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ドラゴンズ&ドラゴン  作者: H氏
ハイドル霊廟怪異編
29/39

俺、エリーと出会う

 俺達は『運営堂うんえいどう』から借りた300万(ゴールド)を一月で返す為に、『運営堂うんえいどう』が俺達に提示した、一日に『渦霊かれいの宝石』を二百個、合計六千個集める条件をんだ。


 それは、某有名漫画、『賭博破戒録とばくはかいろく○○ジ』のように、長く、暗く、辛い、地下洞窟ダンジョンでの苛酷かこくな労働をいられるような出来事だった。


 余りのつらさにメリーは、「もう嫌だぁぁぁ!お父様に言ってお金借りようよ!」と騒ぎ、


 俺は、「君の父さんは俺達の事、反対しているんだろう、きっと条件に俺と別れて変態錬金術師と結婚しろと言われるぞ。」


 メリーは嫌な顔して、「それも嫌だぁぁぁ!レイと、旦那様と別れたくない!!」と騒ぎ、


 マリーは、「御主人様のお友だち(フレンド)に手伝ってもらったらどうでしょう。」と俺に聞き、


 俺は、「彼等かれらよぶのに『白龍』様に対価を支払って条件をうかがい、うかがった条件を達成するのが更に大変だし、それに彼等かれらが来たら前回のようにあっという間に宝石集めが終わって、もっと仕事寄越(よこ)せって大騒ぎになる、だから彼等かれらに頼るのは無理だよ、マリー」


 結局、俺達は毎日『ハイドル霊廟(れいびょう)』に朝の七時から夜の八時迄、時には生活費を稼ぐ為に十時迄(もぐ)った。


 もぐる回数も一日に最低十回、最高で十二回を毎日繰り返し、一週間が過ぎる頃には俺の『転身てんしんいもれたのか大部楽になった。


 こんな状況でも、俺の強さのレベルはシーカーのレベルが一つ上がっただけで、それ以上は上がらなかった。


 だが良い事もあった、シーカーのレベルが上がり俺はシーカーのスキルの一つ、『跳鷹斬ちょうようざん』が使えるようになった。


跳鷹斬ちょうようざん』、シーカーロープを放って敵を捕らえ、反動を利用して激しく斬りこみながら距離を詰め、フィニッシュ技で両手に持つダガーを鷹のように掲げながら大ダメージの一撃を入れた後、空中にそのままの姿勢で反転する。


 更に追加で空中からロープを放つ事で追撃を繰り出す事も可能で上手うまくいけば、地上に降りる事無く空中で連続して攻撃出来る、シーカーのスキルの中でもっとも華麗で華やかな技だ。




 そして、その事件は俺達が『ハイドル霊廟(れいびょう)』に潜り始めてから十五日目、『渦霊かれいの宝石』を『運営堂うんえいどう』に納品する個数がその日で三千個になろうとした時に起こった。


 時刻は夕方、俺達は九回目の地下洞窟ダンジョンもぐろうとした時、地下洞窟ダンジョンの入り口から十人近い女の子の冒険者が叫びながら飛び出てきた!


 彼女達のほとんどはレベルが低く、中には冒険者に成り立ての素人もいるような気がした。


 その中のリーダらしい、赤毛のショートカットの娘が、仮設テントで待機している『運営堂うんえいどう』の黒鎧達に、


「出た!!オーガが出た!!中に人が!!!」


 その瞬間、俺は『かまいたち』を発動させた!!!


 高速に地下洞窟ダンジョンを駆け抜け、キャンセルして更に『かまいたち』を連続発動させる!!


 俺のスタミナはぐんぐん削られていき、高価な高級ガラナエキスを片っ端から飲んでスタミナを回復させながら、


 俺は間に合え!!!と大声で叫びながら疾走した!


 地下洞窟ダンジョン化物モンスターは死なない、一度消滅しても何度も再出現リポップする。


 そして再出現リポップを繰り返すうちに、


 地下洞窟ダンジョンは化けて、その化物モンスターをその場所には存在しないレベルの化物モンスターにして、その場所に配置してくる!


 今、化けて出現したのが『オーガ』


 『オーガ』、全長三メータ以上の猿人型化物(モンスター)で、全身が黒い剛毛でおおわれ、その特徴は鬼のような顔に鋭く巨大な牙と地面に迄届く長くて太い腕、


 その鋼鉄のような剛腕ごうわんを振り回してりだされる、薙ぎ払い、アッパーカット、両手ハンマーはベテラン冒険者でさえ気を失う程の破壊力を持ち、


 そしてその巨大な両手は、一瞬の気を許さない程の素早さで獲物をつかみ、つかんだら決して離さず、つかんだまま鋭い牙でその獲物を噛みくだく、まさしく巨大な鬼の化物モンスター


 それが『オーガ』だ!!!


 俺が第一層の大ホールに飛び込んだ時、オーガは今まさに巨大な口を空けて、手に持つ少女をかじろうとしていた!


