俺、作戦を実行する
俺達は神殿の『白龍』様に会い、此の世界を救ってくれる、友達を呼ぶ為の条件を聞いた。
其は、骸骨魔法士、二千の討伐。
後方大迎撃部隊の骸骨魔法士を討伐するには、奴等が存在する場所迄たどり着き、更にディアマンドラアスを含む奴等の攻撃を受けながらの討伐であった。
エリーを除いた俺達は『探求者』に転職して骸骨魔法士の密集地帯に行き、其処で『ハンズ作戦』を実行する事にした。
『ハンズ作戦』とはメリーが大盾聖者に転職して、無敵の防御範囲、神の領域を発動する作戦であり、神の領域はスタミナを一瞬に消費する為、エリーの僧侶としてのバックアップ、エナジースポットが絶対に必要であった。
此の作戦は四人が其々の役割を自覚し実行しなければ成功しない、正しくチームプレー必須の作戦だった!
俺達は、神殿から貰った持てるだけの『濃厚ガラエキス・上』を収納ガードに入れた。
エリーが言うには、此だけの『濃厚ガラエキス・上』で業の発動に必要なスタミナの補給をしたとしても、エナジースポットを発動し続けられる時間は十五分、
俺とマリーで、骸骨魔法士、二千の討伐を十分間でする!
俺達の、万を超す友達が討伐開始して五分後に俺達は乱戦地帯を脱出する。
その後は『白龍』様と友達が最期にディアマンドラアスを討伐して終了、
そう言うシナリオだ。
俺はジョセッペに装備や俺達の重量を軽くする、『無重の腕輪』を貸せと迫った、
ジョセッペは神殿の秘宝を俺が知っている事に驚き、
俺は駄目元でも言ってみるもんだなぁ、と思いながら、ジョセッペから『無重の腕輪』を四つ借りた。
ラストニア大陸は黒灰の雪雲で被われ、雪は絶えず降り続け、酷寒の風は北から南に吹き荒れていた。
軽量鎧と『無重の腕輪』で軽くなった俺達は、『探求者』に転職して空を飛ぶ骸骨女鳥にロープを投げ掛け、ロープは俺達を高速に引き戻し、
その瞬間、俺達は大空に飛び立った!
エリーが付与転送する、耐久力上昇の赤い輝きと生命回復の緑の輝きに包まれたマリーとメリーは、先行して俺とエリーを誘導していた。
俺は巧みなロープ裁きで、エリーを背負っても軽く彼女達に追い付く事が出来た。
俺って、もしかして『探求者』が本職だったんじゃねぇの!
って言うぐらい旨くロープを操る事が出来た!!
何故だ?
神殿を飛び立った俺達は、巨大な骸骨巨人の棍棒を交わし、骸骨竜の頭上を抜け、
骸骨剣士、骸骨戦士に埋め尽くされた、ラストニア平原の空を飛ぶ。
バリバリバリバリンンンン!!!
俺達の後方で三枚目の神殿結界が破壊される音が平原中に響き渡り、
俺達に残された時間が刻々と消えて行く事を知る。
神殿の全ての結界が破壊されたら、『白龍』様は破壊されて世界は終わる、
ジ・エンドだ。
俺達は骸骨軍団の後方、骸骨魔法士のいる場所、ディアマンドラアスが君臨している方向に向かった!
平原の中央に浮かぶのは、身長は20メータを越える巨大な骸骨司祭
『大骸骨霊法皇ディアマンドラアス』
その500メータ手前で密集している骸骨魔法士、10万!
俺の推測は正しかった、骸骨軍団を攻撃しないで近付いて行く俺達に、骸骨魔法士も、ディアマンドラアスも俺達を攻撃しようとはしなかった。
そして、メリーが骸骨女鳥に絡まっているロープをほどき、骸骨魔法士の中央に向かって落下し始めた直後、
俺は彼女を大盾聖者に転職させた!
その後を、魔法士に転職した俺とマリーが続き、
最期に俺の背より飛び降りた、僧侶のメリーが続く!
ドガッ!!
メリーは収納ガードから大盾『エンゲイジメント』を左手に、ロッド『ドゥームスブロウ』を右手に持ってラストニアの大地に着地した!
ドサッ!スタッ!
俺とマリーは、大杖『グレイスオブアポロ』を持って着地し、直ぐにメテオフォールの詠唱を開始し、
ストン!
エリーは、杖『ハートオブダークネス』を持って着地した!
