俺、再び神殿に行く
俺達はディアマンドの罠に嵌まり、奴を死の世界から蘇らせてしまった。
その報酬は、奴が仕掛けた依頼の内容の説明と、此の世界が俺がいた世界の世界と密接に関係がある事の解説、そして俺達の命を一回見逃す事。
俺は英雄でも勇者でも無い、只の四十過ぎのエロオヤジだ、ディアマンドの強さは俺の三倍、マリー、メリー、エリーの二倍!
勝てない相手に無茶な喧嘩はしない。
ディアマンドが過去に起こした残酷な犯罪の被害者であったメリーは、そんな弱腰の俺を非難した。
マリーもメリーもエリーも冒険者に成る事に特別な思いを抱いていた。
しかし、俺にとって冒険者は遊びの中の一つの役割にしか過ぎない。
遊びで死にたくは無い。
そんな俺だから、メリーに掛ける言葉が思い付かず、俺達は神殿に転移した。
ディアマンドのレベルは150を越えていたが、神殿騎士団の精鋭達も150に近いし高位の冒険者なら150を越えている者もいる。
奴の相手はそい言う方達に任そう、俺はそう考えて、神殿の司祭長のジョセッぺに相談する為に神殿に転移した。
ジョセッペは神殿の奥の殿には居ず、彼と神殿騎士団の団長達はラストニアに起こった異常気象の原因を究明しその対策を取る為に、商店街に建っている神殿騎士団の本部に在る戦略立案室に移動していた。
俺達も直ぐに其処に迎い、ジョセッペに合うと、俺は事態の経過をジョセッペに説明した。
ジョセッペは目を見開き、「何だと!ディアマンドが復活しただと!!そんな事が可能なのか!!!」
メリーがジョセッペに説明した、「たぶん可能です、父の研究では理論的には其の死の世界に存在する力の適応性と此方の条件が合えば、」
ジョセッペは眉をしかめて、「ゴールドウェイ殿の『死者復活論』じゃな、ゾンビが何故存在するかを研究した名著。」
俺は、「だが奴はゾンビじゃない、知性も意思も合った!」と質問を投げ掛け、
メリーが俺に教えてくれた、「此れも、親父の学説なんだけど、死者が高位の状態で蘇れば蘇る程、人間に近い怪異になるんだ。」
確かに、ディアマンドのレベルは高い、だから意思が保てたのか。
奴の目的は『白龍』様を殺す事。
だが、幾ら奴がレベルが高いと言ってもたかが一人、
そんな事が可能なのか?
ゾンビの戯言?
其処へ、神殿騎士団の団長、ゲオバルトが戦略立案室に入って来た。
「聞いたぞ!ジョセッペ殿!ディアマンドが復活しただと!!」
ゲオバルトは身長百八十のちょっとで小太りの五十代の男性で、トレードマークのパンチパーマと髭面、そんな中年でも騎士団長、レベルは180を越えて、神殿勇者のレオの次に強い。
更に、今回は真新しい銀ピカの鎧を着ていたから、余計に強く見えた。
「ジョセッペ殿、今回はレオ殿が居ないので、ディアマンドごとき、我ら神殿騎士団の精鋭部隊で奴を討伐する事にした。」
「えっ!レオいないの?」、俺は驚いてジョセッペに聞いた。
ジョセッペは困った表情で、「レオもいろいろと忙しいようでな、今は神殿にはいないんじゃよ。」
バンバン!バンバン!
ゲオバルトが、笑いながら俺の肩をバンバン叩く、痛い!
「ガハハハハ!別にレオ殿が居なくても、ディアマンドごとき、我らで充分だ!ガハハハハ!」
本当に大丈夫なのか、コイツ?
