3月6日 本気
今日から、俺は動き出していた。昼から、恵太と約束をとりつけ、公園で会っていた。大学進学を断念したことを告げるも、驚きを見せなかった。
なんで、恵太は、驚かなかったんだろうか?それとも、俺ならそうすることも考えていたのだろうか?俺が話す一つ一つのことに、ゆっくり相槌を打ちながら、共感してくれた。あまりにも話を聞いてくれるから、申し訳なくなってきた。俺は、話題を変えるためにも恵太に話をふった。
俺 「どうする?」
恵太「俺だったら、どうするかな、、、」
恵太を見守った。
恵太「聞きに行くかな」
俺 「聞きに行く?」
恵太「あぁ」
こういう時に、すぐアドバイスをくれるのは心強い。
俺 「誰に聞くの?お父さん?」
恵太「いや、賢いやつかな」
俺 「賢いやつかぁ、、、」
パッと浮かんだのは、菜緒だった。ここ、一週間ほど、バタバタして別れたショックすら感じていなかった。
恵太「思い浮かんだ?」
俺 「いや、まったく」
思い浮かんだ名前を言うことはできなかった。
恵太「俺なら、賢いやつ一人一人に聞いていくかな」
俺 「考えてみるか」
恵太「でも、、、」
何か言いたそうだったけど、その続きを言わなかった。遠慮してくれてるなら、言ってほしかった。
俺 「ん?」
わざと、聞き返した。渋々、話を続けた。
恵太「中途半端にやるなら、やめた方がいいと思う」
どこかで聞いたことある言葉だと思ったら、お父さんから言われたやつだ。
恵太「本気にならないと、何やっても今の陵では、中途半端になると思うんだよね」
俺 「たしかになぁ」
妙に恵太の話に納得させられた。
俺 「じゃあ、誰に聞けるか考えてみるわ」
恵太「一人で大丈夫か?」
心配そうに俺の方を見てきた。
俺 「あぁ。ここからは、一人でやらねぇとな」
恵太「そうか。じゃあ、後は応援しとくわ」
これからもずっとコイツと友だちでいれたらな。胸の高鳴りを感じた。
俺 「そうだな。恵太が大学行っている間に、俺も成長できるようにがんばるわ」
恵太「次、会うのが楽しみだな」
俺 「だな」
いつもの返事の癖が出た。
恵太「んじゃあ、最後にアドバイスだけしとくわ」
俺 「アドバイス?」
恵太「困ったらさ、コイツのところ行ってみろよ」
恵太は、スマホの画面を見してきた。
俺 「誰、コイツ?」




