第55話 魔女のアイシャ
自分の中にいる神に、クイーンアントの魔石を吸収させる。
しばらくすると祈る姿勢のソエルを中心に立体魔方陣が形成されていく。
今まで見たことがない文字が浮かぶ魔方陣。
魔方陣の光で空気が震える感じがする。
精霊の進化コードを解除するため必要な儀式なのだろう。
外から見ていると呪いの解呪の雰囲気に近い。
さて自分は神に頼まれた魔力の空間、壁を作らなければならない。
「う~ん、どうしたものか」
邪魔が入らないような空間、壁を作る……意外と難しい。
蟻の魔王と戦った時の魔力の繭のイメージで試す。
自分とソエル、そして倒れている魔女を魔力念糸の糸で包む。
魔力の繭の中では、ソエルと魔女の息づかいがはっきりとわかる。
「そろそろ起きてるよね?ずっと狸寝って辛くない?」
明らかに寝たふりをしている魔女に話しかける。
「すっすいません。起きるタイミングがわからなくて」
魔女は起き上がると同時に土下座になる。
言葉使いも丁寧、きっと育ちが良いのだろう。
「土下座はいいから、早く起きて起きて」
ソエルがこの場面を見たらきっといじるだろう。
女の子に土下座させて、何をさせたいのかしら?とか言われそうな気がする。
立ち上がった魔女はだいたい同じくらいの年齢くらいに見える。
クイーンアント、魔王との連戦で自分と同じようにボロボロの姿だ。
魔女の胸元を見てしまい、即時ダメージを受けてしまう。
「グフっ」
魔女は気付いていないが、左胸がモロ見えなのだ。
「鼻血でてますが、大丈夫ですか?」
このまま近寄られるとまずい。
空間収納から自分の着替え用のパーカーを出して渡す。
「見えてるから、隠した方が良いと思う」
自分が眼を背けていることで、魔女自身がどういう状態なのか把握したようだ。
「wwwwwwww」
何の言語かわからない悲鳴をあげる。
自分は眼福ダメージ……ありがとうございましたと心で感謝しておこう。
「見ましたよね?」
この純情そうなタイプは、実はたちが悪い。
正直に見ましたと言うと、責任を取ってくださいのコンボが来る可能性がある。
はっきり言うが、胸を見ただけで責任を取る男は世の中にはいない。
そういえばエリクサーは直接口づけして飲ませていた。
人命救助だから……魔女に話すのやめておこう。
「とりあえず無事で良かった」
聞こえなかったふりをして、魔女の意識を逸らしたい。
「ポーターのスノウだ。今回は本当に運が良かった」
ストーンアントの一斉駆除のクエストが、魔女の救出、魔王討伐までやることになるとは思っていなかった。
「私はアイシャ・ブラックフォレストです。」
名前を聞いて驚いてしまう。
「ブラックフォレストってことは、魔女の直系の一族?」
そう尋ねると、魔女は頷く。
一般的な魔女に家名はない。
二つ名、称号として炎の魔女、氷の魔女として有名な魔女は存在する。
例外はブラックフォレストの一族。
雷龍王が同盟相手として認めた魔女一族。
言い方を変えれば、一国の王族と言っても過言ではない。
エリクサーをあの時迷わず使って良かった。
もしこの魔女が死んでいたらかなり大事になっていた可能性がある。
「そもそも何で一人でこの場所にいるわけ?」
35層のBossエリアに一人でいることはまずあり得ない。
自殺志願者ならあり得るかもしれないが、パーティが全滅したのか?それとも遭難したのか?
「実は……」
呪いを受けてしまった仲間の帰還を優先して、脱出スクロールを使って遭難したという。
じゃじゃ馬というかお転婆というか。
責任感が強い反面、自己犠牲が強すぎると感じてしまう。
「呪いを受けた仲間と付き添いの一人だけ脱出スクロールを使えば、ここまで無理しなくて良かったんじゃない?」
ダンジョンでの遭難は死に繋がる。
命が無くなってもおかしくないと、苦言を呈しておく。
反省している顔を見ていると、つい頭を撫でてしまう。
「あっ……つい癖で申し訳ない」
ソエルにやっていることを無意識にしてしまった。
これはかなり恥ずかしい。
自分の顔が真っ赤になる感じがするがやってしまったことは仕方ない。
この恥ずかしい空気感を何とかしたいのだが。
55話です。
皆さんこんにちは。今日はパソコン作業は7時間近くになってます。
仕事の関係でパワーポイントでスライドを作っていました。
1時間の講話のために7時間……しんどいですね(笑)。
不定期の投稿です。次回は月曜日の予定となります。
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