表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わりとどうでもいい地球侵略。  作者: もじ
三章ーわりとどうでもいい宝救出戦線ー
21/41

わりとどうでもいい潜入

わりと19-1


 翌日、俺たちは今夜の決戦、さらに昨日の事もあり……よそよそしいながらも、出来る限りいつも通りにしようと務めた。

 可能な限り皐月の勉強を見て、裏皐月にバッテリーを送り、えふから脳内講義を受け……喧嘩するじぇい、えふを叱る。そんな今日まで過ごしたものと変わり映えのしない……春休みの一日を終えた。


 そして……今やすっかり静寂に包まれた闇夜。皐月と二人、上山女子までやって来た。門の前にして……どこか異様な雰囲気に包まれている。


「何だよこれ……」


「学園全体がガーデン下みたい。気を付けないと……」


 皐月と二人、深呼吸する。ビビっても仕方ない。そうだ。


「皐月」

「恭二」


 お互い呼び合う。怖い、逃げ出したい……そんな気持ちを振り払う為。そして。


「「行こうっ!」」


 そう声を張り上げ、皐月と二人その禍々しい結界の中に突入する。


 俺以外の地球人には全く関係の無い話だけど……エリザベス、ヴィクトリアの命運を賭けた一大決戦が、ここ上山女子で行なわれようとしている。

 そして……俺たちにとっての、長い長い一日が始まった。





わりと19-2


 皐月と二人駆け込んだ上山女子敷地内。重苦しい雰囲気と赤褐色に歪み切った空間……行った事ないけど、地獄ってこんなところかなあと思う。


「全く、悪趣味だな……」


「うん……」


 お花見の時の記憶を頼りに、とりあえず校舎を目指して進んで行く。しかし……中々記憶にある建物に辿り着かない。


「皐月……何かおかしくないか?」


「私もそう思う……上山女子ってこんなに広かったかな……」


 歩みを止め、冷静に辺りを見渡してみる。そして……気付いた。


「……明らかに、前とは違う。今は校舎もないんだ」


「こんなこと……出来るの?」


 皐月も頭を抱えているようだ。でも……これじゃあどこに向かえば良いやら……。



「お困りのようですねえ」


「「!?」」


 背後から声がして、皐月と二人慌てて振り向く。そこには細身ながら長身の男、気味の悪い笑みを浮かべながらこちらを伺っている。


「如何なさいましたあ? もしかしてえ……道にでも迷われてえ?」


 嫌味ったらしく聞こえるのは……こいつの放つ湿っぽい笑みのせいだろうか? 生理的に受け付けない感じの……。

 まあそれはいい。スーツ姿だがこんなとこを彷徨いている、一般教員なわけない。


「……宝を何処へやったの?」


 俺より先に、皐月が男にそう尋ねた。それに対し男は「あー、そんな事」という風にポンと手を打った。いちいち気持ち悪いなあ。


「宝嬢でしたらあ……彼方に御座いますう、建物の最上階でえ御預かりしてますよお。ちなみにい……僕の自信作でしてねえ、あの塔……気に入って頂きましたかあ?」


 男の指差す先に……黄土色の建物が、まるで天まで届くかのような高さで聳えている。なんだありゃ……。

 皐月は男を睨み付けつつ、こう言い放つ。


「早く宝を解放しなさい。さもないと……今この場で、殺すよ?」


 それに対し……男は降参ポーズをしつつ、皐月を宥めにかかる。


「まあまあ、待って下さいよお。この至近距離でアナタに睨まれたらあ、僕なんて一溜まりもないですよお」


「じゃあっ!?」


 皐月が男に迫ろうとする、もピョンと後ろに跳ね飛び……距離を取られる。


「……話を聞きなさいなあ。それに……口上くらいさせてくれてもお、罰は当たらないでしょう?」


「……わかった、聞いてあげる」


「皐月、もしかしてここで……」


 戦うのか? 俺のその言葉を遮り……男は口上? を楽しそうに述べ始める。



「僕はあ、ヴィクトリアが夏星……横山(よこやま)安田(やすだ)と申しますう。ではあ……以後お見知り置きをっ!」


 言うが先か、ぴょおおーん! っと跳ね歪んだ闇の中へ。……カエルかよ。


「くっ! 逃がすかっ……」


 皐月が飛び掛るのも虚しく、男改め安田は俺たちの視界から消え失せた。





わりと19-3


 安田が飛び去ってしまった事により、俺たちは敵の本陣に向かう事を余儀無くされた。

 ただヒントを得た様な気もする。


「でも安田がこの空間と塔を作り出したってことは、直接戦う奴じゃないのかもな」


 塔を目指しながら皐月に確認してみる。実際そうなら……この環境さえ苦にしなければ、四星は最高でも残り三人……あるいはって感じする。しかし……。


「どうかな……仮にも四星だし、ただ舞台を用意するだけっていうのは、考えにくいと思う」


 皐月は冷静に分析している。確かに……楽観視しても仕方ないか。


「……見えてきた」


 皐月の指差す先、塔の根元辺りが見えて来た。中に宝塚が囚われている。……つまり。


「ヴィクトリア勢が、待ち構えてる……」


 ふと呟く。何だろう? この感覚……漫画やゲームの世界なら、この上なくワクワクするんだろうけど……。

 正直、生きた心地がしない。


「……恭二、大丈夫?」


 入り口の前に辿り着いた時、立ち止まった皐月がそう尋ねてくる。……顔に出てたんだろうな、情けない。


「ああ! ……すまん、心配させちまって……」


「ううん……恭二はこういう世界で生きてきたわけじゃないから。私こそ……巻き込んでしまって……」


 俯く皐月を宥める。


「何言ってんだ、俺は……お前を守る為自ら来たんだ。そんなこと言うなよ」


「うん……ありがとう」


「よしっ!」


 気持ちを切り替え、秋華さんや安田の待つ塔の門に向き直る。さて……やったるか!


「あの……恭二に、お願いがあるの……」


「ん?」


 皐月が上目遣いに此方を見つめる。


「こんな時に不謹慎だけど……キス、して欲しいな……」


「!?」


 一瞬、戸惑う。でもまあ……それもありかなと、すぐに了承する。


「……ああ、昨日できなかったしな」


「嬉しい……」

「じゃあ、早速だけど……」


 皐月の両肩を抱き。

 少し屈んで、皐月の高さに合わせ。


 その柔らかな唇に触れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