わりとどうでもいい実力
わりと20-1
ドゴゴゴオオオオオン!!
「「!?」」
皐月とキスを交わした後、塔の方から凄まじい地響きが起こる。慌てて視線を向ける俺たち、そこには……。
「なっ!? 何じゃありゃあああっ!?」
そこから現れたのは何と……体長五メートル以上あると思しき、石像の様な物だった。そいつは「ゴオオオッ!」と怒声を轟かせ、門の前に立ちはだかる。
「恭二、下がってっ!」
「皐月……って!?」
皐月の手には光り輝く剣が握られている。これが皐月の武器か……始めて見た。というか大丈夫なのか? あの石像は皐月の三倍以上の大きさだし、止めた方が……。
ゴオオオオッ! とんでもない音量の呻きに思わず耳を塞ぐ。そして間もなく、巨体を捻り皐月を目掛けて拳を振り下ろした。
「皐月っ!」
その一撃は確実に皐月を捉えた。そして……皐月がその場から出て来るのは確認できなかった。まさか……直撃とか、ないよ……なあ?
「……」
どうもこの辺り自体がバッテリーに生み出された物なのか……ガーデンの庇護は受けていないみたいだ。
そんなわけで砂煙が巻き起こり、皐月の安否が確認できない。
「無事……だよな?」
心配いらない。皐月だって四星って呼ばれる程強いんだ! 自分にそう言い聞かせる。そして……ようやく、視界が開ける。
「!?」
「……こんなもの、かな」
そこには全く無傷の皐月が光の剣に寄りかかっている。そして切り刻まれ無惨に積み上がっているのが先程の石像のようだ。とりあえずホッとした。俺は皐月に駆け寄る。
「皐月っ! 無事か!?」
「うん。心配してくれてありがとう……さて、行きましょう?」
「ああ!」
門番? を破った俺たちは勢いそのままに塔へと突入した。
わりと20-2
俺と皐月は塔の中を進む。その間にも石像は現れ、その都度皐月は光の剣で倒している。
「それにしても……何なんだこいつら?」
「おそらく地属性の力で精製したゴーレムだと思う。安田の仕業と見て間違いないかな」
「地属性?」
「うん。私たち四星の力には属性があってそれに基づいた戦い方をするの、地属性だと物質精製に特化しているから主にこういったゴーレムとかを使役して戦うのがセオリーかな……キリがないから、厄介な相手ね」
なるほど……だから接近戦を嫌って皐月と距離をとってたのか……。でも皐月も凄い。さっきから次々襲い掛かるゴーレムをまるで紙切れの様に切り裂いている。
「でも、正直私としては戦いやすい。光属性は一撃自体が軽いからバッテリー消費も少ないし」
「そっか、なら案外楽に頂上まで行けるかもな」
「だと……いいな」
光の刃を振り上げ、ゴーレムを真っ二つに、切り裂きながら……皐月は微妙な表情を浮かべる。
そして石畳の塔内を突き進み、突き当たりの螺旋階段を登って行く。すると……。
「うわっ!?」
突然足元から凄まじい揺れが発生、完全に体制を崩した。目を瞑り衝撃に備える。……ん? 何もない? それに……背中に柔らかい感触が……。
「恭二、大丈夫?」
「皐月……もしかして飛んでる?」
「うん」
見上げてみると、光の翼を広げ俺を抱き抱えながら飛ぶ皐月。……便利だなあバッテリー、そういや桜花も飛んでたっけ。
「気に入った? ……空飛ぶの……」
「ああ。皐月のおっぱいが当たって気持ちいいし」
「……えっち」
……でも実際、飛びながらカーブを曲がって行くのは心地いいなあ。
そのまま地震階段を突破、二階へと辿り着いた。
「皐月……重くなかったか?」
「ううん? 恭二痩せてるから」
辿り着いた先は……大広間だった。そして……。
ゴゴゴオオオオオオッ!!!
「「!?」」
そこには先程のゴーレムが所狭しと立ち並んでいる。その数……ざっと五十はいる。マジかよ……。
「皐月……これ……」
「いくらなんでも、数が多過ぎる……」
ゴーレムの大群は俺たちに気付くや否や、一斉に襲い掛かって来た。ヤバいぞこりゃ……一体ずつ戦っても、向こうの攻撃を避け切れない……。くそ……どうすりゃあ……。
「恭二! 後ろに走って、早く!」
「あ、ああっ!」
俺はゴーレムから逃れるべく全力で逃げる。大群は今にも皐月に襲い掛かる……くそ!
皐月は一旦剣を仕舞い……刀を鞘から抜く様な構えをしている。一度にあんな来れるのか!? 思わずえふに叫ぶ。
おいっ! 皐月が危ないんだ、だから……。
……まあ、見ていろ。
呑気に構えるえふ。
その瞬間……ピカアアアアアーンッ!!! と、皐月から凄まじい光が解き放たれ、その光が皐月の構える居合に集約……。
「ファンタスティック! ライトオオーッ!!」
振り切った。
「うわああっ!?」
暴風が吹き荒れ吹き飛ばされそうになるのを必死に堪える。加えてまるで太陽が落ちて来たかのような閃光に目を開けることが出来ない。
ウガガガガガアアアアアアァァァァ……。消えいる様なゴーレムの呻きだけ、捉える事が出来た。
「……はあ、はあ……」
ようやく視界が回復した時、皐月はその場に蹲っていた。慌てて駆け寄る。
「皐月! 大丈夫かっ!?」
「うん……ちょっと……無理、しちゃった……」
そして、気付く。俺たちの前に立ちはだかっていたゴーレムの大群……今はその跡形すら、消し飛んでいる事に。凄過ぎる……。
改めて思い知った、エリザベス春星……浜中皐月の実力を。




