」
シキカンの眉間にシワが寄る
「まさか、魔王軍に……休みが出来たとでも言うのか?」
魔王軍に実はMPがあるという事は――指揮官クラス以上、王国中枢部しか知らない極秘事項である
『人間にしかない休みの概念 数日前 魔王軍』
ふと、思い出す顔がある
あの日、違う者のタイムカードを持ち退社出来なかった男――あの【雑務係】
エクセル=シフト
「……まさか、あいつが」
――
「くっ、撤退だ!」
チュウタイチョウ=デスヨは怒鳴り声をあげた
森に魔人が出たため、念の為というレベルの偵察だったはずだ
いつものゴブリンを見かけ、雑魚を狩ろうとしたのに何故
眼前で繰り広げられていたのは、いつものような雑魚狩りではない
むしろ、こちらが押されている
「なぜだ……! いつもより敵の動きが良い」
人間国は物量で押し、魔物が疲れるまで交代で攻め続ける
それが長年の戦術だった
これでは相手が強く物量で押せない
「ゴブリンに疲れが見えない……」
後方支援を担当する副官のリンパ=ガ=タマッテマスネ も顔を青くする
いつもならゴブリン相手に自分の出番など無いはずだ
しかし今回は負傷兵が次々と後列に下がってくる
もしかして魔物にもMPが……ある?
「なぜ……そんな、ばかな……ッ!」
転移陣が発動
タイムカードを切りながら、リンパは困惑の表情をゴブリンに向けた
偵察用に転移スキル持ちが同行していて助かった
これからは、撤退用に転移スキルが必須になるかもしれない
ここまで激しい撤退戦となったのは、王都軍ここ十数年で初めてのことだった




