↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンズ&ドラゴン  作者: H氏
ハイドル霊廟怪異編
30/39

俺、エリーさんと契約する

 俺達は『ハイドル霊廟(れいびょう)』で一人の女の娘《こ》を助けた、彼女はハーフエルフで『冒険者と恋に落ちて』、通称『冒恋《ぼうこい》』の作者だった。


 彼女は人気作家の地位を賭けた闘いで、新大陸の族長の娘セシルアさんに負け、その地位をセシルアさんに奪われ、失意のどん底に落ちた彼女は再び人気作家の地位を獲得する為に奮起して、彼女の出身地『ビショップの郷《さと》』の現宗主コルトミュの下《もと》を訪《たず》ねたのであった。


「レイ!ちょっとその解説ひどくない!」


 そっ、そうか?メリーは怒ると俺の事をレイと呼び捨てにする。


 元(・)人(・)気(・)作(・)家(・)で『冒険者と恋に落ちて』、通称『冒恋《ぼうこい》』の作者、マーガレット女史であるエリーは俺に語る、


「私、本当は冒険者に成りたくて十六歳の時、神殿の冒険者組合に来たんです、でも冒険者には成れませんでした。」


 ?何で?


 マリーが俺に解説する、「ハーフエルフの方は人の血が濃くないと『白龍《はくりゅう》』様の加護が受けられないんです、たぶん彼女は滅んだエルフ族の血のほうが濃かったのでしょう。」


 本当に『白龍《はくりゅう》』様は好き嫌いが多いなぁ、困ったもんだ。


 エリーは俺達に言った、「宗主様が言うには、本来、ビショップにも成れない反逆者の一族の娘をビショップにした一人の冒険者がいると、」


 マリーは頷《うなず》きながら、「其《それ》は私の事ですね。」


 エリーは続ける、「その冒険者は更に、『白龍《はくりゅう》』様を信じていない異教徒迄、自分のビショップにしたと。」


 メリーは嬉しそうに、「其《そ》れ、私の事だ、錬金術師は『白龍《はくりゅう》』様を信じていないから、あんまり『白龍《はくりゅう》』様をバカにする人はビショップにも成れない異教徒もいるって聞いた事が有る。」


 俺は驚いた、えっ!そうなの!


 だいたい、此《こ》の世界で『白龍《はくりゅう》』様をバカにしちゃいけないでしょう。


 だって、此《こ》の世界は『白龍《はくりゅう》』様が作った世界だよ、少なくとも俺が遊んでいたドラゴンズ&ドラゴンオンライン、通称D&DON(ダアドオン)はそうだった。


 エリーは嬉しそうに、両手を握り絞めて、「そんな凄い冒険者が要《い》るのなら、冒険者に成れない私でも、ビショップには成れるかもしれない、私はそう考えたんです!」と俺を見ながら言った。


 俺は惚《とぼ》けて、「へぇ、そんな凄い冒険者が要《い》るんだ、世の中は広いねぇ、何時《いつか》かエリーさんもそんな凄い冒険者と出会えると良《い》いね。」


 其《そ》れを聞いたメリーは膨《ふく》れて、「あぁ、レイ、意地悪してる、業《わざ》と、惚《とぼ》けてる!」


 メリーさん! 俺は意地悪してるんじゃ無い、俺には他の冒険者と違い秘密が有る、その秘密を共有するビショップをそう簡単には増やせないんだよ!


 だから、それを知ってるマリーは黙ってる、


 だいたいメリー、君の時だってマリーが仲間欲しいって言ったのと、金に目が繰《く》らんで、


 エリーは大声で、「300万G(ゴールド)!前金で払います!」


 えっ、300万G(ゴールド)


 俺とマリーはお互い顔を見合せた。


 もっと早く言ってよ!


 エリーは必死だった、「必要ならもっと払います!迷惑なら一週間!一週間だけでも!」


 俺は困った、金は欲しい、しかし、「なぁ、エリーさん、君にとってビショップに成る事って何の意味が有るんだい、今のままでも充分にやって来れたんだし。」


 エリーは俺にしがみつかん許《ばかり》に、「有るんです、自分の目で世界を見たいんです!体験したいんです!!其《そ》れが出来れば!!!・・・私は、」


 彼女は今にも泣き出しそうだった、


 暫《しばら》く沈黙が続いた後、マリーが口を開いた、「宜《よろ》しいんじゃないんですか、御主人様、家《うち》は今、お金が必要ですし、ちょうど回復役《ヒーラー》も必要ですよね。」と俺を促す。


