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機械仕掛けの情報屋 〜異世界の大好きなお師匠様〜  作者: ビオラン
お師匠さまの情報を探しに

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躊躇なく

「あの、落ち着いたと思われますのでもう一度お聞きしますね。………竜の話は思い出してくださったのでしょうか?」


「竜……?」


 と、ドミニクが聞き返しました。

 するとどうでしょうか。


 案の定、すぐに「うっ」と言いながらしゃがみこんでしまいました。


「どうしました?!」


 私は心配して、再び顔を覗き込みました。


 いえ、心配しているふりが正しいのかもしれません。


 わざとらしくはなりますが、私はドミニクを心配するそぶりをしました。


 すると何も知らないドミニクはこう答えます。

「せっかく落ち着いたのに、また頭痛が出てきたんだ」


 この言葉を聞いて、私はレイバーと目くばせをしました。レイバーがうなずきます。


 ーーやっぱり。


 こんなにも分かりやすく症状が出てきてくれるなんて、良心の呵責に苛まれた私としては、やって正解でした。


 これは……頭痛の理由が確定しましたね。

 ドミニク隊長の頭痛は、「竜」の記憶が原因です。


 私はもしやと思って、あえて「竜」の話題に触れてみました。

 もし痛がるようであれば、当たりです。

 そう思って試したところ、見事に当たりました。


 心の中で申し訳ありませんと思いながら、私はドミニクを心配しました。


 多分すべてを察しているであろうレイバーはこのやり取りをみて、心なしか口の端が少しだけ上がっているように見えますが、見なかったことにします。試すようなことをしてしまった罪悪感などないのでしょうか。


 しばらくして、ドミニク隊長の調子が落ち着いたので、私は今度こそ竜に触れないように気を付けて話はじめました。


「ちょっと、調子がよろしくなさそうなので、あちらで休んでいかれては? 安心してください。私たちは急に暴れたりなど、悪いことは致しません。それに、今日は隣領の方々も武器を持ってきたりはしていいないでしょう?」


 すると、ドミニクは申し訳なさそうに「まあ、確かにそうですね。あちらで座ってあなた達を見ておくことにしましょう」と言うと、少しフラフラとした様子で、岩陰の方にドカッと座りました。



 私はちらりとドミニク隊長の様子を一瞥すると、少し皆さんの輪の中に入って、先ほどまでより少し声のトーンを落としつつ話を再開させました。


「皆さん、今のやり取りはみていらっしゃいましたよね?」


 すると、アレンやほかの2人、レイバーが頷きました。

「なんとなく察していたかと思いますが、ドミニク隊長はどうやら”竜”だけ忘れているようですね」

「まさか、”竜”を思いだせないどころか、言葉を聞くだけで頭痛がするなんて。誰が想像できるだろうか……」

 アレンが呟きました。


「ええ。これは少し不可解です。”竜”のことだけ忘れるなんて、荒唐無稽な話ではありますが、実際に起こっている上に、今ここに現場を見た証人がこれだけいるのですから、無視できない事実です」

「はい、それに竜の存在を忘れられてしまったら、俺たちが何のために危険を冒してこんな境界まで来たのか、証明できなくなってしまいます。 あなた達の領地の上層部にきちんと話が行っているかも怪しくなってきましたね」

「それは、本当に。現段階では私の知る方はご存じではありませんでしたので、どこかで話が止まっている可能性がありそうです」

「なんだって?! 上層部はまだ知らないのか?! ではあの隊長が止めているのですか?」

「いえ、それはなさそうです。だって、以前会った際には一応すべて話したと言ってはいました。それに、あの方のお人柄では、嘘や演技は……」

 と、ここまで言って、少し失礼かなと思って私は口をつぐみました。


 アレンが納得いかないと言いたげに、大きくため息をつきました。


「なんてことだ。じゃあ、俺たちの行動の真意は伝わってないということか……」

「今の段階では……。だからこそ、どこで止まっているのか突き止める必要がありそうです」


「はは……。不可解な隊長の様子も、すべてが怪しく見えてしまうよ」

 アレンは力なく笑いました。私も自分が不甲斐なくて、「それはごもっともです。」としか返事できませんでした。



 ただ、どんよりとした空気の中、状況が一変する出来事がありました。


「ああ、なんて今日はついてないんだろう。竜について不思議なことがもう一つもあるなんて。ねえ、レイバーさん。だってさっきも……」

 とまでアレンが言ったところで、レイバーが急にアレンの口元を慌てたように押さえたのです。


 急に会話を制されたアレンは、「んぐっ?」と声が漏れて、驚いて目を見開きました。


 当のレイバーはなぜか、やめろと言わんばかりにアレンを凝視していました。


「レイバー……さん?」


 何があったのでしょうか?


 私は心配して、レイバーの顔を覗き込みました。

 すると、レイバーは私と目が合うと、気まずそうに眼を逸らしました。


 これは何か、隠し事があるようです。


 私はアレンに「もしかしてレイバーさんだけ知ってる何かあるのですか?」と聞きました。


 アレンはレイバーの様子を見て、目が一瞬泳ぎましたが、こくんとうなずきました。


「それは私が聞いても問題ない話ですか?」

 アレンは再びこくんとうなずきました。でも、レイバーは少し不機嫌そうに「だめだ」と言いました。


「何をそんなに隠す必要があるのですか? そんなに重要かつ秘密にしなければならない話ですか?」


 すると、アレンの横にいたもう隣領の一人がさらっと「うちの領で起こった、ただの出来事を言っただけなので……そこまでレイバーさんにとって大事な話だと思えないのですが……」と言いました。



「ただの出来事?」


 私はきょとんとしてしまいました。彼らの様子から、なんだかレイバーが真剣に話をさえぎっているのだけが妙な感じに見えました。


 私はレイバーに詰め寄ります。


「レイバーさん、あれだけ私には秘密をするなと言いながら、あなたは内緒にしておくのですか? 別に話を聞くくらいいいではありませんか。 何か大切な話でもあったのですか?」


 アレンの口をふさいでいたレイバーの手を私は奪い取り、二人の間に入りました。

 思いっきり真剣な眼差しで、レイバーに目を合わせます。


 レイバーはぎょっとしましたが、私に真剣に見つめられて段々と気まずくなってきたのか、ぐっと目をつむると大きくため息をつきました。


「ああー、もうわかったよ。別にいいよ聞いてくれて」


 レイバーは少し悔しそうに、その場に座り込みました。

 これは根競べに勝ったようです。


 少しうれしくなって、思わず「やった!」と言ってしまいました。決して、”やった”などと喜べるような状況や話題ではなさそうなのが懸念ですがね。


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