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シロ×クロ  作者: あらた
11/37

第1章 闇の足音

一章も終盤戦です!!

シリアスモード突入。

囮作戦は決行されますが…


では、どうぞ、ご覧くださいm(__)m

「この衣装には魔力を高める霊符が縫い込んである。あと、スミレのには微力だが、魔力・妖力・物理攻撃に対する結界が張られるので安心するがいい」


夜も更け、とうとう囮作戦が決行されることとなった。

衣装の話は気休めにしかならないが、緊張するスミレに気を遣うようにアイリスがスミレから離れる際に教えた。


スミレの表情は相変わらず強張ったままだが、意を決して話し合い通りの道順で歩き出した。


すでに他三人の気配はない。


まるで、たった一人であの夜の恐怖へと戻るようだ。


あんなに賑わっていた街の大通りも、吸血鬼騒ぎのせいか全く人影はない。


すみれの足音だけが街の中に響く。


細い道へ入る。


静寂は道を曲がる度に広がる。


「きっと大丈夫」



自分に言い聞かせながら歩いているが、足が震えている。


あんなことがなければ…

今こうしていることが不思議でならない。


「巡回の人もいるって話だし…」

寂しさを打ち消すように小さく独り言を呟く。



そして、クロに救われた瞬間を思い出した。


「もしかしたら、またクロさんが…」

そういいかけて、首を振る。

身体中に包帯を巻かれたクロの姿が脳裏をかすめた。


あんな体で来れるわけがない。


ひとつ希望が消えた。


段々と歩く速度が上がる。

早く廻ってしまいたい。

もしかしたら今日は来ないかもしれない。


しかし、その期待もスミレ自身の体が打ち消した。



初めてこの街に来たときに通過した道。

ちょうどその辺りでスミレの瞳が痛み出したのを思い出す。


そして、その道に差し掛かった。


「痛っ」

同じ痛みがスミレを襲う。


痛む目を押さえながら辺りを見回す。

さらに細い路地が目に入り、そこには行きたくないと体が警戒する。


足が止まりどうすればよいか考え込むスミレの後ろから、足音が聴こえてきた。


「どうなさいました?お嬢さん?」

老人の声だった。


あの妖気ではない。

安心したスミレは振り返った。


「きゃっ!!」

老人はスミレのすぐ後ろに立ち、怪しい微笑みを浮かべていた。


「失礼な子だね…心配してるのに…」


老人はスミレの目を覆う手に自分の手を伸ばす。

即座にスミレは体を後ろに引き、接触を避けた。


「…可哀想に…その瞳のせいで苦労したんだろう?」


優しい言葉とは裏腹にその風体はいかにも怪しく、スミレは少しずつ後退し距離を置く。



「どれ?見せてくれないかい?神の瞳を…ワシなら何かわかるかもしれんぞ」


「え?」

スミレが怯んだ隙に、間合いが詰まる。


「!」

その時スミレの瞳が朝が来たかのような眩しい光を発した。


「す、素晴らしい!!」


細い目を見開き、その光景を喜ぶように老人は声をあげる。

老人の震える手がぬーっとスミレに伸びる。


スミレは言うことの利かない体をなんとか動かし、老人に背を向け走り出した。


「きゃっ」

しかし、足が絡まって激しく転んでしまう。


老人は滑るように移動し、すぐスミレの前に立った。


その手はスミレの手を掴む。


「うがぁ!!」

手に触れた瞬間、スミレの服から老人の体にかけて電撃が走った。


老人はすぐさま体を離し、焼けた手を押さえスミレを睨み付ける。


「こしゃくな真似を…」


「これが、霊符の結界?」

アイリスの話が現実となり少し勇気がでる。


立ち上がろうと体を持ち上げたが、転んだときに足を挫いたようだ。

足に血が回る度に痛みが増していく。


逃げられない!