 それを目にした瞬間!


 俺のリミッターは外れた!!


 奴の動作は緩慢かんまんとなり、時はゆっくりと動く中を俺はスキル、『跳鷹斬ちょうようざん』を発動させた!


 静寂せいじゃくの中を俺がはなったロープは奴の頭にからみ付き、奴の頭を起点に俺を高速に引き寄せる!!


 引き寄せられた俺は更に高速に回転しながら奴の頭を切り裂き!!!


 飛び散る血飛沫ちしぶき!!!


 くだる、巨大なオーガの牙!!!


 そして、交差したダガーは奴の頭蓋骨ずがいこつ慘撃ざんげきち込み、


 俺は空中で高く両手を広げてたかのポーズを取る!!!


 その瞬間、時は戻り、


 ギャアアアアアアアア!!!


 奴の怒り狂う絶叫が、地下洞窟ダンジョン内に木霊こだまする!!


 奴は少女をつかんだ両手を放し、空中に入る俺に向かってその太い剛腕ごうわんを振り回し、


 落ちた少女を、俺のあとから来たメリーが受けめ、


 マリーは『かまいたち』で奴の足下あしもとを切り裂き、


 空中で連撃れんげきする俺、足下あしもと連撃れんげきするマリー!


 後は一方的な俺達によるオーガへの蹂躙じゅうりんだった。


 奴のレベルは30、俺は50代、マリーは70代、俺達の敵では無かった。


 やがて、オーガはゆっくりとちりとなり、地下洞窟ダンジョンの壁、天井に吸収されて消えた。




 マリーは心配そうに俺に聞いてきた、「大丈夫なんですか?」


 ? マリーは俺の何を心配しているんだ、


「大丈夫だけど、何で?」


 マリーは不思議そうに俺の顔をのぞきながら、「あんな大技を連発して体は、吐き気は、何とも無いんですか?」


 マリーに言われて俺は気がついた、確かに吐き気も体の異常も何とも無い。


 何故だ?


 その時、


「えええええええええっ!!」


 メリーさんの驚きの声に俺とマリーさんがビックリ!


 俺とマリーはメリーの方に振り向いて、


「どうした!メリー!」


 メリーは驚いた顔で、「この子、マーガレット女史だよ!」


 マリーも驚いて、「えっ!」


 俺は、


 マーガレット女史?誰それ?




 その後、俺達は転移で『ハイドル霊廟(れいびょう)』の前の『拠点きょてんいしずえ』に戻り、黒鎧達と赤毛の初級冒険者に彼女を無事に救出した事を報告し、赤毛ちゃんは泣きながら俺達に感謝していた。


 赤毛ちゃんが言うには、彼女の護衛として組合のボードに張り出されていた依頼を受けただけで、彼女が何者なのかも知らないそうだ、此処ここに来たのもアースボルトが此処ここの一層、中間迄と指定したからで、


 赤毛ちゃんも、一般人が地下洞窟ダンジョンを見学する事はよくあるので気にせず、レベルの低い『ハイドル霊廟(れいびょう)』で十人近い冒険者が護衛なら大丈夫だと安心していてオーガが出現したのだそうだ。


 所詮、素人に毛が生えた程度の初級冒険者、オーガを見てパニックになり、護衛対象者を置き去りにして逃げちゃった、とうわけだ。


 結局、俺達は彼女を赤毛ちゃん達や『運営堂うんえいどう』のスタッフ達に預ける分けにもいかず、俺達の借家に連れてきて医者にみせた。


 彼女の頭の後頭部のキズを見た医者がうには、たぶん彼女はオーガを見て気絶した時、床に頭を打って軽い脳震盪のうしんとうを起こしたのだろうと、彼女はじきに目が覚めるそうだ。


 まぁ、俺が思うに彼女はぐに気絶したのが良かった、もし彼女がオーガの前で暴れたら、一般人の彼女はあの太い腕で簡単につぶされていた。


 オーガは彼女をまるごと食べる為につぶさないように持ち上げたようで、彼女の体には外傷は無かった。


 彼女が目を覚ましたのは、それから二時間後、俺達が遅い夕食を取っていた時、彼女は目を覚ましゆっくりとベッドから起き上がった。


此処ここは?私は死んで粗末そまつな世界に生まれ変わったのですか?」


 あのなぁ、そりゃ組合の借家だから高級じゃないけど、


 俺達は食事をめて、彼女の寝ている俺達のベッドに行き、俺は、


「目が覚めたかい、お嬢ちゃん、あんたは生きていて、此処ここはあんたを助けた俺達の貧相な家だ。」


 彼女はしばらく考えた後、事態じたいが飲み込めたのか驚いて、


「私は助かった!・・・貴方あなたが助けてくれたのですか?・・・失礼ですが貴方あなたは?」


「俺は冒険者のレイ、此方こっちがマリーに、メリー、二人とも俺のビショップだ。」


 彼女は二人を見て驚き、「ビショップ!それも二人、まさか貴方が、」


 と彼女が話している途中にメリーが興奮して、「ねぇ、ねぇ、貴女あなた、『冒恋ぼうこい』の作者のマーガレット女史だよねぇ!」


 彼女は驚いて、「えっ!何で知っているんですか?」


 メリーは嬉しそうに、「私さぁ、貴女あなたのファンで『ボケマ』で必ず貴女あなたからサインを貰ってたの!」


 彼女は困った顔して、「すみません、『ボケマ』では何百人の人にサインをしているので、貴女あなたの事は、」


 俺はため息を付きながら、「そりゃそうだ、メリーは落ち着いて、でっ、何百人もの人にサインする金持ちの作家さんが何で、危険な地下洞窟ダンジョンもぐるような無茶をしたんだ、」


