30話 最終話 未来のシフト表
王都 中央議事堂
魔王国と王国の代表が顔を揃えるなど、協定調印以来 数百年無い
しかし今、その夢物語が目の前にある
中央には現魔王マオ
その傍らにはエクセル
そして迎え入れるように王国女王のジョオウが対面する
「新魔王マオよ おぬしの祖父とはよく語り合ったものだ まぁ、主に労働時間についてだがな」
マオが胸を張る
「我らは再び休みを手に入れたのじゃ!今では1勤務2休日のシフトを組んでおる」
ざわめく王都軍幹部たち
その中にはシキカンの姿もあった
「女王陛下、我々は……本当に人間の敵と手を組むのですか?」
――
ジョオウはそっとマオの横に歩み寄り――ベールを脱ぐ
長い髪 マオと同じく淡く光る薄紫
「私の髪色を見よ 私は長命種の血を引くもの そしてマオもまた同じ血を引く者」
会場が水を打ったように静まり返る
「かつて、我と――初代魔王である我が夫は、戦争の最中に【出会い】そして【休み】を語り合った 争いを終わらせるために手を取り合い協定を結んだ……その彼は平和を願い【休まず働き】過労で命を落とした」
「……二代目 我が子も同じ道を辿った だからこそ……この子に希望を託した」
言葉が理解出来ずに少しざわつく
観覧席のヤスムが過去を後悔し唇を噛む
「魔王が夫?」「争っていたのでは無いのか」……
「すぐに闘いを止める事など出来なかった 闘いを 労働を憎みもした」
「しかし、それも終わりの時が来た 私の孫――マオによって」
ぽかんと口を開けたマオの頭を優しく撫でる
そして、彼女はエクセルに目を向けた
「風が変わった 魔物たちが笑い、人間が闘いに疑問を抱き始めた 協定から数百年 憎み合っていた世代も少なくなり、新しい時代――今を生きる者達の時代が来た」
「お前こそが私達の望んだ【未来】だ 異世界より来たりしシフト変革の申し子」
エクセルは緊張した面持ちで一歩踏み出し、手に持ったシフト表を掲げる
「俺たちは休みを管理できる 【闘いから共存】に【シフト】出来る 王国も魔王国も関係無い、世界平和のための休みをここに勝ち取る」
拍手が、ぽつり、ぽつりと湧き上がる
やがてそれは大きなうねりとなって広がっていった
――
エピローグ的な
その夜
広場に両国の者たちが集まっていた
空には照明コウモリが飛び回り、皆は誰ともなく酒を酌み交わし笑い合う
休日が増えた事を祝う
「おばあちゃん……」
マオはジョオウに抱きついたまま、膝を抱えて眠っている
エクセルは酒を一口あおり、ジョオウに愚痴る
「いや~自分のセリフは台本通り出来ましたけど、夫とか孫とか聞いてないですよ~」
ジョオウは笑いながら
「ホッホッホッ 血統の秘密だからな 事前に知られる訳にはいかん」
長命種で女王だ 駆け引きで勝てる訳が無い
優しい目でマオを見つめながら続ける
「この手で孫を抱ける日が来るとはな…… 終わりのない争いの果てに、ようやく希望が見えた」
言葉には確かな後悔と、それを超えた安らぎがこもっていた
ヤスムが酒を持って現れる
「ほらコレも飲め 私が作った日本酒【伝説の有休】だ 焼酎の【百年のボッチ】もあるぞ」
ヤスムとジョオウの目線が絡みそっと微笑み合う
「まさか、あの時の剣の相手が1人で女王にまでなるとはな……まっ、酒が旨けりゃどうでもいいか」
過去の争いはもう、彼らの中にない
あるのは過去を認め、未来へ進む強い意思だけだ
――
キンニクとチュウタイチョウが筋肉を見せ合い
シェフが隠し味に毒草を入れようとするのを、シキカンが目ざとく見つけ説教している
ハクイに惚れたテイサツが物陰から見つめ
リンパがドライアドのマッサージを神と崇め「魔王城に転職する」と叫んでいる
ノンデモはもう幸せそうに酔い潰れていた
周りの人達を見回して笑った後に
エクセルは静かに空を見上げる
「最初は誰にも相手にされなかったけど みんなの休みを求め続けた シフトを組み続けた この世界に来て……よかったよ」
締めの言葉になりそうな独り言
その背後から、聞き慣れた声が響く
「戦争終わったのはいいけどさ 今、魔王城のシフトぐっちゃぐちゃで大混乱中だよ!」
現れたのはシエスタ 背中にはエクセル君が乗って「早く帰ってキテ」と慌ててる
頭を抱えるエクセルに、にやりと笑った
<<未来はまだ仕事だらけだ
けれど、シフトがある限り――この世界は平和に回っていく>>
マオの寝言が聞こえる「明日は……おやすみ……」
作者メモ
連載で初完結作品です
文字を書き始めたのが4月からなので、なろうの登録や設定に四苦八苦して産み出しました
頭の中の想像よりカットした部分が多く、配下が1人で終わった理由もこれ
1人でも多くの方に読んで頂いて
アホな話し書いてる新人居るな~と思って貰えれば幸いです
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狂ったように喜びます
長いのもアレなので本当のあとがきは活動日記で