 うーん、「・・・でも、体験だけだったら護衛の冒険者を雇えばすむし、実際に、冒険者を雇って『ハイドル霊廟(れいびょう)』に行ったんだろ。」


 エリーは下を向いて、「一般人が行ける場所は限られています!それに今回、『ハイドル霊廟(れいびょう)』に行ったのも、アースボルトさんが、貴方達《あなたたち》が新大陸に行って当分は戻って来ないと言って、じゃ戻って来る迄《まで》、少しでもお役にたてるように冒険者の練習をしようと思って、」


 そんでオーガに会って死にかけて、まったく、健気《けなげ》でどうかしてるぜ、しかし、アースボルトは俺達まで新大陸に行ったって思ってたんだ、そう言えばハイドルの地下洞窟《ダンジョン》にずうっと潜《もぐ》って宝石を採種していたから、組合には一回も顔を出さなかった。


 ふぅ、ため息が出る、「でっ、メリーはどう思う。」


 メリーは嬉《うれ》しそうに、「私はエリーの事を昔から知ってるし、一緒に冒険者が出来るなら、すっごうーく嬉《うれ》しいかな。」


 はぁ、「分かった、前金300万G(ゴールド)でっ、二週間だけだ、その時、残りの300万G(ゴールド)、合計600万。」


 マリーは驚いて、「御主人様?」


 別に金が欲しい分けじゃ無い・・・訂正、金は欲しい、只《ただ》、理想と現実は違う、彼女が憧《あこが》れて美化した理想の冒険者に俺は成りたくなかった。


 彼女にとって俺は金にがめつく、自分勝手で利己的で我儘《わがまま》な冒険者であって欲しい、一週間後には俺の事を嫌いになって冒険者には二度と憧れない、そう言うシナリオになって欲しい。


 俺は彼女と親密に成るのが怖い、今ではマリーもメリーも、俺には大切な存在だ、その大切な存在がまた一人増える。


 俺は彼女達を守って行けるのだろうか?


 此《こ》の世界の存在で有る事が不確実な俺が、


 俺自身の正体が、俺自身にとって不明確な俺が、


 俺は何時《いつ》も思っていた、もしかすると俺は再び元の世界に帰ってしまうんじゃないかと。


 そうしたら、残されたマリーとメリーはどうなるのか。


 ! 手に温かく柔らかな感触《かんしょく》が伝わる。


 マリーが俺の手を握《にぎ》り、此方《こちら》を見ている。


「大丈夫ですよ、御主人様。」


 私は、例え何があっても貴方《あなた》を手放《てばな》さない!


 そう、俺に訴《うった》えかけているような瞳《ひとみ》だった。


 エリーは、「分かりました、その条件で構《かま》いません、宜しくお願いします。」


 彼女は俺達に御辞儀《おじぎ》をした後、雑貨店組合のカードを取り出した。


 そのカードから俺のカードに300万G(ゴールド)が振り込まれ。


 契約は成立した。




 翌日、俺は、売ると1個500G(ゴールド)だが買うときは組合手数料や神殿の税金分が乗っかって2000G(ゴールド)になる『渦霊《かれい》の宝石』を、市場《バザー》から総額40万G(ゴールド)で宝石を200個買ってトネリブァに渡した。


 トネリブァは何も言わずにその『渦霊《かれい》の宝石』を受け取り、俺達は『ハイドル霊廟(れいびょう)』から『ビショップの郷(さと)』に転移した。


『ビショップの郷(さと)』の 冒険者仲介担当であるジュリエッタ嬢は俺達とエリーを見て、直ぐにコルトミュ宗主に伝え、


 コルトミュも直ぐに俺達に会い、エリーと俺達を見た彼は、エリーに優しく、「決めたのですね。」と一言《ひとこと》を言《い》い、エリーは嬉《うれ》しそうに頷《うなず》いていた。


 俺にとっては此の儀式も三回目になる。


 コルトミュは、ボケットから小さな水晶玉を左手で取りだして言《ゆ》う言葉も同じだ、「汝《なんじ》ら、四人は、何時如何《いついかなる》時もお互いが、冒険者として助け合う事を誓うか!」


