2.
食事を終えて、少しすると、レオはドーラスに呼ばれ、一階とは違い、人が寝泊りするのにちょうどいい広さの部屋へとやってきた。そこで、ドーラスは、レオにある服を差し出し、無理やりに着せたのだった。
「キャーかわいい!!」
(さてはて、これはどういうことなのだろう??)
そうレオは不思議に感じてならなかった。
何故か、ドーラスに抱きしめられているレオは、怪訝の表情でドーラスを見ていた。
「だってーしょうがないじゃない?あなたの体質、色々なことに巻き込まれるんでしょう?占いにも出てたわよ?そうなると、あなた、王子と間違われて連れて行かれる可能性、大なんじゃない?」
ドーラスが真剣にレオを諭すように言った。
「けど、それなら、なおのことそっちのほうがいいんじゃないの?光が危険な目にあわなくてすむじゃん!」
レオがそう言ったら、
「そんなことを王子に本気で言ってみなさい。すっごい剣幕で怒るから。レオのこと本当に王子は、大切にしているみたいだからね!」
ドーラスがはしゃぐように言うけれど、納得いかないと、頬をふくまらせた。
「そんなすねないの!こういうのは、なりきるのが大事なんだからね!これから生きていくためには、これくらいなんとも思わない大きな器が、立派な男になる条件よ!私を見なさい!今は立派な女性に見えるでしょ?これでもねえ、女装を取ったらすごいんだから!」
ふふふと胸を張りながら言い放った。
「何が?」
レオは意味が分からないとドーラスを見る。
すると、ドーラスは、さっきまでの女性のきゃぴきゃぴした雰囲気を取り去った。
「?」
ゆっくりと、レオの腰に這うように腕を回し、レオの白い頬に指でそっと触れてくる。
ドーラスの紫紺の瞳には甘やかな艶やかさが放っており、レオの蒼黒の瞳を捕らえて離さない。そして、ドーラスの唇がレオの耳元で、響くような男性の甘い声音で
「どう?今晩、俺と一緒に過ごさない?」
レオは、吃驚したように、ドーラスを見るけれど、柔らかい笑みを見せるだけだった。
その表情は決して、女性のものなどではなく、そこにいるのはまさしく、色香の漂う男性だった。
「大丈夫。優しくするから・・・」
吐息を吐くように、甘く切なく呟いてくる。
レオはなんだか腰が抜けるように地べたにへたり込んだ。
そんな様子に、ドーラスはくすくすと面白そうに笑う。
「だから、女装していても、大きな器の男は男らしいのよん!」
先程までの男らしさなど微塵も感じさせなく、ドーラスは言った。
レオはというと、先程のドーラスの雰囲気に呑まれて、俯いたままでいた。
「う・・・」
「う?」
「うぎゃ――――!!」
レオの叫び声が響いたのだった。その声に、吃驚した、光が隣の部屋から急いで入ってきた。
「どうしたの!レオ!!」
焦ったように入ってきた光が入ってきた。
先程、レオに用事があるからと、ドーラスが光を隣の部屋へと追いやったのだった。
からからと楽しそうに笑っているドーラスを光は、一睨みしてレオの元へと膝を突いた。
「どうしたの?レオ?」
そっと優しく、尋ねた。
レオが、そっと、光に顔を向けた。
「え・・・」
光は、吃驚したように、レオを見る。今の姿は、ドーラスが着てている形に似た、占い師の格好だった。幾分か形の違うかわいらしくフリルがあしらってはいるが、明らかに女物。それがよく似合っている。その姿に光の心臓がゆっくりと鼓動が高鳴るのが自分でも分かった。
それに、レオの顔や、白い陶器のような肌が、林檎のように真っ赤に染まって、蒼黒の瞳にはうっすらと涙がたまり、きらきらと輝いていた。
「れ・・・お・・・?」
あまりのその格好と表情に、光の鼓動が早鐘を打った。
レオは、光を必死に見つめながら、混乱したように、光に抱きついた。
「レオ?!」
焦ったように吃驚したように、声をかける。
「どうしよう・・・どうしよう俺!」
レオがいつもとは違い、とても動揺したように、涙声で訴えかけてくる。
そのことに、光の動揺が早鐘をまた打った。
「レオ?」
不振に思いながら、レオの細い背中を落ち着かせるようにゆっくりと撫ぜる。
「俺、男なのに・・・男なのに・・・!男のドーラスに、と」
「と?」
「ときめいてしまった!」
レオは何てことだ――-!と叫びながら、光の胸に顔を沈める。
光はというと、一瞬何が起こったのか訳がわからなかったが、ドーラスの昔の性格を思い出しながら、ドーラスのほうを見た。
「いやん!そんなに怒んないでよ~王子~。ただ、単に、女装していてもー立派に男にはなれるって言うことを教えただけよん!それに~手出してないから大丈夫よ~。けど、王子が来なかったら、危なかったけどね~もう少し遅かったら、落としにかかっていたけどね!」
思いっきり、光がドーラスを鋭く睨む。
「だってーかわいかったんだもーん!」
ドーラスは悪びれもなく言った。
そんな状況など頭に入っていないレオは、光に必死に抱きつきながら、
(ありえねーありえねー!男にときめくなんて!!俺、男失格―――!!)
悶々とループする思考に、苛まれていたのだった。




