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8.

「うえ~なんかここすっげー淀んでねー?」

 レオはそう呟いて、今いる場所を見回した。巫女神殿の地下の隠し部屋にある聖堂に入った瞬間、淀んだような明らかに空気の違いに肌が嫌悪したのだった。

「そうなんですよね~かなり淀んで気持ち悪くなりますよね~」

 レオに同意するように、アンは頷いた。

「多分ここが、巫女神殿の中心部にあるので、このくらいの淀みですんでるんだと思いますよ~」

 その言い方は、ここがそうじゃなければ、もっとひどいと言っているようなものだった。

「まあ、仮にもここは巫女神殿ですし~魔神の力を一応押さえ込んでいるんだと思いますよ~、多分ですけど~」

 アンの言葉に耳を傾けながら、さて、あれを簡単に壊す事ができるだろうかそう思案した。

「なあ、アン、あの像を壊せそうなものないか?」

 そう尋ねてみると

「じゃじゃじゃ~ん、これなんてどうでしょう~」

 そう言って、先程レオがもう少しで、あの世へと送られるために出された馬鹿でかい鈍器をアンは出した。

「・・・それさあ・・・」

 いや、言いたいことは、無限とあるのだけれど何から突っ込んで言いか分からない。

「パン屋時代のとき使ってたんですよ~」

「・・・」

(ねえ、一体何に使ってたの――!)

 思わず心中で叫んでいた。

「まあ、いいや」

 ここに来て突っ込むのを拒否しだしたレオは、なんか全てにおいて疲れたような気がする。そう、思ったのだった。その、鈍器を(俺がもてるのだろうか?)そう思いながら、手にする。

「あ、意外と軽い・・・?」

 その言葉に

「あ、使えるんですね~。いや~吃驚しました~」

 アンのその言葉に

「使えないもの出したのかよ!」

「僕の武器、特殊らしくて~なかなか使えないらしいです~。よかったですね~使えて~」

 アンが意外そうに、心底喜んでいるので、何も言わず、使わせてもらう事にした。

(まあ、武器がないのも色々やばそうだし)

「アン、これ借りるぞ?」

「どうぞでーす。けど、別料金ですからね~」

「金取るのかよ!」

 思わず突っ込んでしまった。

「まあ、ありがとう。ちょっと借りとくな!」

 そう言って、アンの肩を叩く。その行動に、アンは珍しく

「やっぱいいです~(お金)」

「は?何が??」

 聞き返したレオに対して、アンは何も言わず、何故か嬉しそうにしていた。

「さて、いっちょやってみますか!」

 そう言って、魔神アンシュの像の前に立ちはだかる。その後ろで、アンが何か呪文を唱えている。そのおかげか、淀んだ空気が直でレオに伝わってこない。

(なんか、アンが頼もしく見えるぞ!)

 そんな事を考えながら、深呼吸をして自分を落ち着かせる。

 そして、気合を入れて

「物壊すのあれですが、すみません!」

 一応誤っておく。まあ、そこは礼儀としてね。

 馬鹿でかい鈍器を持ち上げ、気合とともに

「うりゃ――!!」

 めいいっぱい振り下ろしたが、当たる前に、何が、真っ黒な物体がレオを押しのけるように像から噴出して室内を覆った。

「あら~やばいですね~。魔神の分身みたいなのがでてきましたね~やっぱり素直に壊されてはくれませんね~まあ、(した)()みたいですが~」

 そう言って、()いずり回る様にうねうねしている物体は、レオたちに襲い掛かってきた。

「うわ~なんか気色悪っ!」

「レオさんそんなこと言ってないで~像、早く壊してくださいよ~こっちのうにうにしたのやっつけときますので~」

「分かった!任せる!!」

 なんか、ますますファンタジックになってきたなあと、本当この体質何?!なんとかなんねーかなと嘆息してしまった。が、今、当面の問題とは、この像を壊すということだった。

 うねうねした黒い物体を鈍器でなぎ払いながら

(結構使える・・・この鈍器・・・?!)

 魔神アンシュ像に向かって突進して行った。アンはというと、また新たに、馬鹿でかい剣を出して、華麗?に振り回している。

(大きい物が好きなんだね・・・)

 そう、アンの武器を見ながら思ったのだった。

 目の前に迫った、先程よりなんだか大きく見える魔神アンシュ像に向かって、レオは手に持った鈍器を思いっきり力を入れ振りかざした。

「どりゃ――――!!」

 レオの奇声とともに、大きく崩れ去っていく魔神アンシュの像。粉々に粉砕したアンシュの像を合図に、うなうなしていた黒い物体は、消え去っていった。

「いや~レオさんあれですね~あんな見事に粉砕するとは思いませんでしたよ~これで、連動していた、多分、他の像も、粉々になったんじゃないですか~ここの像を中心に~置かれてましたし~」

 アンが、すっきりしたように話している。レオはその話を聞いて、ほっと一安心した。他にある像も、壊しに行こうかと思っていたからだった。

 その時、微かに、地面が揺れたような気がした。

「?アン・・・」

「どーしたんですか~レオさん~」

 不思議そうに聞き返された。

「なんかさあ、地面が揺れてね?」

 レオは微かに冷や汗をたらしながら、アンに聞いてみる。

「・・・あ~みたいですね~」

 一瞬考えながら答えた、アンの歯切れの悪さに、

「もしかして、やばかったりするのか?」

「あ~あ~!そういえば、あの馬鹿(ファラス)のところに、後一体、単品ですごいのがあったかもしれませんね~。多分、力は大分、こちらの壊したおかげで、半減していると思いますが~。」

「うわ!それやばいじゃん!壊さないと!」

「そうですね~じゃ今すぐ行きましょうか~レオさん。多分、王子さん達も今来てるんじゃないですか~もしかしたら、うにうにしたのと、戦ってるかもですね~」

 そう言って、レオを、意外に軽々とアンの肩にお尻が乗るように抱き上げる。

 その事に、焦ったように

「ちょ!アン?!」

空間繋(つな)げて、行きますから~しっかり捕まっててください~」

「そうじゃなくて!何で、この格好?!」

「お姫様抱っこがよかったですか~?」

「いや、それもいやだ!じゃなくて!!」

 レオが真っ赤になって訴えるが、アンは意味が分からないように首を傾げる。

「僕~両手使えないと色々とやばいですし~レオさんも~その格好なら僕につかまれるし~鈍器をもってられるでしょ~?あんまりうだうだ言ってると~王子さんたちやられちゃいますよ~?」

 そう言って、両手を掲げて呪文を唱えだしたアン。そんな様子に、何も言えなくなったレオは、片手で、アンの首根っこをしっかりと持って、もう片手には、あの大きな鈍器を肩に担いで、アンが呪文を唱え終わるとともに、空間が歪んだような気がした。

 次の瞬間、レオ達は、王の広間へと現れた。

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