戦略立案室には畳六畳程のテーブルがあり、そのテーブルの上には、ハイドル平原のミニチュアが作られている。
これは『遠見のボード』と呼ばれ、ラストニア全土が立体的に写し出されていて、更に騎士団や冒険者等、白龍様の加護がある場合はより詳細に見ることが出来る優れ物だ。
『遠見のボード』を監視していた騎士団員が、「隊長!ディアマンドです!!」
全員が『遠見のボード』に目を向けると、ラストニア平原の中央に三頭身人形のようにデフォルメされた、ディアマンドが立っていた。
奴は神殿に向かってゆっくりと歩いていた。
ジョセッペが唸る、「確かにディアマンドじゃ!」
ゲオバルトが片手を上げて、「確かに、奴は強そうだが、俺の敵じゃ無い!出るぞ!!」と大声で吠えて数十人の騎士団員と共に戦略立案室を出ようとした時、
ジョセッペが止める、「ちょっと待たれよ、ゲオバルト殿!奴が何か言っている!」
ゲオバルトが、「?」って顔して立ち止まり、
俺も『遠見のボード』のディアマンドの人形に意識を集中した。
確かに、奴は何か喋っている、
少しずつ、奴の言ってる声が聞こえてきた、
『白龍!古き世界の申し子にして、滅びの神よ、お前の時代はもう終わっている!世界は血で血を争う狂気と狂喜に包まれた殺戮の世界!!』
ジョセッペが驚いて、「奴は一体、何を言っているのじゃ?」
はい、俺がいた世界の世界の話をしています。
流石のジョセッペの旦那でも分かんないよなぁ。
此の世界の人達に、俺達の世界に在るゲームって娯楽を話しても理解出来ないだろうし、
まして、娯楽でお互いがお互いを殺しあっているってどう説明すんだよ!
端から聞けば、本当に狂人の戯言になっちまう!
ジョセッペが考えながら、「しかし、『白龍』様を殺すじゃと、奴一人でか?前はオークの軍団じゃったが、今回は一人!一体、奴はどうする気じゃ?」
『遠見のボード』のディアマンドがニヤリと笑い、『知りたいか、ジョセッペ。』
全員が驚いて、「えっ!!!」
ディアマンドが俺達の話を聞いている!
更に、奴は立ち止まり、両手を水平に広げながら、『さぁ始めようか、白龍!終わりの始まりだ!!!』
「グワッ!!!」、「グエッ!!!」、「ギャアア!!!」
絶叫と悲鳴と苦悶が戦略立案室に響き渡り、
「えっ!!!」、俺達は直ぐに悲鳴を上げている騎士団員を見ると、全員の鎧が血のように赤黒く発光し、
俺は苦痛で膝不味く騎士団員を見て驚愕した!
彼等は呪いでレベルが1になり、更に、毒、遅延、物功魔功物防魔防低下の状態異常の嵐!
ジョセッペが神殿の文官に怒鳴った、「直ぐに回復役を呼んで来るのじゃ!」
「はっ、は、はいっ!」
文官が慌てて部屋を飛び出したが、ゲオバルトが、「大丈夫だ、なんのこれしき!」と言いながら立ち上がる!
おい、おい、大丈夫じゃねえよ!
そんな体じゃ駄目だろ!ゲオバルト!!
「御主人様!ディアマンドの手に!!」
マリーがディアマンドの事で俺に伝える、
「手って、手がどうかしたのか?」
俺は再び『遠見のボード』のディアマンドに意識を戻す、
確かに、奴の前に突きだした右手の拳が赤黒い光を発していた。
「? 光ってる?」
奴はゆっくりと握り絞めた拳を開き、
その右手の手のひらの上には赤黒く光る宝石が乗っていた。
「えっ!あれは、『渦霊の宝石』!!」
ジョセッペも驚いて、「なんじゃと!『渦霊の宝石』じゃと!まさか、奴があの宝石に関係していたのか!」
『遠見のボード』のディアマンドが再び俺達に語り掛ける、『我が霊を返して貰うぞ!!!』
と言った瞬間!
ズバン!ズバン!ズバン!ズバン!
「えっ!!」
音を発てて騎士団員達が身に付けている鎧から赤黒い光が空中に飛び出して天井を突き抜け消える!
『遠見のボード』を見ると、ラストニア中から来る赤黒い光がディアマンドに集まっていた!
ゲホッ!!! ドサッ!!!
ゲオバルトに目を戻すと、彼は血を吐いて床に倒れていて、彼が装着していた銀ピカの鎧は錆びた鉄屑になり、彼の命ゲージは1しか残ってはいなかった!
駄目じゃん!!
と俺が思った時、早急出て行った文官が慌てて戻って来て、
「ジョセッペ様!大変です!!神殿中の騎士団員が死にそうです!!!」
ジョセッペは驚愕して、「な、なんじゃと!!!」
文官は更に、「そっ、それに、『礎』が赤く光って転移が出来ません!!!」
「なんじゃと!!!」
じいさん、流石に驚きがワンパターンに成っちまった。
ジョセッペは絞り出すような声で、『遠見のボード』のディアマンドに言った!
