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アタル  作者: 桐野 時阿
フジマ アタル
2/7

神の高校生

 2008年


 教徳高校に藤間が来て2年目を迎えた。



 入学式での一件により横領罪が発覚した校長、唐川藤雄は、即日逮捕となり、教徳高校を去った。新たにその座に就いたのは、その一件を引き起こした張本人、藤間中流(ふじまあたる)だった。藤間は、すぐさま自らを#長__おさ__#と称し、学校中のあらゆる制度を変え、学校を掌握した。ついで、自らの補佐役として教頭の立花を宰相(さいしょう)という役職に据え、甚大な変革を遂げると共に新体制を組織した。その制度の変革の一つとして紹介するのが、「SPS」なる集団規約事項である。SPSとは、system for perfect schoolの略で、つまり完璧な学校を築くための制度と言える。SPSの中には、「中間罷免」と「校内法度」と呼ばれる二つのルールがある。まず、中間罷免とは、 年に一度だけ開かれる、中間罷免査定会議によって職員の罷免が決められることである。罷免の経緯は、全校生徒にアンケート用紙を配り、いらない教師の名前を書いてもらい、一定数名前が書かれれば、その時点で職員は罷免となる、至ってシンプルなシステムとなっている。続いて、校内法度についてだが、校内法度とは、 新撰組の局中法度に倣い、校内での生徒、教員を含めた全員共通の禁止事項をまとめたもののことを指す。そしてその禁止事項というのが、以下の通りである。



1、個人間、集団に限らず、争い事は禁止。


2、異性交際禁止。同性の場合のみ可。


3、1日4時間学習。学習の証拠は毎日提出。


4、三年間を通して偏差値を下げないこと。


5、身形を整え、整容し、頭髪の染色、ピアスは禁止。頭髪は常に男子は前髪が眉上、女子はヘアゴムを使用。教員も同様。



以上を守らなければ、一つにつき罰金5万円となる。



※補足、3番について、自宅学習の時間調査の一環として、生徒全員に特殊な腕輪を付けさせ、学習時間が基準を満たしているかを判断する。腕輪は、鉛筆を含むペン類をセンサーで感知し、ペンの先端がノートに触れた瞬間を学習開始時間として、そこからペンを離すまでの時間を計算し、総合的な累計時間をその日の学習時間として割り出す学習補助装置のことである。



 藤間は、この制度を制定し、実施したことによって教徳高校を大きく変えた。学業に関して言えば、平均偏差値は例年までを大きく上回り、70の大台に達しようとしていた。日頃、素行の悪かった生徒に関しては、身嗜みを整容し、まるで人が変わったように性格が匡正され、それによって評判もみるみる上がっていった。上がったのは、なにも学校と生徒の評判に留まらない。それ以上に世間は、未だかつて日本で類を見ない大変革を成功させた藤間中流を、大々的に取り上げた。テレビなどの映像媒体への露出こそ少ないが、映像媒体を除くメディアからは、常に教育方針についてを熱弁した模様が報じられた。ただ、どのメディアに対しても言えるのが、必ずしも藤間の出自については触れられていないということだった。さらに、メディアは、藤間が収めた教徳高校を捉えるばかりで、肝心な実態を把握できていなかったため、一部で藤間の活躍を訝しむ者さえいた。SNSでは、否定的な意見が論争を生むまでに発展し、これもまたメディアによって取り上げられた。結果、いずれも憶測が生じるばかりで、真実を捉えるまでには至らなかった。



 藤間がいかにして教徳高校を収め、世間的評価を得るに至ったのか。それは、この年の新入生を含めた在校生150名あまりの内部の人間にしかわかり得ない。噂によれば、藤間が独裁者として高校を掌握している、という話も聞く。が、あまり信憑性は高くない。出自についても、色々と虚偽が飛び交うばかりで、真実は掴めていない。藤間本人が、頑として自らの出自を語ることなく拒んでいるとすれば、なにか出自に関する疚(やま)しい事実が存在するのかもしれない。または、藤間ではない何者かの成功を横取りしているという話もいつしか聞いた。とにかく、藤間に関して言えば、きりがない。ただ、今彼は陰で、「神の高校生」と呼ばれているという。……そう、「陰で」だ。



 以上で申し上げた藤間中流の素晴らしきカリスマ性と、教徳高校を一気に有名校へと見事、のし上げだ実績は、まさしく「神」として崇められるに値するのかもしれない。しかし、これは、あくまで表面上での成功に過ぎない。先ほどの記述にもあったように、未だ教徳高校の実態を暴いた者はいない。藤間が内部でどのような指導をしているのか、謎に包まれている。そして、なぜ「陰で」藤間は神と呼ばれているのか。私は、そこに教徳高校の「裏」があるように見た。最悪、その「裏」が、深い「闇」となることもあり得る。藤間の話題が沈静化した今は、どのメディアも藤間については手を引き、誰も「闇」を暴こうとするものはいない。果たして、真実はいかなるものか……。

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