episode1.全ての始まり
なんの変哲もない、静かで平和な日常。そこには、二人の女の子がいた。一人は、黒川しおん。そしてもう一人は、しおんの親友である山本みゆ。二人はどちらも中学二年生。
いつもと変わらない朝、二人は並んで学校へ向かっていた。
「しおん、知ってる? 明日から新作のゲームが発売されるらしいよ。二人でやろう!」
みゆは、とても楽しそうに話している。
「本当にみゆはゲームが好きだねー」
「もちろん! ゲームなら二十四時間だってできるよ!」
「それはさすがに体に悪いからやめようか」
しおんが苦笑すると、みゆも笑った。
公園の出入り口前にある交差点。信号は赤。しおんとみゆは、横断歩道の前で立ち止まり、信号が青になるのを待っていた。
そんなときだった。
「待ってー!」
公園の方から、一人の男の子が走ってきた。転がっていくボールを追いかけてる。男の子はボールを追いかけ、そのまま交差点へ飛び出していく。信号はまだ赤のまま。
「待って! 危ない!」
しおんが叫ぶ。
しかし、男の子は聞こえていない。
ブッブー!
大きなクラクションが鳴り響いた。交差点の横から、一台のトラックが走ってくる。
「危ない!」
運転手は慌ててブレーキを踏んだ。だが、間に合わない。
「……っ!」
バンッ!
次の瞬間、しおんは男の子の体を思いきり突き飛ばした。
男の子は道路の外へ転がり、トラックとの衝突を免れる。
しかし、しおんの目の前には、もうトラックが迫っていた。避ける時間はない。
ドンッ!
強い衝撃が、しおんの体を襲った。しおんの体は大きく吹き飛ばされ、そのまま地面へと落ちた。
「しおん! ねえ、しっかりして! しおん!」
みゆの声が聞こえる。
「大変だ! 救急車を呼ばないと!」
周囲からも慌ただしい声が聞こえてくる。
けれど、しおんの意識は少しずつ遠ざかっていった。
(私……ここで死ぬの?嫌だ……そんなの嫌だ。私は……もっと生きたい)
「う、うーん……」
しおんはゆっくりと目を開けた。
「……ここ、どこ?」
そこは、見たこともない部屋だった。
正面には、黒く禍々しい紋章が刻まれた巨大な壁。
その左右には赤黒いカーテンが垂れ下がっている。
床は黒い石で造られており、ところどころに青白い魔法陣が浮かんでいた。壁には巨大な燭台がいくつも並び、揺らめく炎が薄暗い部屋を照らしている。
そして。部屋の一番奥には、大きな玉座があった。
しおんは、その玉座に座っていた
「なにここ……。というか、何の部屋? 怖いんだけど。なんなの?」
しおんは玉座から立ち上がり、周囲を見回した。どう考えても、さっきまでいた場所とは違う。
「魔王様。お目覚めになりましたか」
ギィィ……。
部屋の奥にある大きな扉がゆっくりと開いた。そこから、一人の男が入ってくる。
「あなた、誰?」
しおんが警戒しながら尋ねる。男はしおんの前まで歩いてくると、深々と頭を下げた。
「魔王様、どうなされたのですか。私は魔王四天王のトテモツヨーイですよ」
「いや名前ダッサ。何その小学生が考えたみたいなネーミングセンス」
しおんは思わず笑う。
「というか、魔王四天王って何? というか今、私のこと魔王って言った?」
次々と知らない情報を突きつけられ、しおんは完全に困惑していた。
「何をおっしゃってるのですか?あなたは我が魔族のおさ。魔王サイキョーウ。じゃないですか」
「えっ。ええええええ」
叫び声がこのしおんが今いる魔王城中に響いた




