俺、決断する
俺達は後方迎撃部隊である骸骨魔法士の二千の討伐に成功した。
その時、『白龍』様が呈示した条件は満たされ、新たなる依頼、
『ディアマンドラアスの討伐』が発動した。
そして、我が友が再びラストニアの大地に降臨したが、
その数は、五千以下、
ディアマンドラアスの百万骸骨軍団に対して圧倒的に数が少なく、友達は奴に近付く事すら出来なかった。
何がD&DONの世界に起こったのか。
過疎ってしまったのか?皆が此の世界で遊ばなくなったのか?
その時、我がメル友の『オセロ』が俺達の前で真実を告げる。
それは、ディアマンドラアスによって
、圧倒的なユーザ数がいるゲーム専用機の友達が、世界との専用回線が繋がらなくなり、その為にゲーム機ユーザが此の世界を遊ぶ事が出来ない事が原因だった!
奴は知ってしまった!
此の世界の弱点を!
回線が繋がらなかったら、
此の世界が成り立たない事を!
仮に、白いケーブルが俺達、D&DONの回線だとしたら、
もう一つの黒い回線は、別の世界と繋がっている事になる、
あの黒い回線を奴が握ったら奴のレベルはカンストした、
つまり、あの黒い回線が奴に力を与えている!
奴は言った、力の源が、
俺達の世界の殺戮世界である事を!
奴は殺戮世界から手に持つ回線を使って力を得ているとして、その力で此の世界と元いた世界の回線を遮断しているとしたら!
バリバリバリバリンンンン!!!
八枚目の神殿結界が破壊される音が平原中に響き渡り、残り二枚!
エリーが苦しそうに、「ガラナエキスの残りが後、4本です!」と俺に伝え、
俺は撤退の時期決めなければならない!
だが何もしないで撤退して、
此の世界はどうなっちまうんだ!
俺が撤退を決めようとした瞬間、
時は止まり、静かな其でいて重みのある声が聞こえた、
『たぶん、終りだ。』
えっ?誰?
俺はオセロを見たが、彼は止まっている、
幻聴?
其とも俺の自作自演?
此の危機的状況で遂に俺はもう一つの人格を産み出したのか?
奴と戦えと言う俺、逃げろと言う俺。
本当に滑稽だ、弱気な俺は、奴と戦うスキルも武器も無いし、俺達は頑張ったもう終わりにしようと言う。
『奴を殺す武器なら有る』
そんなの何処に有るんだよ!奴はレベル9999の化け物だぞ!
『化け物を殺す武器が、二本、お前の収納カードに入ってる。』
二本?収納カード?
まさか、
えっ!
『黄金の鉈』!
確かに此なら奴を、化け物を殺せる!
だが駄目だ、此は化け物が化け物を殺す武器、人間には使えない!!
『お前は人間か、』
えっ、
俺は、
『認めろよ、人ならざる者』
!!
確かに俺は此の世界の人じゃない、だが、別の世界の人だ!!
『本当にそうか、その記憶こそ白龍によって与えられた偽物だったとしたら、』
俺は、
俺は、
俺は、
『そうだ、お前は化け物だ。』
化け物
化け物
化け物
『良いじゃないか、此で皆を助けられる。』
皆を助けられる!
そうか、
そうだな、大好きな皆を助ける事が出来る。
止まった時間の中で俺は、マリーを見た、金の髪が美しい西洋人形のようなマリー、俺を好きだと言ってくれたマリー、出会いは劇的で俺は一目で君に惚れた、だから俺は君の全てが愛おしい、俺の大切なマリー、
俺はメリーを見た、ウェーブの掛かった黒い髪に強い意思を持った大きな瞳のメリー、最初は只の冒険者オタクだと思っていた、でも其は間違いだった、多くの者を喪い、心は引き裂かれてきたのに、そんな事を一言も俺達に言わなかった、強くて可愛いマリー、俺は今の君が好きだ。
俺はエリーを見た、銀の髪が美しく、本当に神話のエルフのようなエリー、自分が何者か分からない俺は君を好きになる事が怖かった、だが今なら分かる、やっぱり俺は君には相応しい人物じゃなかった、短い間だったけど、俺は本当は君の事も好きだった、そして君の理想の冒険者に成れなくて、御免な、エリー、
『別れはすんだのか』
ああ、済んだ。
『じゃ、全てを終わらせに行こうか!』
ああ、行こう!
全ての決着を着ける為に、
ディアマンドラアスを殺る為に!
俺は、『探求者』に転職して、手に持つロープを天空の骸骨女鳥に向かって投げた!
ローブは骸骨女鳥に絡まり、絡まったロープが高速に俺を引き上げる!
天空へ!
俺は再び、大地を離れた瞬間、
時は戻った。
吹き荒れる雪と荒ぶる風の音を打ち消す、マリーの叫びが聞こえる!
「レイ!約束した筈だ!!私達を置いて行くなと!!!」
メリーの怒りの声が聞こえる!
「バカ野郎!レイの大バカ野郎!!」
エリーの悲痛な声が聞こえる!
「レイ!!行っちゃダメェェ!!!」
御免な、皆、
『殺しに女子供を連れていっちゃいけねぇ。』
声に悲しみが込められている。
そうだな、
俺達はディアマンドラアスを殺しに行く、
皆には見せられる仕事じゃない。
ズダダダダダダダダダダダダ!!!
気を抜いた彼女達にディアマンドラアスの豪雷が襲い、
えっ!
『大丈夫だ』
俺は急いで空中から彼女達を見ると、
エリーの代わりにオセロが結界を張っていた!