そう思い、目を瞑ったとき。


「ここまでかしらね…」

スミレがその声に顔をあげると、目の前にはさくらが立っていた。


真っ直ぐに老人と対峙する。


片手に持っているクリスタル製のロッドが月明かりに照らされ輝く。

それを体の前に構え小さく何かを呟き始めた。


さくらの紡ぐ言葉が増える度にロッドから放たれる光も増していく。


「スゴい…」


さくらの体から溢れるエネルギーにスミレの瞳も呼応するように輝きを放つ。


だが不思議と痛みはなくなり自分の体の奥深くから、スミレもわからない力が膨らんでいるのを感じた。



「ふん、人間の分際で!!」

一連の所作を老人は笑いながら眺める。



しかし、次の瞬間、老人は言葉を失い目を見開いた。


その胸元からは鋭く尖った剣の切っ先が突き出している。


「お前は妖魔だな…」

静かな声で老人の背後からイキシアが問う。


老人は体を貫かれているが、口の端はあがったままだ。


イキシアは言葉を続ける。


「このままあの女の攻撃を喰らい滅びるか、大人しく投降するか選べ」


「なぜ、わかった?私が妖魔だと」

「あの少女の服に触れたな…あの服は魔力を持たぬものには反応しない」


「ふん…」


「そう言うことだ。スミレが一般人に勘違いしているだけでは作戦が無意味になる。奴が妖魔か見極めるため、助けるのをギリギリまで待たせてもらった」


いつの間にか、アイリスがスミレの脇にしゃがみ、手を差し出す。


「あ、ありがとうございます」

「お前の服では私しか手が貸せなくてな」

スミレを抱え起こしたアイリスはイキシアと老人の姿をした妖魔に目をやった。


さくらはまだ、魔力の弾を膨らませている。


妖魔の肩が震えた。


それは恐怖や絶望ではなく楽しんでいるような震えだった。


「どこかで嗅いだことのある臭いだと思ったら、光の戦士のエルフじゃないか!?何故、地に堕ちたのだ?」


バカにしたように大声で妖魔はイキシアに話しかける。

イキシアの細い剣、レイピアが軽く揺れた。


その僅かな動きを見逃さず妖魔の足がイキシアの胴体を真後ろに蹴り飛ばした。


「!」


イキシアは不意の攻撃に体を守りきれず、数十メートル後ろへ吹き飛ぶ。


そのまま壁へと激突し、崩れた瓦礫の中へ姿を消した。


「イキシア!」

「イキシアさん!」

スミレとアイリスが叫ぶが応答がない。


そして、妖魔は、軟体動物のように腕を伸ばし背中に刺さっているレイピアを時間をかけながら引き抜いた。


剣体は放り捨てられ、ついていた真っ赤な血が辺りに散る。


妖魔はその体の関節から、今度は白い煙を吹き上げた。

煙が妖魔を包み込むとその中の影が別の人影へと変わる。


強い風が吹き、煙りはすぐに消えた。


そこに現れたのは、先程の老人の姿とは似ても似つかない美しい顔立ちの男。

金色の長髪が揺れ、燕尾服を着たその妖魔の発する怪しく黒い妖気は『生』ではなく、『死』をイメージさせ、近づくことさえ危険を感じる。


そんな重たい空間にスミレは呑み込まれそうになるのを必死に堪えた。


まだ胸の奥から止まることなく溢れそうなエネルギーは募り続けていることを言葉にはできずに。



妖魔は奇妙な笑みを浮かべてこちらを見ている。


「まずは自己紹介。僕は三番目の吸血鬼。貴女に会えて良かった」

その瞳はスミレをじっと見つめる。


「スミレ」

アイリスがスミレに囁く。


「走れるか?」


「え?」

「『純正団』の名に賭けてお前だけは生かさねばならない」

アイリスのその表情は真剣だった。


「そんな、イキシアさんは?」


胸の奥がさらに熱くなる。


「私がこれを放ったら行きなさい」

さくらが呪文を唱え終わりスミレの方を向いて笑った。


「こいつの気はいままでのやつらとは桁外れよ。私もすぐ後を追うから!!」


そう告げると、さくらの視線は不適に笑う妖魔に向いた。


「人間を甘く見ないでよ!!」


さくらは巨大な光の弾をロッドの先から妖魔に向けて放つ。

その勢いで辺りの物体が風に舞い上がる。


スミレも吹き飛ばされそうになるのを耐えるのが精一杯だった。


「すごい…」

人間の女の子がこんな力を放出できることに、眩しい光の中で驚愕した。



まだまだ光は続く。


誰かがスミレの手をとる。その手に引かれるままスミレは痛む足を引きずりながら、走り出した。




ありがとうございました!

第1章は次話で終わりです!!

スミレたちはどうなってしまうのでしょうか?


次回の更新をお待ちくださいm(__)m



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