第二十四話
冒険者の人生で魔王と戦う確率はどの位なのか?ほぼ0%に近いと考えられる。一般的な冒険者はCランクまで上がれば十分な報酬が貰えて、Bランク以上になるまでは様々な運要素があるかもしれない。
Aランク冒険者でも魔王と戦った冒険者はほとんどいないと思う。不完全な魔王かもしれないが、魔王と戦うことはある意味運がいいのか悪いのかわからない。
魔王を見るたびに頭痛が強くなっていく。頭の中で魔を滅せよと、魔石を捧げよと声が聞こえる。精神干渉の魔法を受けているのか?皇帝クラスと戦った時にはなかった声が微かに聞こえてくる。
いまはこの声のことよりも魔王をどうにかしないと。自分の魔力はほぼ空っぽな状態で数分も持たない。
相方の精霊と魔女っ子が戦線に復帰するまでの時間稼ぎと、ヘイトを買ってこの場所に止めておくことしかできない。
生まれたばかりの魔王は破壊の塊と言ってもいい。戦闘技術がなく本能のままに手足を振り回して襲いかかってくる。地面に当たれば陥没し、油断すれば口で噛みつこうとしてくる。目の前にいる人間は動く食料と思っているのかもしれない。きっと狩りをしているのだ。
いまは大人と子どもの戦いに近いだろう。戦闘経験値が違うことが唯一の救いで、タワーシールドで魔王の打撃を受け流して体勢が崩れた所にメイスの一撃を与えられている。
金色のアダマンタイトの体表面には斬撃がほぼ通らないが、メイスの打撃で中にダメージが少しでも入っていると思いたい。
自分の感覚が研ぎ澄まされていて魔王以外が気にならない。いま自分はゾーンに入っているのか?
次は右の手を振り回してくる、最小限で避けて腹部に膝蹴り。後頭部から首の辺りにそのまま肘鉄を食らわす。思った通りに動いてくれる。
このままなら・・・そう思っていると急に魔王の動きが速くなってくる。動きは読めているし見えているが、避けきれない。自分の体にかすり始めてきている。
魔王が戦闘することで成長してきている?
「あっ、やばっ」
咄嗟にタワーシールドを構えることができたが、一発で盾が粉砕される。追撃が来る前にもう一枚のタワーシールドを目の前に引き寄せていたはずが来るはずの盾が来ない。
そう魔王の動きが速くなったわけじゃない。自分の体が重く動かなくなったのだ。空っぽに近かった魔力が完全に切れてしまった。
左腕の一撃がくるのがわかるが、自分のいまの体勢が悪くて完全に避けきれない。
ロングソードとメイスを十字にして防御態勢を取り、当たる寸前に少しでもずらす。
当たった瞬間にわかる・・・衝撃と鈍痛で自分の体に何か異変が起きているのかが。
右腕の感覚がなく完全にいった。右腕自体がどうなっているのかわからない。
魔王はどこにいった?なぜ地面が目の前にある?
一瞬ソエルの声が聞こえたような気がしたが、何を言ったのかわからない。
周りが黒くなっていく・・・。体が動かない。意識が消えていく・・・。
何とか投稿に間に合いました。体調を崩していまして、風邪+花粉症です。
平日仕事をしているため、どうしても毎週投稿が難しいです。本当にすいません。
2週間に一度の投稿ですが継続しています。あと2ヶ月くらいで1年経つのかな。
時間は有限です。この作品を楽しみにされている方がいるだけでも幸せです。