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第57話 運命の相手

「参ったな。短時間では魔力の制御が上手くできない」


魔力念糸による繭のイメージが強すぎて、体を覆っている魔力を広げる単純な作業が逆に難しくてできない。

魔力念糸で全身をぐるぐる巻く方が簡単にできてしまう。

魔力制御の問題は、自分以外の存在を異物扱いとして押し出してしまうこと。

自分は義姉のような直感で理解できる天才タイプではない。

何度も何度も反復して体で覚えさせる、努力タイプと言った方が良いだろう。

時間をかけて魔力制御の熟練度をあげれば一番良いのだろうが、いまはそれが許されない。

いつ精霊王から命令された上級精霊が来るかわからないからだ。


「時間がないんですよね?ソエル様に触れて貰えますか?」


そう言われて頭を撫でるように手で触れる。

一瞬、ソエルの顔がにやけたようにも見えた。


「きっとこれなら大丈夫そうですね。それじゃあ、えいっ」


そう言ってアイシャは自分に抱きついている。

うん??


「このまま魔力を広げてみてください」


アイシャに抱きつかれ、右手は精霊の頭に触れた状態。

ソエルから異様なオーラを手で感じている。

明らかに怒ってる。

魔力を広げるとソエルとアイシャは押し出されない。


「さっきと違って何で押し出されないわけ?」


魔女に尋ねてみる。


「たぶんですが、雷龍王の加護アンチマジックフィールドが反応しないからだと思います。」


アイシャには思い当たることがあった。

直接触れていれば回復魔法をかけることができた。

直接触ることに加えて殺意や敵意がなければ加護は反応しないと。

精霊の顔を見れば怒っていることは一目瞭然だが、いまは非常事態。

そう非常事態だからと言い聞かせて、抱きついた異性の感触を肌で感じる。

魔女はある年代から男性との関わりを制限される。

未婚の魔女は魔力の籠もったベールで顔を隠さなければならない。

魔女としての演出面も強いが、ベールには貞操を守るために現魔女の代表によるエンチャントが付与されていた。

異性に触れると一緒に電撃が走り、痺れるといったエンチャントが発動する。

魔女自体が少ない。

その中でも直系一族は、さらに数えるほどしか存在しない。

魔女の一族が未来永劫、繁栄するために、一定の能力を持つ伴侶に出会わなければエンチャントは解除されない、呪いに近い仕様だった。

いまのアイシャにはベールが無い。

自分が起きた時にはすでにベールは無かった。

アイシャは気付いてしまった。

抱きついている人物こそ――

自分の運命の相手であることを。


57話です

皆さんこんばんは。北海道は暑い日が続いています。

夏バテ、水分補給に気をつけましょう。

小説の内容は、今後どうなるって思って頂けるように書いてます。

次回は金曜日予定です。よろしくお願いします。

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