俺達が詠唱を開始した時、ディアマンドラアスの眼窩が赤黒く輝き、ゆっくりと右手を上げ始めた瞬間、
メリーが大声で、『神の領域』と叫んだ瞬間、
ドガガガガガガガガガガガガガ!!
天空より千を超す黒紫の豪雷が俺達に降り注ぐ!!!
其れでも俺達は詠唱を続け、
「がぁっ!」
メリーのスタミナが瞬時に無くなり疲労で苦しむメリーが喘ぐ!
その直後、エリーのエナジースポットの詠唱が終わり、エリーが両手を下から上に広げた瞬間、
「ええええいっ!!」
メリーの気合いと共に、メリーのスタミナが回復し、
俺達のメテオフォールの詠唱が終わる。
黒灰の雪雲を切り裂き、天より業火の隕石が落下する!!
ズダーン!ズダーン!ズダーン!
その数は、マリーが七、俺が五、合計十二個、
俺の目の前には討伐した骸骨魔法士の数が浮かび上がりその数は、五十二!!
詠唱時間が二十秒、討伐の限界時間が十分、となるとメテオフォールを落とせる回数は後三十回、一回に六十七体の骸骨魔法士を討伐しなければ、二千に届かない、
此のままでは駄目だ!と俺が思った時、
マリーが叫ぶ!!
「行けます!!」
えっ!
マリーが俺より高速に、より正確に、魔旋律の詠唱を始めた!!
マリー!お前え!!もしかして適正ジョブってソーサラじゃないのか?
俺の詠唱が後三分の一残っているのに、
マリーは詠唱が完了して、
ズダーン!ズダーン!ズダーン!ズダーン!
十の隕石が大地に落下して、四十を超えた骸骨魔法士が一編に吹き飛んだ!!
「まだ行けます!!!」
えええっ!まだ威力が上がるの!!俺の立場やばくねぇ!!!
慌てて、俺も詠唱を早くしようとしたが、早さも威力も変わらず、
結局、隕石の一回の落下数はマリーが十五、俺が五、合計二十個になり、一回の骸骨魔法士の討伐数は百を越え、表示される数が合計千九百を超えた時、
バリバリバリバリンンンン!!!
俺達の後方で四枚目の神殿結界が破壊される音が平原中に響き渡り、
「あと、一回!!!」と俺は大声で叫んだ!!
その時、魔旋律の詠唱が急に楽になり、
俺はエリーを見ると、エリーは蒼白の顔で此方を見て微笑んでいた。
クイックチャージ!
此処で差し込んで来たのかよ!エリー!!
詠唱が楽になった俺達は、一気にメテオフォールの詠唱を終らせ、
天空より最期の隕石が落下した!
既に地上は、俺達が居る神の領域で守られている場所以外は、隕石の業火と破壊により焼き付くされていた。
隕石は、確実に骸骨魔法士を狙って落下し、
ズダーン!ズダーン!ズダーン!ズダーン!
大地が最期の赤き発光を迎えた時、
業火が大地を被い尽くした時、
豪煙が天を白く染めた時!!!
俺の視界にバーナーがポップアップして、
きたぁああああああああああ!!!
その表示された内容は、
『緊急討伐要請 ディアマンドラアスを討伐せよ!』
やったああああああああ!!!
此で俺達は助かる!!!
大地は光で埋め尽くされ、万を超す友達が来る!
来る!!
えっ?
来るよなあ、
万って?
こんなにショボかったか?
平原にぽつぽつと光が発光して、
確かに俺の友達がやって来てるけど、
その数ショボくねぇ?一万もねえぞ!
五千も割っている!
ええええええええええええ!!!
D&DONってそんなにユーザ数減ったの!!!
やばくねぇ!!!
もう、オワコンなの!!!
タイムカウンタが動き始め、残り時間が40を表示した!
えっ!あの人数で40分!!
無理じゃねえの!
百万対五千以下! 幾ら友達が強いからって、ディアマンドラアスの処迄辿り着いて終わりだよ!!
マリーが心配そうに、「御主人様!随分少なくないですか?」
俺はマリー達を安心させる為に、「大丈夫だ、問題無い、友は絶体来る!」
って言っちまったよ!内心は悪い事ばかり考えてる!!どうするんだよ!俺!
ディアマンドラアスは平原全体に大豪雷魔法を休み無く打ち続け、
その豪雷に多くの友が吹き飛ばされ!!
彼等は死ぬことは無かったが、直撃の硬直で骸骨剣士や骸骨戦士の攻撃に合い、連携は分断され、
ディアマンドラアスに近付く事が出来なかった!