そうか、今のD&DONの錬金術師はバリアも張れるのか!
すげぇなあ、D&DON
『前だ!』
えっ!
グゥワァアアアアアアア!!!
目の前に三倍は有る、大骸骨女鳥が迫る!!
その巨大な鈎爪が俺を襲う瞬間!
バゴォオオオオオオオオオンンンン!!!
大骸骨女鳥の頭蓋骨が吹き飛ばされる!
えっ!
俺が振り返ると、マリーが勝手に『狩人』に転職していた!
「死なせない!私は貴方を絶体に死なせない!!レイ!!!」
俺にスタミナの回復の矢が撃ち込まれる!
エリーも『魔法弓士』に転職していた!
バガガガガガガガガガガンンンン!!!
俺の回りの骸骨女鳥が金の発光弾で吹き飛ばされる!
此は、錬金術師の『錬金散弾銃』
メリーが錬金術師に転職していた!
全員が叫んでいた、
「私達は!貴方を!!一人にはさせない!!!」
マリー!
メリー!
エリー!
有難う、皆!!
俺は一人じゃない!!
ディアマンドラアスが高速に近付いて来る俺に向かって指を動かす。
一万の骸骨女鳥が俺に向かって動く!
奴はあくまでも、時間切れを狙っているのか!
『手伝うぞ、』
えっ!
その瞬間、俺のロープ裁きは神業と成った!
群がる骸骨女鳥の隙間を抜け、カスタムスキル『構え直し』で引き戻すロープの長さを調整し、俺が慣性で飛んで行く方向に飛んでいる骸骨女鳥と俺がぶつかる直前にロープの引きが発動するように計算した俺は、ロープを放つタイミングと向きを決めて再度ロープ投げる!
この間、僅かコンマ2秒!!
そして再び、俺は骸骨女鳥の隙間を抜ける!
今の俺はディアマンドラアスとの殺し合いの為に命もスタミナも温存したい!
その為には、骸骨女鳥との無駄な闘いは避けたい!
だからこそ、最小限のスキルの使用で最大の効果が必要だった!
今の俺にはその業が出来るし、その業を使ってディアマンドラアスに接近していた!
俺は、ディアマンドラアスに近付けば近付く程、より高く、高く、舞い上がった!
地上から20メータに浮かぶ全長20メータのディアマンドラアス。
俺が地上60メータの高さに達した時、
ディアマンドラアスとの距離が0に成った時、
俺は初めて収納カードから二本の『黄金の鉈』を取り出し、両手に持った!
バリバリバリバリンンンン!!!
九枚目の神殿結界が破壊される音が平原中に響き渡り、残り一枚!
ジャギィイイイン!ジャギィイイイン!
手に持つ『黄金の鉈』は音を立てて黄金のダガーへと変形する!
その時初めて、ディアマンドラアスは俺達の意図に気付き驚愕する!!
俺達が手にするのは、自ら作り上げた、
『龍殺しの鉈』!
化け物が化け物を殺す為の武器!!
別名、『黄金の鉈』!!!
ディアマンドラアスの眼窩は見開き、顎の骨は大きく開き、
『先ずは、左腕を落とせ』
わかった!相棒!!
俺は落下しながら、ロープをディアマンドラアスに投げる!!
奴は俺を叩き落とす為に左手を俺の方に大きく向け、その左腕にロープが絡まった瞬間、
カスタムスキル!
『跳鷹斬』を発動した!!
俺は高速に回転し奴の左腕に向かった!
ダガァアアアアアアアアアンン!!
骨腕と衝突した俺は回転でその衝撃を吸収し、
ガリガリガリガリガリガリ!!!
更に奴の左腕の骨を削りながら、俺は両手を鷹のように広げて、
一気に黄金のダガーを奴の左腕に降り下ろす!!!
バキィイイイイイインンンン!!!
大音響を立てて、ディアマンドラアスの骨の左手が、黒いケーブルを持つ左手が大地に落下した!!!
ギィイヤヤヤアアアアアアアア!!!
ディアマンドラアスの絶叫が平原中に木霊し、
奴のレベルがグルグルと逆回転して、200の位置で止まった!
俺は、
慣性でディアマンドラアスから離れた俺の命ゲージは半分以下と成った!
流石、レベル50代の俺の紙耐久力、もって後一回!!
『一回で充分だ』
そうか、
片腕を失ったディアマンドラアスは狂ったように右腕を振り回し、
ゆっくりと上昇していた俺に、奴の右腕が迫る!
奴の右腕が俺に当たった瞬間、
俺の命のゲージが0に成った瞬間、
カウンタースキル!
『流し暗殺』が起動した!!
『流し暗殺』、取得するのに超難易度の条件をクリアしなければ決して取得出来ない、神業。
俺には決して取得出来ず、使えなかった業!
世界は白く発光し、時は止まる!
俺の体は瞬時にディアマンドラアスの背後の首元に回り込み、
奴の首に『黄金の鉈』を当てがい、
一気に引く!!!
ズバッシュシュシュシュシュ!!!
青き閃光が迸り、
ディアマンドラアスの巨大な頭蓋骨がゆっくりと体から離れ、
奴の命ゲージが0になった!
ガキイイイイイインンンン!!!
ゆっくりと落下する俺の目前に、
ポップアップが表示される、
ディアマンドラアス討伐完了!!!
タイムボーナス+30!!!
その瞬間、大地は光輝き、
十万を越す我が友が、
ラストニアの大地に降臨し、
俺は意識を失った。