 彼女はうつむきながら、「それは、・・・」


 彼女が言いづらそうだったので俺は、「かく、俺達はメシの途中だ、ければ一緒にメシを食いながら話しを聞こう。」




 温かく旨いメシは気持ちをなごませる、彼女は嬉しそうに、


「貧相な場所での、貧相な食事なのに、すっごーく美味しいです!」


 貧相、貧相と二回も言われた俺と料理を作ったマリーは苦笑いをしたが、明るくなった彼女、マーガレット女史を良く見ると結構可愛いタイプので、マリーとメリーとはまた違ったタイプの俺好みの、と言う気がする。


 身長は百六十前後で小柄で華奢きゃしゃな女子高生のような彼女は、丸顔でパッチリお目目、髪は肩迄の銀髪、耳は祖先にエルフがいたのかちょっと尖っている。


 もし彼女がハーフエルフだとすると、彼女は見た目よりけていてもおかしくはない。


 食後のお茶とマリーお手製のチョコレートケーキを食する頃には、すっかりと打ち解け、


 マーガレット女史はポツポツと自分の事を話し始めた。


 彼女の本名は、エリィウェル ガレシアン、愛称は『エリー』、幼い頃に両親と死に別れ、『ビショップのさと』で育った。


 だからジュリエッタや宗主コルトミュの事は良く知っていた。


 彼女は僧了に成るためにさとでかなり勉強し、実際に回復魔法もかなり使えるそうだ、だが空想好きな彼女は『ビショップの郷』を訪れる多くの冒険者達から聞く話しに夢中になり、やがて自分で彼等の話しを執筆するようになったんだとか、


 それのちに有名になる『冒険者と恋に落ちて』、ぞくに言う『冒恋ぼうこい』で、の小説を読んだ女性冒険者のすすめで『ビショップのさと』を出て、彼女は一人で作品を出版雑貨店に持ち込んだところ、ぐに本になり、売り出され、そして大ヒットした、そううとても羨ましい人生を送ってきた彼女だったのだが、


 此処ここにきて彼女に強力なライバルが登場して、彼女の人気が急降下してしまった。


 それが新大陸の族長の娘、セシルアさんだった。


 セシルアさんとエリーの違いは、セシルアさんは新大陸の冒険者で実際、冒険をしているし、此方こっちにも一人で来れる程の実力と経験が有り、ストーリにリアリティーが有るのだそうだ。


 そして、大ヒット作、『引き裂かれた愛と想い』で、全ての出版雑貨店が次回作をうちにとセシルア(もう)でが始まり、


 彼女はもはや過去の人とうわけで、出版雑貨店には相手にされなくなった。


「そうだよねぇ、此処ここんとこ、『冒恋ぼうこい』はマンネリ化と内容が薄くなってたもんね、エリー」、とメリーはまた偉そうに言い、マーガレット女史ことエリーは傷ついて項垂うなだれた。


 折角、明るくなってきたのに、また余計な事をメリーさんは!


 俺は気を使って、「まぁ、でも一生遊べるくらいには稼いだんだろ、もう引退してもいんじゃねぇの。」


 エリーは手を握り絞めて、「お金じゃ無いんです!」


 メリーも賛同して、「そうだよ!ちょっと美人だからって、お高いあんな奴に負けちゃダメだよ!エリー!」


 いや、セシルアさんはちょっとの美人じゃ無いし、すっげえ美人だし、ファンサービスも立派な、万を越す冒険者おっかけのファンがいる決してお高く無い美人だぞ、メリー。


 俺の心の声を読んだのか、マリー迄、「そうですよ、エリー!貴女あなたはまだ面白いのが書けます、あんな性悪女しょうわるおんなに負けちゃダメです!」


 うーん、マリーさん俺がセシルアさんの隠れファンだって絶体知ってるよなぁ。


 エリーは顔を上げて、「そうなんです!負けたく無いんです!だから、私はコルトミュ宗主に相談したんです。」


 彼女は、俺を見つめる?


 嫌な、予感。


 「宗主は一人の冒険者の話しをしてくれました。」


 へーぇ、そうなの。


 本当に嫌な予感。


 の嫌な予感が、俺がマーガレット女史ことエリーに出会って始めて感じた気持ちだった。


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