ヤバイ!
奴は明らかに時間終了を狙っている!!
世界の法則は、時間終了は我等の負けだ!!
バリバリバリバリンンンン!!!
俺達の後方で五枚目の神殿結界が破壊される音が平原中に響き渡り、
「マリー!俺達も殺る!狙うはディアマンドラアス!!!」
「はい!」
俺はメリーとエリーに向かって、「メリー、エリー!撤退はしない!友を援護する協力してくれ!!」
メリーは大盾とロッドを握り締めながら、「分かったレイ!」と大声で叫び!
エナジースポットを詠唱し続けるエリーは蒼白の顔の額に汗を滴ながら、頷く!
そして、再び天が炸裂して二十を超す隕石が地上に向かって落下する!!
ズドォオオン!ズドォオオン!ズドォオオン!
その破壊力は更に凄さを増し大豪雷魔法を詠唱中のディアマンドラアスに直撃し!!
バァガアアン!バァガアアン!バァガアアン!
ディアマンドラアスの骸骨の頭蓋骨や体の骨々を破壊する!!
「やった!」
奴が碎けた瞬間!
奴の命ゲージが減るのを見た瞬間!
いける!
奴を倒せる!!
俺は勝利を確信した!!!
しかし、
その瞬間、時間が逆再生するが如く、奴の飛び散った骨々が集まり、
奴の命ゲージが元に戻り!
奴の体、命その全てが元に戻った!!
「えええっ!」
奴は不死身かぁ!!
バリバリバリバリンンンン!!!
俺達の後方で六枚目の神殿結界が破壊される音が平原中に響き渡り、
復元したディアマンドラアスは、自身に硬化の魔法を掛け、再び大豪雷魔法を高速に詠唱し始めた!
何故だ!!
此の世界で奴は無敵なのか!!
俺達は続けてメテオフォールを三度、奴に放ったが硬化したディアマンドラアスの骨にはヒビを入れる事すら出来なかった。
俺達の中で、絶望感が沸き起こる寸前、
一人の友が、錬金術師のスキル、トランポリンで此方に向かって来る、
錬金トランポリン、乗った者を高所へ跳ね上げる効果を持つ黄金円の錬成式を、地面または空中に配置する、錬金術師の長距離移動スキル
一体、誰だ?
上手く骸骨軍団を避けながら、地上に黄金のトランポリンを展開し、更に空中で移動用のトランポリンを展開して此方に高速に向かって来る!
何のために?
ドスッ!
方膝を着いて着地したその男の姿は、
白髪の坊主頭に鎧を嫌い黒いインナーをこよなく愛する男!
その男はゆっくりと顔を此方に向ける、
その顔はシワとキズが渋みをより際立たせ、その表情は四十代より老けて見える演出をする事に拘った、
我がメル友!
「オセロ!!!」
かって、趣味が同じ事から気が合い、ネットの中でお互い多くの時間を過ごしてきた、我が友達のアバタ!
もう、向こうの名前はうろ覚えだ、確かHだったような、
「どうして、此処に!!」
オセロは人形のように無表情で、その唇から発する言葉はやはり、昔の8ビットコンピュータの電子音声のような片言、
『レイ・・・聞け・・・今は・・・パソコンユーザだけ・・・ゲーム機ユーザが・・・来れない・・・回線・・・繋がらない・・・』
えっ!!!
回線が繋がらない!!!
回線!
線!!
線!!!
俺はディアマンドラアスを見た!
確かに奴は虚空より引き出した二本のケーブルをまだ握り続けている!
俺にはハッキリと見える!!
右手に白いケーブル!
左手に黒いケーブル!
そうか!
そう言う事だったのか!!
あのケーブルは!!
世界を繋ぐ回線!!!
奴は世界の弱点が回線にある事を知っていた!!!
俺達は最初から我が友を頼る事は不可能だった!
では、ディアマンドラアスの討伐は誰がするんだ!!
誰が!
その時、俺は知った。
此のディアマンドラアスの討伐は、
俺達の依頼である事を!!
ディアマンドラアスを俺達自身の手で殺らなければならない事を!!!
バリバリバリバリンンンン!!!
俺達の後方で七枚目の神殿結界が破壊される音が平原中に響き渡った、残り三枚!
雪が降り続け、寒風が吹き荒れるラストニアの大平原を絶望感が包み!
世界が終わる!!
俺達はそう思った瞬間だった!!!