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第16話 静かな制圧

見えない魔力の鎖は、跳びかかったブレードマンティスを空中で止める。


白銀の鎖が、もう一体のブレードマンティスを横からなぎ払う。


空中で拘束されたブレードマンティスの身体が、見えない鎖に締め上げられていく。


「ギィギィィィ」


断末魔の声と同時に身体がねじ切られ、頭部と胴体が離れる。


「何が起きているんだ」


冒険者の一人が、困惑した声で叫ぶ。


その間にも、白銀の鎖は次の獲物に伸びていた。


背後から放たれた白銀の鎖が、外殻を何度も貫く。

ブレードマンティスの動きが、完全に止まった。


残るは二体。


冒険者パーティも何とか持ち直し、ブレードマンティス一体を囲むように戦い始めた。


(あれじゃ倒せないわね)


(仕方ない)


魔力念糸でブレードマンティスの足を地面に張り付ける。

足を封じられたマンティスは、上半身だけで刃を振るう。

動きはかなり読みやすい。


残り一体が刃を振り回し、スノウに突撃する。


見えない鎖で拘束しようとするが、突如鎖が暴れた。

軌道が逸れて、近くの冒険者へ流れそうになる。


(まずい!?)


制御が、効かない。


咄嗟に白銀の鎖をぶつけ、無理やり噛み合わせる。


甲高い音。


二本の鎖が、互いに弾け合う。


その一瞬を逃さず横薙ぎの刃が、スノウの身体を捉えたように見えた。


だが、黒い鎧は軽々と刃を避ける。

流れるように、白銀のダガーが振り抜かれた。

マンティスの首が宙を舞う。


(ダガーが無かったら大変だったわね)


(親方には感謝だな)


冒険者パーティを見ると、マンティスの外殻に傷を付けているが致命傷までには至っていない。


独特な軌道の刃に、冒険者たちは対応しきれていない。


(根性無いわね)


(おまけだ)


魔力念糸でマンティスの動きを完全に止める。


「今よ!!」


ソエルが、冒険者パーティに攻撃を促す。


身動きの取れないマンティスに、一斉に攻撃を加え続ける。


ほどなくして。

マンティスの身体が地面に崩れ落ちる。


四人の冒険者は、息も絶え絶え、疲労困憊で座り込んだ。


「た、助かった……」


盾役の男が、倒れ込むように地面を背にする。


他の三人も、武器を下ろしたまま動けない。


ブレードマンティス五体。


Dランク位の冒険者には、明らかに荷が重かった。


「あんたたち、無茶しすぎ」


ソエルが呆れたように言う。


「数を見誤ったの?」


「いや……最初は二体だけの予定だった」


後衛の女が、苦い顔をする。


「途中で、数が増えて……」


「逃げようとしたら、囲まれたわけね」


図星だったのか、誰も否定しない。


沈黙。


その視線が、ゆっくりと黒い鎧へ集まる。


白銀の鎖とダガー。


見えない何か。


異様な強さ。


「あんた……Aランクか?」


若い剣士が、恐る恐る尋ねる。


スノウは短く頷くだけだった。


「やっぱり……」


小さく息を呑む。


「その鎖は、何なんだ?」


質問。


「企業秘密よ」


ソエルが先に答える。


「全部説明したら、面白くないでしょ?」


悪戯っぽく笑う。


冒険者たちは顔を見合わせる。


黒い鎧は何も喋らない。

だが、不思議と威圧感もない。


「命の恩人だ。ありがとう」


盾役の男が、深く頭を下げる。


それに合わせるように、他の三人も頭を下げた。


スノウは少しだけ視線を逸らし、

「無理はするな」


短く、それだけ告げた。


ソエルが、マンティスを指さす。


「手間賃で二体くらい貰ってもいい?」


さらっと言う。


「えっ??」


四人は固まる。


「嫌なら別にいいけど」


「い、いや。むしろ足りないくらいだ」


慌てて首を振る。


ブレードマンティスの討伐難易度は高い。

素材の価値もおのずと高くなる。

命の恩人であるため、全部素材を持って行かれてもおかしくはない。


「じゃあ、決まりね」


ソエルは満足そうに笑う。


スノウは特に何も言わない。


白銀の鎖が、静かにマンティスの死体を引き寄せた。


四人の冒険者は、その光景を黙って見つめていた。


こんばんは。上手くタイミングが合って投稿できました。

次回は20日に投稿予定です。

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