「ディアマンド、まさか、その膨大な『渦霊の宝石』の霊力が全てお前の力だと言うのか!!」
赤黒い光を取り込み続けるディアマンドが笑いながら言った、『そうだ!ジョセッペ!!白龍のみすぼらしくひ弱な力に比べて、何と力強く、巨大な力!此こそが我が世界の力!!!』
俺はずうーっと考えていた、奴の言う『霊力』って何なんだ?
『霊力』って俺達の世界に関係している、其って単純にユーザ数だげだったら!
すうっーごーく、ヤバクねぇ!
大丈夫かよ、白龍様!
そりゃ、ユーザの世界を愛する気持ちは負けないけど、
白龍様の世界のユーザ数は少ないから数を比べたら圧倒的に不利だ!
殺しゲームは世界中で大人気だが、仲間と魔物を狩る世界はマイナーでユーザ数は少ない!!
そんな不安んな事を彼是考えていると、再びマリーが、「御主人様!」と俺を呼んだ。
俺は直ぐにディアマンドを見ると、奴は光を失った『渦霊の宝石』をラストニアの大地に捨てようとしていた。
宝石の霊力は完全にディアマンドに吸収され、宝石は只の石ころのように見えた。
その石ころが、ゆっくりとディアマンドの手からラストニアの大地に落ちている間に、
ズン!
骨の頭になり、
「えっ?」
バキン!
骨の背骨が生えて、
グワッキン!ジャッキン!!
骨の手が足が生えて、
「ええっ!!」
「なんじゃと!!!」
「わっ!」
「凄い!」
一体のスケルトンソーサラが大地に立っていた!
石ころが骸骨に!まっ、まさか奴は!!
ディアマンドか狂喜の笑顔を浮かべながら、『紹介しよう、我が軍団を!!!』
えっ!
その瞬間!
ズドドドドドドドドドドドドドドド!!!
『遠見のボード』が、神殿中が震度六を越える揺れが起こった!!!
「わぁ!」、「何と!」、「きゃ!」、「ムリ!」、「イヤァ!」
俺達は揺れで床に転げ回り、その間に『遠見のボード』は赤黒く光輝いていた!
揺れが治まって、俺達が『遠見のボード』を見ると、俺達はその光景に愕然とした!
『遠見のボード』は骸骨軍団で溢れかえっていた!
「なぁ、なんじゃとおおお!!!」
じいさんの驚きも更に迫力が増し!
ジョセッペじいさんがボードに向かって、「数を教えよ!」と怒鳴った!
直ぐにボードの上に数字が表示され、その数字を見たじいさんは、
「・・・・・」
声を出す事すら出来なかった。
更に俺には、数字と奴等の強さのレベルが見える。
神殿を取り囲む骸骨軍団の数は、
剣と盾を持つ『骸骨剣士』 レベル30 50万
身長2メータを越え、大剣を持つ『骸骨戦士』 レベル60 30万
杖を持った魔法使い『骸骨魔法士』 レベル50 10万
地には『骸骨狼』 レベル40 5万
天には『骸骨女鳥』 レベル40 5万
そして、身長が12メータを越える巨大な棍棒を持った『骸骨巨人』 レベル100 が100
更に、巨大な死せる竜『骸骨竜』 レベル150が10
正しく、『百万骸骨軍団』!!!
もはや『遠見のボード』の中でさえディアマンドが何処にいるか分からない!
だが、奴の声だけは聞こえる。
『見たか!白龍!此こそが我が軍団!!そして此こそが我が世界の力!!!』
えっ!ディアマンド!お前、まだ何かやんの!!
『遠見のボード』の一点が赤黒く発光した瞬間!
天空に出現したのは!!
身長は20メータを越える巨大な骸骨司祭!!!
骸骨の頭上には巨大な宝冠、
巨大な古びた法衣には黄金の刺繍、
そしてそのレベルは200!!!
奴がハイドル平原中に響き渡る大声で、
『我が名は死せる天の法皇『大骸骨霊法皇ディアマンドラアス』!!!』
奴は骸骨の右手を虚空に差し込み白いケーブルを引き出し握り締める、
更に、左手を虚空に差し込み黒いケーブルを引き出した瞬間!
奴のレベルはグルグルと回転を始め、
その数値が四桁を越え!
止まった数値が!!
9999!!!
えっ!!!
俺は何度も見直した!
9999!
レベル9999!!
レベルカンスト!!!
俺がその数値を理解した時、
本当に、此の世界は終わったぁぁ!と考えた俺は正しいよなぁ!
白龍様!!