炎の洞窟
魔王城の中、ある空間。
体を拘束され、身動きの取れないガルディスが、魔王とドラモスにより罰を受けていた。
電流を流されている。
ガルディスの悲鳴が響いた。
「ガルディス。我は言ったはずだぞ。つまらん感情を持たぬ事だと。だが、お前はシトラスにトドメを刺さなかった。それはお前とあの小僧が、血で繋がっているからだ」
「うう……」
「魔王様。この男は、このまま殺してしまった方がいいと思われます。でなければ、我々はこの男が話す秘密によって、不利に陥るでしょう」
「だが、スーリアはガルディスを信じている」
「スーリアも気づいているでしょう。もうこの男の心は、ここには無い事を。それに、スーリアもトーラもターラも、勇者達にやられました。ならばいっそのこと……」
「そうだな……」
魔王はモンスター達に、ガルディスへの電撃を止めるよう指示した。
「ハア、ハア……」
「ガルディス。わたしは最初から今の時代に勇者が二人生まれた事を知っていた。ゆえに、さらうのはどちらでも良かった。どちらかの力を、利用すればいいだけの事。お前が今、この城から出て行くと言うのなら……」
「!!」
魔王は、ガルディスの前髪を掴み、額に手を当てた。
「わたしの力を流し、お前の心を奪う。そして戦って来いガルディス。お前自ら、弟の命を奪うのだ」
魔王は力を込め、気を放出した。
ガルディスの中に、黒い闇が流れる。
「あああっ!」
「いくら紋章の力でも、抵抗は出来まい。あれだけ電撃で痛めつけたらな」
ドラモスは黙って見ている。
目の前が暗くなって来た。
ガルディスの頭の中に、あの時のティナとの約束が浮かぶ。
「ティナ、必ず戻って来るから! 約束だ!」
「ガルディス!」
あの時の彼女の涙を、はっきりと覚えている。
シトラスを、守ってくれた。
そうだ。俺はまだ、死ねない。
こんな所で。
しかし、魔王の力は、ますます強くなった。
(ティナ……、俺は……、お前を……)
フッと、意識が闇に吸い込まれた。
ガルディスが、そんな目にあっている事をまだ知らないシトラス達。
一斉に、洞窟の中に飛び込んだ彼ら。
炎が照らす穴の中、目覚めた。
「う、うん……」
「ご主人様」
「ルナン、無事? みんなは?」
シトラスは辺りを見回す。
大した怪我はしていない。
ロック、ティナ、ジェニファーも起きる。
「良かった、みんな……」
「皆さま、お怪我はなさそうですね。それにしても……」
奥に道が続いている。
シトラス達は上を見上げた。
日の光が洩れる、洞窟の入り口。
3m位はありそうだ。
あそこから落ちて、怪我が無いなんて。
聖霊が、守ってくれたのか?
「おい、シトラス」
「ああロック。とりあえず先に進もう。道があるみたいだから」
「ああ」
彼らは通路を進む。
真っ直ぐ進む道と、左に曲がる道の二つに分かれた。
まず直進する。
行き止まりだった。
特に何も無い。
引き返し、曲がる道を行く。
緩やかな上り坂で、大きくカーブしていた。
グルンと一周する。
真っ直ぐな一本道。
ためらわずに行ってみる。
長い吊り橋が掛かっていた。
吊り橋の下は炎の池。
落ちたらひとたまりも無いだろう。
「ご、ご主人様……」
「ルナン、怖い?」
「はい、少し怖いです」
「だったらさ、猫の姿になって一気に橋を渡ったら? それなら、恐怖も減るかも」
と、ティナが提案した。
ルナンは一瞬、パッと顔を輝かせたが、
「い、いいえ。皆さまが怖さと戦っていられるのに、わたくしだけ楽をする訳には参りません。わたくしも、一緒に渡らせて頂きます」
「そう? 真面目ねルナンって。たまには甘えてもいいと思うけどな」
「申し訳ありませんティナ様。せっかくのお気遣いを」
「いいよ。それがルナンのいい所だもん」
ティナは吊り橋に足を掛けた。
「え〜、ティナさん先に行くんですか〜?」
「ごめんねジェニファー。どうせ多分揺れるから、行かせて貰うね」
ティナが半分ほど行った所で、ジェニファー達も進む。
「あ〜。ちょっとシトラス。揺らさないでよ〜」
「俺じゃねぇよ。ロックの奴だよ」
「いらっしゃるんですよね。わざと揺らす方って」
「オレそんなに強くやってないぞ」
「こら〜! あんた達。ふざけてないで、早く渡りなさ〜い」
「は〜い、ティナさん」
やれやれ。
何とか渡り終わったか。
石のトンネルを通る。
そのトンネルの壁に、文字が書いてあった。
〈右①③⑤左②④⑥に火を灯せ〉
また暗号かな。
あまり深く考えずにトンネルを抜けた。
正面に扉。
左右に七本づつ、ろうそくが立ててあった。
しかも、意地悪な事に、燭台が長い。
天井に届いちゃうんじゃないかと思うほど。
「ねぇ、シトラス、これって……」
「ああジェニファー。あの壁に書いてあった事をやれという事だろうな」
「でも、高すぎるよ」
「しょうがないな。オレに任せろ」
ロックが矢を構えた。
火が矢尻に点いている。
「ルナン。あの数字、覚えてる?」
「はい! わたくしの言う通りに射って下さい」
「ああ」
矢が放たれた。




