第42話 魔王の変化
今日の私は世界で一番運が悪いのかもしれない。
皇帝クラスとの戦いで致命傷を負いかけた。
そして魔王との戦いで大事な人が傷ついた……
「最悪すぎる、この虫ケラが」
この魔王は確実に殺す。
大事な人を傷つけた虫ケラに慈悲など与えるつもりはない。
小さな精霊姿であれば、魔力を抑える必要があった。
いまは違う。
本来のこの姿であれば、完全に魔法を行使できる。
問題は長引くと、精霊王に見つかる可能性がある。
強制的に精霊界に戻されるのは困る。
短期戦しかない。
魔女の攻撃で右大腿部を失い悶えている魔王に、全方向から黒い槍を何度も串刺しにしていく。
あっという間に黒い槍が刺さった球体が出来上がる。
魔王の動きは完全に止まった。
だが油断はしない。
相手はスノウを傷つけた魔王なのだから。
魔女のバフがかかった状態だったため、いつもより少し威力がでている気がする。
あの魔女も少しは役立つみたい。
「死んでないよね?もっと痛みを感じさせてあげるから」
直後、黒い球体に異変が起きる。
黒い球体の一部が凹んだ。
何かを砕き、咀嚼するような音が聞こえる。
「何?何をしているの?」
魔王は、生まれてから何も食べていなかった。
飢えていた。
目の前に美味しそうな獲物がいるのに食べられない。
食べようとすると抵抗する。
近づくたびに全身を傷つけられる。
体の自由がきかず、何かに締め上げられたときは本能的に“死”を感じた。
その獲物は途中から弱くなり、一撃で抵抗しなくなった。
やっと目の前の肉に有りつける。
やっと食べれる……
何でもいい、早く口に入れたい。
獲物に近づいた瞬間、右足に衝撃が走り吹き飛ばされた。
右足が無くなり痛みで悶えていると、今度は黒い何かに全身を刺される。
身体が痛い。
息が出来ない、苦しい。
腹が減った。
空腹は限界に来ていた。
口に入れれば何でも良かった。
目の前の黒い何かを食べた。
黒い槍は純度の高い魔力そのもの。
魔王はそれを喰らった。
その結果……
「グギャアアア」
魔王の咆哮とともに変化が起きる。
吸収のスキルが発動したのだ。
金色の体表面に刺さっていた黒い槍が、魔王の体に取り込まれていく。
魔王の体は再構築していく。
金色の蟻の魔王は、黒いトゲを身に纏った姿に変貌していた。
先ほど全身で受けた黒い槍を外殻で再現したのだ。
「そんなの反則でしょ?私の魔力をいま吸収したってこと?」
黒い槍を吸収し耐性を得ているかもしれない。
全身に黒いトゲを纏っている時点で、初級レベルの闇魔法は吸収していると考えられる。
「これはまずい、長引けばどんどん吸収されるかも」
魔法が使えるアドバンテージが無くなってきているのだ。
魔法を使えば使うほど吸収されるかもしれない。
魔力が魔王の血肉になってしまうからだ。
やるなら確実に葬る一撃を考えないと……
スノウの治療が終わるまでの時間を稼がないと。
42話です。
皆さんこんばんは。北海道は暑くなってきました。
本州に比べたらまだ涼しいと思いますが、すでに夏バテしています。水分取りすぎですね。
7/9よりダイエット生活が始まります。健康診断までに-10kg減らす予定です。
痩せても継続できません(泣)。結局元に戻るの繰り返しです。
次回は水曜日予定となります。よろしくお願いします。




