4月3日 入社研修II
研修2日目。俺は、最年少ということもあり、まだまだ縮こまっていた。研修室に集まった同期たちは、グループディスカッションの課題を受けていた。今日のグループは、昨日のグループとまた異なっていた。林和希、石木真帆、中丸悠、花田昇の5人だった。昨日のメンバーとはうってかわって、とても静かだった。みんな誰がリーダーとなるか様子を見合う展開だった。
今から行われるディスカッションのテーマは、「将来、会社がどうあるべきか?」という抽象的なものだった。各グループは、自社のことを考え、会社がどうあるべきか?を必死に検討しているみたいだった。まだ、開始して10分くらいなのに髙橋がいるAグループのメンバーたちは、ほとんど方向性が決まった様子で、ホワイトボードに何かを書き記していた。やっぱり、髙橋がいるグループはいつも凄いな。
俺は、関心をしながら見ていた。すると、Cグループの俺たちは、リーダー格の林が、「まずは、意見をもっと出していきましょう」と提案し始めた。たしかに、林の言う通りだ。このままでは、らちがあかない。他のメンバーもそれに同意し、自社の将来についての意見を洗い出していく。それにしても、俺は、まだこの会社で何もつかめないでいた。別にビビっているわけではないけど、どこかテンポ感をつかめず、蚊帳の外にいる感じだった。
「自社のこれからは、サービスではなく理念だ」とメンバーの花田が大きく語った。「それは、具体的にどういうことですか?」。石木は、伝えた。「これから、サービスだけで他社との差別化は計りにくいと思うんです。もっと、会社の理念やビジョンを全面的に打ち出して共感を得るべきだと説明した。「なるほど」と質問をした石木が頷いた。もう、20分経過したこともあり、Aグループはディスカッションを終了し、雑談タイムに入っていた。Bグループもホワイトボードに答えをまとめているみたいだ。
そんな状況を見て焦ったのかリーダー格の林が俺たちも答えをまとめていこうと提案してくれた。「企業を取り巻く外部環境は、毎日変化している。そんな中、サービスの差別化はほぼ不可能。だから、自社では、理念やビジョンを会社の先頭に掲げて、そこを目指していくべき」。こんな感じでどうかな?林の発言に対して、俺たちは、何も言い返すことができなかった。これは、個々の能力の低さを露呈する結果となってしまったのだ。自分は、まだまだ。髙橋を見てそう思った。