サラリーマン、名MCとして活躍する。
貰ったマイクのおかげでまた喉を傷めることもなく乗り切れた鉱石祭7日目の夕方、ハマダ魔道具工房のブースには主催者のイナリア商会からの訪問があった。
いや、イナリア商会からと言うか、開会式の時に見たイナリア商会長のリグリアさんだった。
「これはこれは。よくお出で下さいました。何かありましたかな?」
久々に見た外向きモードのガストンさんが真っ先に声を掛けた。
ちなみに俺はこのガストンさんを「きれいなガストン」と呼んでいる。心の中で。
思えば、俺が異世界で始めて会った人もきれいなガストンだった。
「こちらのイベントが大変盛況だと聞きまして。こちらの商会員達が是非ともウチのイベントをひとつやってもらおうと言うのでお願いに参った次第です。」
今気付いたが、リグリアさんが連れている2人には見覚えがある。
初日に真っ先に来たおじいさんと、集計レースに暗算で参加したおっさんじゃないか。2人ともイナリア商会員だったのか。
俺はリグリアさんからイベントの説明を受けた訳だが…。
「えぇ、ホントにやるんですかコレ…。そりゃあ賞品を出すのはイナリア商会なので構いませんけど…。」
「まあ、当商会の宣伝と鉱石祭を盛り上げるのが目的ですね。ヤマダさんの報酬は20万クロンでいかがでしょう。」
「私も職人の端くれ。このヤマダ、鉱石祭を盛り上げる一助となって見せましょう。」
わーい、臨時収入大好きー。
そしてハマダ魔道具工房が展示側としては最終日となる鉱石祭8日目。
集計レースの決勝が終わった後に件のイベントは開催された。
「決勝戦お疲れ様でした。上位3名の方にはスミナ商会より当工房の魔道具ジテンが贈られます。皆様、暖かい拍手でご祝福下さい。さて、突然ですがここでお知らせです。これからイナリア商会の提供でもうひとつイベントが開催されますので、是非このまま御覧下さい。」
決勝戦が終わり、帰ろうとしていた人達がざわざわとし始めた。
「今回のイベント、それはイナリア商会集計部門2名による集計レース頂上決戦でございます!1人目の参加者はこちら、当商会の魔道具であるレジを使わせたら右に出る者は居ないと豪語するザパンさん。2人目の参加者はこちら、計算には魔道具など要らない、頭だけでやるのが一番早いと言うジェガさんです。観客の皆様にはどちらの方が計算が早いのか予想して頂きます。正解した方には…なんと全員に水青晶をイナリア商会よりプレゼントです!」
今までポカンとした顔で聞いていた観客が熱狂の渦に包まれる。
それもそのはず。水青晶は相場で約2万コルと決して高い物ではないが、二分の一の予想を当てるだけで貰えるのだ。
「ザパンさんの方が早いと思う方は青の札を、ジェガさんの方が早いと思う方は赤い札をお受け取り下さい。正解した方はそちらの札が賞品と交換になりますので無くさずお持ち下さい。」
そして始まったレースはそれはもう盛り上がった。賞品のせいもあるだろうが、まあ2人の早い事早い事。
観客からは「うおおお!?なんだアレ、早ぇ!」「イナリア商会員凄すぎだろ!」とかの声が上がった。
勝者はジェガさんに終わり、レジのユーザーであるザパンさんが一歩及ばなかったのは残念ではある。
だが、100人近くに膨れ上がっていた観客から未だに上がる興奮の声を聞けば、イベントとしては成功と言えるだろう。
賞品を配りブースを閉めた後にリグリアさんからお礼と共に報酬を受け取り、MCヤマダの仕事は幕を閉じたのだった。




