4.
「巫女臣ってね、私の昔の位なのよ。この国には、巫女神殿があって、そこは女神と自然神を信仰している女神信仰の最高峰とされているのよ。そこにいるのが、国中から集められた神聖な巫女で、その最高取締を巫女臣、その全権を握っているのよ。一応そこは神聖だから、力も強く使うことができるんだけど・・・今はアンシュ、魔神アンシュを信仰した像が地下の隠し聖堂に置かれてあるのよ。それによって、女神の力と自然神の力が半減しているのよ。この世界は一応、魔神を信仰するのを禁止しているのだけれど・・・そして、そのアンシュを信仰しているのが、今、王代理として、王座を預かっているファラス・ドーメンズ。王家に告ぐこの国の重臣十貴族の一つ。まあ、全王妃の弟、王子の叔父に当たる存在。そういう存在だから、一応王子の後継人という立場上、王子が王位を継ぐまで王座についているのだけど・・・。そもそもそのファラスが、十年前の内紛を収めたことになってはいるだけど、実際のところは、そうじゃない、内紛を起こしたのもファラス。けれどそれを収めたという事実が必要だったのよ。自分が王座を手に入れるために、本当はその時に王子も暗殺するつもりだったのではないかしら?けれど、女神の力と自然神の力を使って、向こうに送ったから手出しができなかったんだと思うわ。王は自然神の象徴みたいな存在だから、それによって、国も世界も守られている。だから、邪魔なのよね、ファラスにとってもアンシュにとっても・・・」
「そもそも、魔神アンシュを信仰したら何が起こるんだ?」
まあ、名前からしてあまりよくないわけで、少なからず分かるがレオは尋ねた。
「そうねえ・・・。魔神アンシュやその下の十の魔族を筆頭に、人を誘惑し、願いをかなえる。女神達が人間をただ守るように見つめるだけの存在だったら、アンシュ達は力をかす。もちろん対価は必要よ。それが、あまりにも残虐な人の供物だったり、魂だったり。アンシュ達を信仰するにつれ、それによって、だんだんと、女神が創世した世界はゆっくりと穢れ壊れていく。最終的には、だんだんと、女神によって封印された魔神アンシュが、復活することができる。そうなれば、この世界は壊れ滅ぶでしょうね」
「ということは、王座を奪って、均衡を崩し、女神や自然神信仰を脅かして、魔神信仰を増やして、アンシュは復活しようとしているんだな!しかもそれが、物語などではなく、本当のことだから、やばいんだな!」
「そうなのよ!」
「それにしても、かなり、女神ルイース?と魔神アンシュ仲が悪かったんだな~」
「そうねえ、実は巫女の神殿に禁書の史実があってそこにねえ、重大なことが書いてあったのよーん」
「え?なに?」
「もー吃驚よ!」
「え?それって言っていいんですか?」
慌てたように光が言うが、ドーラスは気にしない。
「魔神アンシュねえ、女神ルイースに振られてんだって~」
「は?」
「アンシュも、女神とこの世界を守る一人だったらしいわよ~けど、女神を好きで好きで仕方なかったらしいから、告たんだってーそしてら『ごめんタイプじゃないし、めんどいし~』って言っていたらしいのよ~それにキレたアンシュが逆切れ起こして、ルイース襲おうと思ったら、他の自然神たちにコテンパンにやられたあげく、女神に『地の下で反省しなさい』って、怒られて封印されてらしいのよ~。で、だんだん、女神に愛されている世界や、人間や動物生き物達が憎らしくなってきて、自分の分身達を地上に送って、誘惑して惑わしてるみたいなのよ」
「なんていうか、女神もそうだけど、そのアンシュも逆恨みもはなはだしいなあ。それ本当の話なのかよ・・・!」
「まあ、信じられないわよね~けど、十の自然神の一人が笑いながら言ってたらしいわよ~」
いやなんか家にいるツインズに、似ている奴いるんだなあ・・・そう、嘆息した。
「てか、この国の自然神って、今いないのか?」
「さあね~もしかしたら、生まれ変わっているかもしれないけれど、王しか見つけることできないし、あと、この国の空の自然神は、『俺人間になってみたい~(飽きた)』って言って女神が『いいんじゃない?、勝手にすればー?』って、言ってたみたいよ?だから、この国の自然神はいたりいなかったりらしいのよん」
「ねえ、そんなんでいいの!女神様なんか、かなり軽いんだけど!」
「だってー禁書の史実に掻いてあったんだもん。」
「それって、書いた人が勝手に作ったんじゃないのか!」
「そうなのよね~私もーそれ読んだとき、だから禁書かあ~って思ったのよね~」
「変な納得のしかたやめろー!」
思わず、この世界の人たちに同情してしまった。どっちもどっちじゃんっと。
「それより、当面の問題は!そのファラスを王座から引きずりおろさないと、この国やこの世界は危ういということだな!そうしないと巫女神殿の力も使えなく、俺も帰れないということだな!」
「それには、王子が死なない限り大丈夫だけど、巫女神殿の穢れや国や世界の歪みを取り去るには自然神の力が必要なのよねえ・・・この世界に生まれてるのかしら・・・?まあ、王子が王座に付いて、魔神信仰をあの王宮から、とりあえず、なくせば、これ以上は国の歪みや、世界の歪みは進まないわよ!」
そういって、光の方を改めてみる。
そういえばと、レオは思った。
「ねえ、そう考えると、絶対、王は光でなくてはならないって事になるんだけど?これって・・・?拒否権とかはないのか?」
「一応、この国の王の直系は空の自然神の血をより濃く受け継いでいるのよ。だから、国の守りと世界の守りが保っていられるし、自然神がその時代に生まれていなくても、何とかなるんだけど・・・。王は、決まっているもの、拒否権はないのよ。だから、自然神の剣が王位継承者を選ぶし、その剣を自由に操ることができる。だから、あの時、光は何もないところから剣を出せたのよ?」
そういえば、ドーラスたちに襲われたとき、手に持っていなかったはずだけど、剣で、短刀を防いだ事を思い出した。
(すっかり、あの時はドーラスさんが男ということで忘れていたなあ・・・!)
拒否権はないその事実に、レオは、口をつぐんでしまった。自分の進むべきことを決められるのは、あまりよいことではない。自分だって、決められた道を進まされるのははっきり言って不満だし、不愉快だ。
「光、お前は・・・」
どうなんだ。そう聞こうとして、光のほうを見ると、ただ、困ったようなそれでいて、悲しいようななんともいえない表情をしていた。
その表情に、また口を開くことができなかった。
(光は、どう思っているのだろうか・・・?)
ただ、それだけが気になったのだった。
光は、必要なら王座に座るだろう。それは、決して、自分のためではなく、民の、国の世界のために・・・。
光は、ゆっくりと、席をたった。
「光?」
「レオちょっと席をはずすね・・・。ごめんね」
苦笑いをしながら、その場を離れた。
そんな様子を見つめていると、
「やっぱり、王子は、吹っ切れてないようね。王位を継ぐことを・・・」
嘆息しながら言うドーラスは、どこか、自責の念にかられているようだった。
レオはその言葉を耳の端に聞きながら、光の後を追った。