 エリーは直ぐに、「誓います。」と言《い》い、俺達も続いて誓うと言った。


 やはりコルトミュの左手の水晶が薄く光り始め、彼は言《い》う、「では、レイ殿、三人の指輪を外して私の右手に乗せた後、レイ殿はカードをこの水晶にかざしなさい。」


 俺達は指輪を外し、その指輪をコルトミュの右手に乗せた後、俺はカードを水晶に翳《かざし》80万Gゴールドが消えるのを確認した。


 コルトミュの右手から三つの指輪が消え、新たに四つの指輪が現れた、此れも今までと同じだ。


 コルトミュは今度の相手がエリーだからなのか話しを省略して、「レイ殿は、皆の左薬指に指輪を填《は》めて下さい、レイ殿の左薬指にはエリーが填《は》めてあげなさい。」


 俺達は其其《それぞれ》の薬指に指輪を填《は》めると、


 エリーの回りに光が集まり、光のなかでエリーは嬉しそうに立ち。


 やがて、俺の目に彼女の生命力と体力のバーがうっすらと見え始め、そして彼女のレベルが表示された時、俺達は彼女が冒険者に成るためにどのくらい努力をしてきたかを理解した。


 彼女の僧侶《プリースト》のレベルは70を越えていた。


 エリーは光の中で誇らしげに、俺の方を見て微笑んでいて、俺には彼女が眩《まぶ》しすぎて、直視《ちょくし》する事が出来なかった。




 エリーが俺達の仲間になったら歓迎会を兼ねて、ドゥナン深林層の『ディア・ドゥナン』に行こうと、マリーとメリーは決めていた。


『ディア・ドゥナン』はかって繁栄《はんえい》を誇っていたエルフ族の廃墟《はいきょ》で、一般人では決して行けない場所だ。


 緑に覆《おお》われたかっての美しかったエルフ族の都は、数千年たった今でも美しく、壁や天井に填《は》められていたステンドグラスの残骸《ざんがい》は、陽光《ようこう》の変化で光のロンドを作り出していた。


 勿論《もちろん》、廃墟《はいきょ》である以上、魔物《モンスター》の巣窟《そうくつ》であり、冒険者のレベルが50以上、四人が同時に乗らないと開かない扉等がある為、チームプレーが必須《ひっす》の難所でもある。


 俺達は此《こ》の場所でエリーとの連携を試した。


 此処《ここ》には、ライオンの体に背中にヤギの頭、尻尾が蛇の大型魔物《ビッグモンスター》キメラや全高12メータの巨木《きょぼく》の魔物《モンスター》エント、身長6メータで体型は相撲力士型、巨大な棍棒を振り回し暴れ回るモトロール等がいる。


 その大型魔物《ビッグモンスター》に三人だけでは苦戦していた俺達は、エリーが加わるだけで、戦いが此《こ》れほど変わるのかと言《ゆ》うことを始めて知る事になる。


 僧侶《プリースト》、回復と支援の魔法で共に戦う仲間を支《ささ》え、離れた標的の動きを抑えながら頼れる味方の行動を補《おぎなう》うことで戦闘を有利にする事が出来る術士《じゅつし》。


 僧侶《プリースト》の特技の一つに大型魔物《ビッグモンスター》の弱点であり生命の根源である魔核《シークレットコア》を生命回復効果のあるエリアを展開するヒールオーラが大型魔物《ビッグモンスター》に触れる事により奴等《やつら》の隠された魔核を暴露《ばくろ》することが出来る。


 また魔法強化の付与《バフ》を味方全体に転送《フィールドシフト》することも僧侶《プリースト》の特技の一つで、味方全体の火力を引き上げるアタックライザーや耐久力を高めてダウンを防ぐソリッドライザー等、非常に強力な支援系の魔法を得意としている。


 エリーは俺達が予想していた以上に僧侶《プリースト》ととしての役割が上手《うま》く、彼女が何時《いつ》か自分も冒険者に成る事を夢見て血の滲《にじ》むような努力をしてきた事が俺達には分かった。


 魔核《シークレットコア》を出すタイミング、支援付与の機会《チャンス》を決して逃さない判断力、俺達が疲れを感じた時、彼女の広げた両手から繰り出されるスタミナ回復魔法(エナジースポット)を全身に感じた時、彼女がどれ程の観察力を俺達に向けているか、


 彼女、エリーは僧侶《プリースト》ととして、一級品だった。


 もし、彼女にエルフの血が濃く流れていなかったら、エリーは決して俺達とは仲間には成る事のない、僧侶《プリースト》ととしての高位の冒険者に成っていただろう。


 俺達は知った。


 だからエリーは、金も作家としての地位、名誉を得てもそれらの全てを棄てても、決して得ることの出来ない冒険者に成る事に拘《こだわ》り、


 冒険者に成りたい、それが彼女の人生を賭《か》けた切なる願いである事を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。