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第一話 『山田 誠、40歳。人生の終わりと——』


俺の名前は山田 誠。40歳、独身。

どこにでもいる、ごく普通のサラリーマンだ。

都内の賃貸マンションで一人暮らし。もちろん彼女はいない。

地方の大学を卒業して東京の会社に就職し、気付けば18年ずっと同じ席で働き続けている。会社はいわゆるブラック企業というわけでもなく、それなりに休みも有給も取れていた。

だけど、月末だけはいつも別だ。

押し寄せるタスクを片付けるため、どうしても残業が増えてしまう。

「まぁ、今がんばって終わらせておけば、あとは楽になるしな……」

そう自分に言い聞かせながら、カタカタとキーボードを叩き続けるのが毎月のルーティンだった。

「あぁ〜……。やっと終わった。今日は少し遅くなっちまったなぁ。早く帰ろう」

ようやく仕事の呪縛から解放され、重い足取りで帰宅した頃には、時計の針はとっくに日付を跨いでいた。

ネクタイを緩める気力すらなく、吸い寄せられるようにベッドへダイブする。

「明日はせっかくの休みだし……風呂は朝入ればいいや……。起きたら、あのアニメの続きでも観るか……」

泥のような眠気が一気に押し寄せ、俺は意識を手放した。

     *

次に目が覚めたとき、遮光カーテンの隙間から眩しいほどの日差しが差し込んでいた。

お昼近くまで寝てしまっただろうか。

起き上がろうと体を起こしかけた、その瞬間。

「……っ!? うぅ、げほっ……気持ち、悪りぃ……」

凄まじい吐き気と、頭をハンマーで殴られたような激痛が俺を襲った。

視界がぐにゃりと歪み、冷や汗がどっと吹き出す。

(なんだこれ……風邪、か……? いや、ちょっとマズいかも……)

救急車を呼ぶべきか。いや、寝れば治るか。

朦朧とする意識の中でまともな思考は働かず、俺は抗えない睡魔に負けて、再び目を閉じた。

——それが、俺の人生の最後の記憶となった。

もう二度と、その目が開くことはない。

主を失った部屋の中で、男の体は静かに、ゆっくりと冷たくなっていった。

山田 誠。享年40歳。

死因は、突発性の脳出血。

どこにでもいる普通の男の生涯は、あまりにもあっけなく、静かに幕を閉じた。

——はずだった。

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