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女で得する事と損する事  作者: 黒楓
1/2

前編

おなじみの“月曜真っ黒シリーズ”ではございません。明日も続きます(^_-)-☆

「何勝手な事してやがる!!」


 店内にお客様が居るのにも関わらずいきなり大声で怒鳴られて、自社製品を棚に置く手が凍り付いた。


「女だと思って甘くしてるとこの様か?! てめえオレを舐めてんのか!!!」


 振り返らなくてもいかに社長が怒っているのかが分かる。私自身、“他社さん”がその様な目に遭ったのを目の当たりにしたことがあるから。

とにかく私は後ろを振り返りながら頭を下げた。


「申し訳ございません。すぐに撤収します」


私が棚に納めた“イチ押し”の自社製品達を段ボールへ片付け、バックヤードへ戻ろうとすると


「まだだ!! 倉庫に積んであるものも一切合切今日中に引き上げろ!!」


この『取引停止!!』の言葉で、さすがに血の気が引いた。


『自社に割り当てられたスペース内のやりくりは自由裁量』という暗黙の慣習の内の事なのに一体なぜ?!!



「あそこまで社長が怒ったら収拾つかねえよな!『カキタ』さんやっちまったな!」


「あの女、結構()ってたからなあ 自業自得だよ!」


「やってた? ヒダヒダでか?」


「何エロボケしてんだよ! “やり部屋”は『ひだ清』だろ?」


丁度各メーカーがひしめいている時間で“他社さん”達が揶揄する声を片耳で聞きながら社に電話する。


「あの、乾課長!太桂屋(たけや)さんでトラブりまして……」


『何だとっ!!』

もう片方の耳を課長の怒号が突き刺した。



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 お客様の邪魔にならないように気を付けながら棚の商品を撤去していると同業他社の“男の子”が手伝ってくれた。


「フロアーチーフも手伝わないなんて大変だね」


「……仕方ないわ、社長の逆鱗に触れてしまったから」


「『カキタ』さん、何やったの?」


彼のエサになるのは『空いた棚』だけでいい! 彼が喜々として手伝ってくれているのは自社製品を入れ込む為の“陣取り合戦”の為だし…… 

こいつらの興味本位のネタになるのはごめんだ!


第一、私は“枕営業”なんてしてない!!……万一そんな事をしたら専務(奥様)から目で射殺される(いころされる)に決まってる。


 台車に段ボールを積んでバックヤードを抜けると社長自らフォークを操ってウチの商品をパレットごと表に出していた。


「立石!!!」


社長が私の名を怒鳴り、台車を放り出さんばかりに飛んで行くと思いっ切り睨まれた。


「今日は雨降るからよ! 早いとこ引き上げねえと知らねえぞ!!」



 じきに乾課長がトラックを伴ってやって来て、社長に詫び入れに行ったが、元々“苦手なタイプ”の社長に一喝されて憮然と戻って来るだけだった。



--------------------------------------------------------------------


 社の倉庫は古く蛍光灯の明かりも時々チカチカする。


マスクに軍手の()()()()で熨斗紙が黄ばんでいた年賀タオルを持ち、商品を拭きながら再販可、不可と仕分けしていく。


 『女はおしゃべり』なんて事を男はよく口にするが、さっきの太桂屋でも、雨がトタン屋根に当たり始めたこの倉庫でも耳障りな『男のおしゃべり』が聞こえて来る。


「やっぱり課長は見るとこ見てますよね」


「そんなの当たり前じゃないですか! 河野さんが主任に昇格した時は胸がすく思いでしたよ! 立石なんてどーせ“枕”専門でしょ?」


「まあな!()()()()()商売したっていつかは馬脚を現すってことさ!」


冗談じゃない!!


アパレルから転職した私は『この業界、女のセールスはまだまだ珍しいから』と()()()()得意先ばかりあてがわれた。


確かに、“女性”というだけで珍しがられたり可愛がられたりもした。


自分では『私、女としては随分壊れているよね』と思っていても、いつも笑顔を絶やさず

接していれば糸口を見出すことができた。

そのあたりは前職の“拗れ具合”より随分と楽だったのは事実だ。

そういう意味では『女は得なんだなあ』と感じもしたけれど『枕営業』なんて断じてやっていない!!

そんな事をしなくたって、それなりにうまく出来ていたつもりだ。

その筆頭が太桂屋だったのに……

一体なぜ?


考えたくは無いが“専務(奥様)”がありもしない事を社長に吹き込んだのだろうか……いつもジトっと睨まれていたからなあ……



「立石!まだ居るんだろ?! お前が散らかしたんだから掃除もしておけよ!」


「立石ちゃ~ん!お疲れ~! せいぜい頑張ってねー!」


“実績”を()()()()させてもらって主任に昇格した河野とその取り巻きが私をバカにして去って行く。


ロクに仕事もできないヤツらにこういう口を利かれるのが一番腹が立つが、得意先に取引停止を食らったのはこの私だ!

何も言い返せない……


『立石!! 事務所へ上がって来い!!』

倉庫の柱にくっ付いているスピーカーが課長のガナリ声を響かせた。



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 事務所へ上がって見ると乾課長は自席にふんぞり返っていた。


「さっき、太桂屋さんから電話あった。『お前ひとりで』詫び入れに来いって話だ」


「はい」


「お前、“ひだ清”の場所知ってるよな! 座敷予約しておいた」



“ひだ清”は業界御用達の料亭だ。


比較的リーズナブルな価格で料理も大した事は無いが“誰にも邪魔されない”奥座敷があり、仮にそこで知った顔に出会ってもお互い挨拶も無く見なかった事にする。そんな()()()()()の料亭だ。


その“ひだ清”で接待と言う事は……


「お前、“魚心”は分かるよな!人にばかり“尻”ぬぐいをさせんなよ!!」



こう言われて私は……


『女で損する事!!』


と、心の中で指折り数えた。





                       後編へ続く


休み明けで大急ぎで書きました。話をここで切ったのは“あざとさ”です<m(__)m>


明日、頑張って仕上げます。




ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!<m(__)m>

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここで、終えるのは、確かにあざとい! 黒楓先生、降臨ですね!!!
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