第六十九話
現在、冒険者ギルドの広場は小さなお祭り騒ぎのような活気になっている。
クイーンアント3体に2桁以上のストーンアントの残骸の山。救出クエストに集められた冒険者たちもゾロゾロと集まって来ているため収集がつきそうにない。
早急にこの場を収めて、彼を守らなければならない。
「チーフはいますか?」
喧騒の中、冒険者ギルドの役職持ちを探す。
「副ギルド長、こっちです」
チーフは手を振る。
「黒紫色のクイーンアントは素材にしてギルドで保管、それ以外はギルドで査定して買い取り」
魔女の代表の顔を見た上で
「救出クエストはこの場を持って解散。参加者に対してのクエストキャンセル代については、明日以降冒険者ギルドを仲介して代表と取り決め決定します。それで宜しいですね?」
魔女の代表は頷く。
「また本日のみ隣りの酒場を貸し切り、救出クエスト参加者の慰労会を実施してください。費用はギルドと魔女の代表で折半して持ちます」
その言葉で広場に集まった冒険者たちの歓声が上がる。ただで飲み食いができれば集まった冒険者たちからの苦情は来ないだろう。冒険者は単純な生き物である。
「クイーンアントのここ3年間の討伐依頼について、監査対象として調査を実施します。チーフが中心になってチームを組んで調査を早急に行ってください。分かり次第すぐに報告するように」
「あと私はいまから1週間有給休暇を使うため、何かあればバード(魔法伝書鳩)を飛ばすように」
「明日以降で副ギルド長の雑誌取材、その後はギルド支部会の会合予定もありますが・・・」
1週間急に休むと言われて、チーフの焦り顔が見れる。
「全てキャンセルで」
副ギルド長の有無を言わせない圧に押されて、チーフは頷きしかできない。
「ちょっと待ちな。その坊主はどうするつもりだい?娘の命を救ってくれた恩人だ。うちで預からせて貰いたいんだが」
魔女の代表の横にいた重戦士が口を出してくる。
「スノウ様は私が保護します。何か?」
普段出さない副ギルド長の冷徹で静かな声に、周りの冒険者たちの喧騒も収まり注目が集まる。
「保護するなら魔女の国が安全だろう。悪い話じゃ無いと思うが?」
重戦士が何を考えているか分からないが、引く気がないようだ。
「スノウ様は私に直接守れと言われました。お引き取りを」
副ギルド長VS重戦士・・・静かに火花を散らしている。
「仕方ないねえ。力ずくでそのお宝を渡して貰おうか」
どこかの山賊?盗賊?が言いそうな言葉を出してくる。
理知的な魔女の国の中でもかなり異質な存在なのだろう。
「人さらいは犯罪奴隷に落とされますが?」
「大丈夫だ。恋愛のもつれならノーカンだ」
いやいやノーカンじゃない。周りの冒険者たちからも突っ込みが来そうだ。
「お母さん、それも誘拐だから」
アイシャ嬢は至極まともだった。
「ふう、付き合いきれません。」
スノウ本人をお姫様抱っこのように持ち上げる。逆お姫様抱っこだが、副ギルド長であるローレライがやると絵になってしまう。
聖母のような眼差しでスノウ本人を見ているため、一部の冒険者から尊いと声が上がってしまう。
「副ギルド長ローレライ・エルフィンは、スノウ様の直接依頼により彼を保護します。異論は認めぬ」
そう宣言して、空間魔法でその場から消えてしまった。
この出来事で雑誌月刊冒険者ギルド臨時版のタイトル=ご乱心?純愛?の副ギルド長が増刷されることになる。
皆さんこんにちは。冬の季節が本格化しています。凄く寒いです。この間は-12℃とかありました。
北海道に住んでいてウインタースポーツを一切しないので、住んでいる意味あるのかと突っ込まれそうですが、食べ物が美味しくて住んでいます。
また2週間後に投稿予定です。よろしくお願いします。




