2 戦友①
2 戦友
コロナのために戻れていない我が故郷を思って
また父母の健康と幸せを願って
火野蒼生
青白い夜にふと起きることがある。真夜中。横を見るとそこにはこのはさんが寝ている。しばらく静かな夜の底で彼女の寝ている姿をずっと眺める。
一緒にいるのが普通になれば、きっと人は好きな人が寝ている様子を飽きもせずに眺め続けるなんてことはしないのだろうな。ただ、自分は……。
きっともう普通ではないのだと思う。
あかりがあんなことになってそれから少なくはない時間、僕は、やっぱり青白い夜にふと起きた。そんな時、何度も死にたいといってもいいような気分になったものです。静かで青い夜の底にひとりぼっちだと実感するたびに。
そういう人間にとって静かな夜の底に自分の傍に寄り添って眠る人がいるというのはとても意味のあることなんです。僕の傷ついた心は、本当にゆっくりと時間をかけて癒されていた。癒されていたのだけれど、完璧に前と同じようには治らないのだと思う。
人の人生というのは、というよりは人というのはそれぞれが複雑な形をした石のようなものなのではないか。それは波に洗われて丸くなったさまざまなガラスの破片のよう。形はバラバラなんです。機械で均等に削られたようなものなどであるはずがない。
何も損なわずに生きていく人などきっとほんの一握り。
心も体もパーフェクトなままで生きていく人なんて、きっとほんの僅かなのです。だから僕のこの痛みも、僕の人生の一部なのだと思う。切っては離せない僕の人生の一部。
喜びも哀しみも、全てが揃って初めてきっとそれが本当はパーフェクトなのです。
哀しみを知らない人が語る人生には、香りも響きもない。きっとそう。
つまらないことを考えてから彼女の傍でまた眠りにつく。自分のそばに誰かがいてくれると、どうしてこんなに落ち着くことができるのだろう。