第五十話
「やっぱりドールマスターなんですね。目の前で見るまではオブシディアンは前衛職の重戦士と思っていました」
世間一般ではドールマスターは今みたいに自分以外の何かを操る職業と認知されている。自分を守ってくれる存在がいないと戦闘では役に立たない魔力燃費も悪い最弱な職業であると。
パーティを組んでも良くて荷物運び、壁役・・・最悪囮役の扱い。畑仕事や林業、工事現場の運搬専用の職業と揶揄されることもある。
職業優遇のこの世界に置いてドールマスターは底辺の中の底辺。人物像をまともに見ないこの世界に反抗したかったのかもしれない。
「ドールマスターが不遇職じゃないことを証明したいのかもしれない」
独り言のように呟いてしまっていたようだ。
「ごめんなさい。不愉快にさせるつもりではなくて、本当にごめんなさい」
申し訳なさそうに謝る魔女の顔を見ると少し表情に出てしまったようだ。
レギオンを解除しても何故か1体だけ残っていて近付いてくる。
テーブルを見回し、一呼吸を置いてから再度珈琲を注ぎ始める。あまりにも自然な動きなので魔女も気が付いていない。自分が動かしていると思っているだろう。
表現するなら全身鎧を着た執事がそこにいる。珈琲を注ぎ終わった後に姿を消してしまった。
「細かい動きも出来るんですね。本物の執事みたいでしたよ」
うん・・・執事の動きでしたね。何故勝手に動くのか?幽霊にでも憑依されているのかと考えてしまうが敵意は全くなく、時折世話をして消えてしまう存在が確かにいる。今度時間があったら調べてみよう。
「だいぶ落ち着きましたかね?」
さっきよりも空間のゆがみの頻度は少なくなっているが、光に集まってくる虫のように正直うざったくなってきている。
「神さま?そろそろコードの解除は終わらない?」
『・・・もう少しで終わる。次世代の精霊王は凄いことになりそうよ』
凄いこと?いまお姫様抱っこしている美人な精霊にどんな凄いことが起きるのか・・・。
「今度は上ですかね?今までと違ってゆがみの数が一番多いですね」
球状の空間の真上にはさっきの様子見と違って明らかな意志を感じる。
「痺れを切らして本隊が一気に奪いに来た感じかな。お茶会はまた今度に」
2週間ぶりの投稿です。本州では桜のシーズンだと思いますが、北海道はまだ雪が降ったりやんだりしています。外気温の温度差で偏頭痛がいまだに落ち着かないです。
4月からは新しい月になります。新しい環境や生活に慣れるまで大変だと思いますが、この小説が息抜きになりますように。